アルバムのテーマは引っ越し。
町とともにあるHomecomings。

アルバムのテーマは引っ越し。
町とともにあるHomecomings。

京都発の4人組バンド、Homecomings(ホームカミングス)。4人が東京に拠点に移してから初となるアルバム『MOVING DAYS』をリリースした。
今作はタイトル通り、移動や変化をテーマに、それを巡る新生活や思い出、自分の住む町の風景が描かれた全10曲。新しい町での暮らしについて、メンバーの福富優樹さんに話を聞いてみる。


都心まで自転車で2時間で行けますし。

― 2018年にメンバーの2人が東京と栃木へ。2019年には福富さんを含め2人が東京へ。京都から引っ越しされたのはなぜですか。

福富バンドをこの4人で続けていくために、ですね。京都と関東に分かれてバンドを続けていた頃は、やり取りがけっこう難しかったんです。ライブの移動にもお金がかかったり。だから、僕らも東京へ引っ越して。ただ音楽を続けるために、ですね。そこは京都時代と同じで、生活の中にバンドがあるというか。なので東京で一旗揚げるぞ! っていうよりもヌルっと上京した感じです。

― 引っ越したことでバンドに変化はありましたか。

福富より仲良くなった感じはありますね。4人のうち3人は東京郊外の同じ町に住んでいるので、どこかのスタジオに行っても3人で一緒に電車乗って帰ったり。もう一度、青春時代をやっているような。京都の頃は、同じ京都に住んでいてもスタジオを出たらバラバラに帰ってたんですけどね。だから今、なんか新鮮。

「思い出を残したくて」と引っ越し中の写真をフィルムカメラで撮ったという福富さん。「この頃はまだぜんぜん下手で。今なら綺麗に撮れるのに(笑)」。

― 京都にいた頃は、福富さんは京都御所の近く、室町中立売に住まれていたんですよね。

福富六畳一間で家賃4万円の部屋。そこにベッドもダイニングテーブルも置いていたので、座ってるか寝てるか、のどちらか。体を動かすところのない部屋で(笑)。だから東京では大きな部屋に住む、って決めてたんです。でも最初、不動産屋さんに5万円で2DKの部屋を探してるって言ったら、東京にはそんなところはないです、って言われて。

― お家賃事情がまったく違う、と。

福富それで都心から離れて郊外へ。考えてみれば、ごちゃごちゃした都会っぽいのはちょっとなぁ…と。石川県の田舎育ちってこともあって。家から都心まで自転車で2時間で行けますし。

― 自転車で2時間!?

福富ええ。京都に住んでるときも、家から六地蔵あたり(京都の南端)まで自転車で1時間半かけて行ったりしてました。とはいえ、今は新宿とかに遊びに行く用事もあんまりないんですけどね。

メンバーみんなで六本木から新宿まで1時間半かけて、ぶらぶら散歩したりも。

町を好きになっていくこと、それ自体が好きなのかも。

自分の部屋だけでなく、住み始めた町をお気に入りにするために、日常的に町を散策している、という福富さん。彼の視点には自分の住む場所をフレッシュに捉えるヒントがあるかもしれない。

― 東京の郊外での生活はいかがですか。

福富何もなかったところに突然、公園ができたり、タワーマンションが建ったり。郊外ならではのおもしろさがあると思います。町が変わっていく様子を観察するのは楽しいですね。ただ誤算は、今住んでいる町にはほとんど町中華や食堂がないこと。チェーン店はなんでもあるんですけど。だから、自分の町を自力で広げないと、と思ってますね。

― 自力で自分の町を広げる?

福富自分の町を好きでいたいからこそ、というか。だから自転車で40分くらいかけて町中華に食べに行ったり。40分は自分にとって近所です(笑)。

― たしかに、どこまでを自分の町と呼ぶかは自由です。

福富はい、自分が住んでいるエリアを好きになるために、自分なりに町を拡張してる感じですね。今はまだいろんな店を探している最中で。好きな店があればグーグルマップに線を引いて、ここまでは自分の町って(笑)。もし好きじゃないお店に入ってしまっても、マップにはカウントはしません(笑)。

― 自分のオリジナルの町の地図を作る、と。

福富そうですね。東京は、新しい町と古い町が混在していたりするのも興味深いし、それは、ただ地図を見ているだけじゃわからない。だから自転車で実際に行ってみてますね。

― 飲食店以外にどんなお店を気にしてますか?

福富映画館や書店、公園、景色のいい踏切とか。

― 他に町で注目しているところは?

福富今は工場ですね。深夜の工場を覗いてみたりとかが楽しい。誰もいないけど機械だけが動いていたり。工場なんておもしろくないと思われるかもしれないけど、自分の町を構成しているものとして見てみると、楽しいですよ。考えてみれば、町を好きになっていくこと、それ自体が好きなのかもしれません。

― 『MOVING DAYS』の歌詞カードを見ていると、曲によって街、町、まち、と書き分けていますね。

福富スモールタウン的な意味では“町”で、都会的なところを街。“まち”はもっと概念としての“まち”。原稿を書く仕事でも書き分けてたら、すべて“街”に統一されたこともありましたけど、自分にとっては意味が全然違うので、大事なところなんですけどね。


まずマンションの隣人に優しくすることから始めるとか。

『MOVING DAYS』のジャケットは引越の段ボール。歌詞カードには部屋の間取り図が描かれている。テーマは引っ越し。MOVINGには、“変わっていく”の意味も込められているそうだ。

― 『MOVING DAYS』では、これまでと制作環境が違うことがなにか変化をもたらしましたか。

福富いつもと同じように実際の曲がない段階で、僕が曲名と曲順を先に考えて、アルバムの構想を作ってみて、それから4人で音楽にしていく。でも、今回はみんなの意見がフラットになったというか。それはみんなで引っ越したり、同じ町に住んで、さらに仲良くなったりしたことが大きいですね。メンバーと町を散歩しながら、今の社会問題のことを話したり。

― 散歩しながら社会問題ですか。

福富たとえば、誰もが住みやすい社会に変わっていくためにはどうするか? みたいな話です。コロナで世の中が変わっていくことで考えたこととか。社会的なことを歌にしてみたい、という考えもあって。世の中をよくするためにはまずマンションの隣人に優しくすることから始めるとか。

― 最後に、Homecomingsの“Home”とは?

福富バンドとしては京都だけど、メンバーのみんなはどうかな? 個人的には京都の千本通や室町中立売あたりがまだ自分のホームという感じがします。でも今、住んでいる町は好きになる要素がたくさんあるし、これからホームになってもおかしくない。近くに多摩川もあるし。多摩川を鴨川と同じ感覚で愛でています。

引っ越したことで台所が広くなった福富さん。得意料理は「ナスと青唐辛子のナンプラー炒め。言い表せない味なんですが美味しい」。

取材・文/中村悠介 撮影/平野愛 編集/竹内厚

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