安田卓宏さんに教わる、
千里の公園とまちのみどりのこと
インタビュー編

[千里ニュータウン]

安田卓宏さんに教わる、
千里の公園とまちのみどりのこと
\インタビュー編/

※佐竹公園〜千里南公園ツアー編はこちら


おおらかで自然に近い公園設計

―千里ニュータウンの公園の特徴は?

「はなみど」で働く前は、20年間公園の設計や街の景観づくりの仕事をしていました。その時に公園設計の基本だと思ったのは、地形づくりと植栽。それがしっかりしていたら、公園として気持ちのいいと感じるデザインになる。
佐竹公園や千里南公園をはじめ、千里ニュータウンの公園はランドスケープが見事だと感じています。地形の使い方が上手で、大きな造成をした形跡を感じさせない。当時はまだまだ造園材料が限られていたのに、季節や景色の変化を感じられるように工夫して植えられています。植えた頃はまだまだ幼木だったのに、何十年も先を想像してつくられているので、おおらかで自然に近い景色になっているのが素晴らしいです。

― 千里ニュータウンは丘陵地なので公園がつくりにくそうに思います。

簡単につくろうと思えば造成して平らにすることもできますが、古江公園なんかは斜面を活かして二段広場にしていたり、千里中央公園は高低差を使って滑り台を設置してあったり、うまく地形を活かしているのもいいですね。

―遊具も個性的ですよね。

津雲公園なんかは昔懐かしいドカンの遊具が残っていますね。また、他の公園で見かけるオブジェのような遊具は、人研ぎと言って職人さんがコンクリートを研いでつくった一品ものだったりするんです。
千里ニュータウンにはベンチや滑り台など、職人仕事がちょこちょこ残っていて。僕はあれが好きでね。今の遊具もデザインは凝っているし、オリジナリティもあるけれど、あの素朴さがいい。今はああいう職人仕事をできる人が少なくなっている。設計者が遊具の図面も描いて、注文を受けた業者さんが手作りでつくるというのは、今思うとぜいたくだなと思います。
全体に設計とかも時間に余裕があって、その余裕の部分がおもしろいものを生み出していたのかな。子どもたちにとって普通の遊具では得られない体験ができるんですよね。

安田さんがセンター長を務める「はなみど」は、阪急千里南駅直結の千里ニュータウンプラザ1階にある。園芸相談や園芸用の苗の販売も。

公園は誰もがイベントできる場所!?

―「はなみど」は千里南公園でイベントもされていますよね。

「花とみどりのフェア」を毎年11月3日に開催したり、「つつつ市」というミニマーケットを定期的にやっています。イベントやマーケットを持ち込むと、普段利用している公園の風景がちょっと変わる。いつもの公園が違う公園みたいに感じて、またワクワクできたり、そこに出店している人と買いに来た人の間にコミュニケーションが生まれて、コミュニティが活性化される。それが公園の価値へとつながるんじゃないかなと思っています。

―誰でも公園でイベントはできるものなんですか?

公園は自治体のお墨付きがないと使えないと思っているかもですが、実はそんな縛りはなくて。ちゃんと申請を出して一定のルールを守れば使えるようになっているんです。そこではじめたのが「公園つかうプロジェクト」で、市民と自治体のつなぎ役になる「はなみど」がイベント内容のチェックをし、申請書類の出し方や使用ルールを市民さんにアドバイスして、許可がおりるお手伝いをしています。もっと公園が使える場所として市民に認知してもらう取り組みの一つです。

―実際にサポートされて開催されたイベントはありますか?

