泉ヶ丘に誕生した「つながる食堂」の
ちょっといい、いや、だいぶいい話。

[泉北シリーズ]

泉ヶ丘に誕生した「つながる食堂」の
ちょっといい、いや、だいぶいい話。

まちびらきから55年を経て、いま、新たな動きが生まれている泉北ニュータウン。

南大阪を代表するこの一大ニュータウンの玄関口にあたるのが泉北高速鉄道 泉ケ丘駅で、駅前施設の「泉ケ丘ひろば専門店街」も建て替え工事の真っ只中。
とはいえ現在の工事エリアは一部で、長らく愛される飲食店やスーパーマーケット、クリーニング店などは変わらず営業を続けていて、通りはとてもにぎやか。

老舗の風格漂う名店やチェーン店がひしめくその一角に、2022年10月、新しくオープンしたのが「つながる食堂」だ。

カウンター席のみのシンプルな造りだが、印象的なブルーの扉や、店内の黒板に描かれた可愛らしいイラストから手づくりされた温もりがひしひしと伝わってくる。

月曜から日曜まで、たこ焼きやチリコンカンライス、揚げ餃子や野菜たっぷりのおばんざいなど、日替わりでいろいろな料理が楽しめるスタイルも特徴だけれど、この食堂がユニークなのは、"「食」を通してつながるコミュニティ"を何より大切にしていること。

取材したこの日は、和泉市に実店舗もある「たこやき808」が担当。夫妻2人で営むたこやき屋で、キッチンカーでの営業も続けられている。「つながるDays」でファンが多かったことから食堂のいちメンバーに。
銅製の鉄板で注文ごとに焼くたこ焼きは、「中のとろとろ感がこだわり」と店主の平岡さん。鹿児島産長島タコを生で使い、山芋粉を入れた生地は素焼きでうま味十分。小籠包さながら高熱の仕上げも醍醐味!

「つながる食堂」開店の経緯について、食堂を運営するNPO法人SEIN(サイン)の宝楽陸寛さんにお話を伺ったところ、物語のはじまりは2017年までさかのぼるという。

「いま、工事をしている場所に、かつていずみがおか広場というコミュニティ型のガーデン広場がありました。泉北高速鉄道と共に一帯の商業施設を所有する南海電鉄さんが、街に象徴的な空間を、と駅前に作られたもので、それも空間的に美しいだけじゃなくて、この街の人たちに活用してもらえる場所にしたいと。そこで泉北を拠点にまちづくりの活動を続けているSEINに相談してくださったんです」。

泉ヶ丘専門店街では、昔の街の写真を集めた掲示コーナーも設けられていた。

NPO法人SEINは、かつて堺駅近くでコミュニティカフェ パンゲアを約12年に渡り営んでいた経験があり、現在は泉北ニュータウン内でカフェを兼ねたシェアスペースや「泉北ラボ」といった施設の運営も手掛けている。地域に根差し、人と人をつなぐ場を育み続けているSEINだからこそ白羽の矢が当たったといえる。

「議論の結果、いろいろなアクティビティが生まれる広場にするために『つながるDays』という市民マーケットを始めることにしたんです」と宝楽さん。

2017年11月から始まった『つながるDays』は、いつかお店を開くための経験を重ねたいという飲食店や、表現の場として自身が手づくりした作品を展示販売する作り手などが集まった。出店者たちをあえて「ひろばプランナー」と呼んで、いっしょイベントを盛り上げる機運を高める工夫も。参加したのは、もちろんすべて近隣の住民たちだ。

左:広場で開催していた『つながるDays』。22年3月。 右:高島屋前での開催時の様子。22年9月。

「このイベントを通して、この街に活動拠点をつくった方が結構おられますよ。『つながるDays』でいつか地元にカフェを開きたいという方と出会ったことから生まれた場所なんです」。

宝楽さんいわく、「『つながるDays』は人との関係性をつくることを一番大事にしてきたイベント」。
南海電鉄の社員も、宝楽さんをはじめとするSEINのスタッフも、出店者も、準備から撤収まで行動を共にして、より良い場づくりを考えた。開催は年に2~3回。いずみがおか広場では通算11回開催された。
やがて建て替え工事が始まったことで広場は閉鎖されたが、イベントを通して生まれた関係性や新たな可能性を絶やすのはあまりに惜しい。

泉ヶ丘専門店街の今の様子。屋内にベンチや子ども向けの遊び場、共有スペースがあちこちに設けられて、とても活気あり!

「イベントとしての『つながるDays』は現在も駅周辺で場所を変えて継続しているんですが、ひろばプランナーさんの中には将来的に実店舗を開きたいという方が多くて。彼らが実践できる場を新たに作れないか? と南海電鉄さんから再びお話をいただいて、このつながる食堂を開くことになったんです」と宝楽さん。

インタビュー中に駆けつけてくださった南海電鉄まち共創本部 泉北事業部主任の日高研二郎さんも、「つながる食堂というコミュニティができることで、地域の人がいっそう交わる機会が生まれるとうれしい。『つながるDays』は開催期間が決められたイベントで、それだけで終わらせるのはもったいないと常々思っていました。継続性のある場所があれば、ということで、つながる食堂という形にして」と、まちづくりへの熱意がにじむ。

つながる食堂が入るテナントの大家さんである、南海電鉄 まち共創本部 泉北事業部主任の日高研二郎さん(左)と、運営を担うNPO法人SEINの宝楽陸寛さん(右)。「つながるDays」をきっかけに付き合いは約3年で、いまや、泉北の人々をより良くつなげる同志。

「つながる食堂」のコンセプトは、"ここでしか出会えない人・食に触れ、泉北ニュータウンでの豊かな暮らしを感じるきっかけとなる場を目指す"。
月曜は「お堂カフェMA-A-NA」と「ぎょうざ太郎」という2店によるコラボキッチン、火曜は野菜ソムリエが営む「ミーテカフェ」によるプレートランチが主力と、市民の豊かな個性が反映された展開も微笑ましい。

以前はラーメン屋だった店舗。扉の塗装などは宝楽さんと地元有志一同で行った。

開店したばかりの今から3か月間、つまり2022年12月までは「テスト期間」だと宝楽さん。 「その後どうするかは、出店されている方々の希望や改善点をお伺いしてつくっていくつもりです。お店の方にはここでお客さんをいっぱいゲットして、つながりをつくってほしいなぁと。夢は、いま工事中の広場に新しい商業施設ができたときに、つながる食堂が入ること。もしくは、この食堂で出店されている方がテナントを持つのもおもしろいですね」。

泉ヶ丘ひろば専門店街が新たな商業施設として生まれ変わるのは2025年秋。ここから約3年間は挑戦が続く「つながる食堂」。新しい泉北ニュータウンの一翼を担うプレイヤーが、きっとここから生まれるはずだ。

壁に描かれた輪をなす人々の可愛らしいイラストは、堺市在住の作家Pittoro Feliceさんによるもの。「つながるDays」やつながる食堂に関わる人々を描いたもので、「日高さんもいるんですよ!」と宝楽さん。

つながる食堂
住所/堺市南区茶山台1丁2-1泉ヶ丘ひろば専門店街1Fいずみこみち
※多彩な出店者が続々。各店の担当日は「つながる食堂」のカレンダーを参照のこと
https://www.npo-sein.org/tunagaru/
https://www.instagram.com/connected.dining/

取材・文/村田恵里佳 写真/西島渚 編集/竹内厚

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