吹田市山田にある伊射奈岐神社で手作り市をされているグループがいて、境内の横にある公園も出店スペースとして利用できるお手伝いをしました。もう一つは森の幼稚園をやっている団体さんが、1日だけ津雲公園で運動会をやりたいという話をいただいて、会場のつくりかたなどのアドバイスをさせていただきました。
どちらもできて当たり前に感じるけれど、以前は許可が取りにくかった。「はなみど」が間に入って自治体と市民、双方の通訳をしているという感じです。

「はなみどPAPER」は年2回発行。「うちのみとり、まちのみどり」をテーマにした特集や、はなみどのイベント・講習会の情報、樹木の葉や実を使った遊び方などを紹介している。

緑が豊かな町だからこそのミッション

―千里ニュータウンの公園やまちのみどりがかかえる課題といえば?

千里ニュータウンは緑豊かで、公園も多く、計画的に緑を活かしたまちづくりがされているので、緑を魅力に感じている人が住んでいる。その反面、恵まれているので新たに何かをしなきゃという感覚を持っている人が少ないのを感じます。そこが「はなみど」に課せられたミッションだと感じています。自治体と市民の間に入って、もっと市民がまちづくりに関わりたいという気持ちになってもらうことが今の課題ですね。

―公園やまちのみどりについて、もっと知ってもらう必要がある。

そうです。そのためには緑は見た目のきれいさだけじゃなくて、樹冠が大きくなると地面の温度を冷やしてくれたり、二酸化炭素を吸収してくれたりといった生態系サービスを生み出している樹木の価値を可視化していく必要もある。
最近はグリーンインフラといって、緑にも社会や生活を支えている価値があることを自治体、研究者、企業が伝えていこうとしているけれど、目に見えない緑の価値をわかってもらうことはなかなか大変で。

―緑の価値の評価は人それぞれですもんね。

緑豊かなまちを維持していくためには、樹木を剪定したり、葉っぱが落ちたら掃除をしたり、どうしても維持費がかかる。人口減になって財政的には厳しいけれど、社会インフラにはお金をかけないといけない。優先順位として緑は低くなってしまうんですよね。緑はきれいだけれど、管理費にお金がかかるとそれは無駄だとなってしまう。そうなると、まちのみどりの質が下がってしまって、どんどん街の景観は変わってしまう。樹木だけじゃなくて、公園という空間で人が憩っているとか、遊んでいるとかも価値があるけれど、それを可視化するのは非常に難しいんです。

―「はなみど」として実際に取り組んでいることを教えてください。

公園や緑地・遊歩道など、吹田のまちをフィールドに、四季折々の樹木の特徴や話題にスポットをあてた樹木ガイドツアーを、吹田市内の樹木のことはなんでもご存知の「すいたみどりのサポーターの会」のみなさんと一緒に月に1回開催しています。市民に近い距離で樹木のことを伝えて、緑への愛着をもってもらう機会になればと続けています。
あとは、花と緑をテーマにしたセミナーや講習会を開催して、緑にふれる楽しさを味わう機会をたくさんつくっています。

―緑にあまり興味がないという人に向けた取り組みもされていますか?

そこは非常に課題意識をもっていて、今いろんな企画を練っているところです。最近実施したのは、夏休みに工作も一緒にできる樹木ガイドで、親子で緑にふれあう機会をつくりました。子育て世代には食を入り口にすると響くと思うので、公園でキッチンガーデンをつくる企画ができないかと考えているところです。育てた野菜や植物は、食育イベントで食べられる仕組みにできるといいなと思っています。
あとは、生きものの写真から名前を調べるアプリがあって、ポケモンGOみたいな感じで、ゲーム感覚で自分が撮った生きものの写真を投稿するとポイントがついたり、図鑑がつくれるんですが、このアプリを使って遊んで楽しみながら、まちのみどりに愛着を持ってもらえるような仕組みができないかといったことも考えています。

吹田市花とみどりの情報センター(はなみど)
住所/吹田市津雲台1−2−1 千里ニュータウンプラザ1F
開館時間/10:00〜18:00 月曜、祝日休
https://www.suitahanamido.com/

取材・文/西川有紀 撮影/坂下丈太郎 編集/竹内厚

佐竹公園~千里南公園ツアー編

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