<団地のひとインタビュー>
本物の愛好家にして団地ソムリエ。
けんちんがUR団地に出会ってからの話。 後編

団地のひとインタビュー 035

本物の愛好家にして団地ソムリエ。
けんちんがUR団地に出会ってからの話。 後編

2022.11.25

    けんちんさんと片山公園団地ツアー編の記事はこちら


    団地から別世界へアクセス。

    ―いろんなUR団地を見るための方法論として団地アテンドをはじめた、というお話でした。結果的にけんちんさんの案内で、200人もの入居者にもつながったんですね。

    入居する人が実際に増えたら、当時の公団、今のURからも認めてもらえるかなと思って。UR団地をオフィシャルに訪問することができるような団地愛好家になれたらと。で、実際そうなってきているので夢がかなってきました。

    ―2003年から2007年までは団地ソムリエとして団地の住人を増やす活動をされましたが、その後はどんな啓蒙活動を?

    やることを変えました。団地を愛好している人たちの輪を広げようと、2007年から『団地Bar』というイベントをはじめたんです。ちなみに2007年は、結婚、鷺洲第二団地への引っ越し、会社の部署異動、と自分にとっても転機の年で。定期的に『団地Bar』イベントを行うことで、団地が好きな人を集めることはできたんですけど、外側のコミュニティまでは広がらないんですよね。それで2012年に、またやり方を変えようと。

    ―次は団地をどこへ連れていくのでしょう。

    団地を「趣味」というカテゴリーとして広げていけばいいのかな、と考えました。珍スポットマニア(金原みわさん)、廃墟マニア(ダミアン君さん)、廃墟&カレーマニア(Elunaさん)、そして僕の4人で『別世界Bar』というイベントを2015年からはじめて。今も続いてるので、もう7年やってます。団地・廃墟・珍スポット、それぞれの趣味をリスペクトしあいながら、たとえば廃墟好きの人が団地の世界にひっかかってくれるかもしれない。「別世界」という言葉を付けた途端に「すべてのマニアが仲間」と、パイが広がったんですよね。

    ―けんちんさんは団地のみならず、「ドムドムハンバーガー」や「電気風呂」まで掘られてますよね。

    『別世界Bar』で人に対して別世界をすすめるんやったら、自分も別世界を探さなアカンなと思って見つけたのが「ドムドムハンバーガー」。2015年に仲間4人で発足したのが「ドムドム連合協会」(私設ファンクラブ)です。メンバーは、給水塔マニアで「日本給水党」党首のUC君、昭和ラブホ・平成ラブホ探訪家の逢根あまみさん、デザイナーのおだ犬さん。みんな『別世界Bar』に出演してくれたメンバーで。

    ―どうしてドムドムだったのでしょう?

    団地って人にすすめてもすすめてもレスポンスがあんまり返ってこないんですよ。団地は人によって団地観が違うんですね。実家の近所にどんな団地があったかで変わってくるから、団地のチューニングをしないといけないっていう。でも「ドムドムハンバーガー」ならチューニングは必要なくて、みんなのドムドム像は基本的に一緒。なので、ドムドム連合協会の活動は世の中への浸透が早かったですね。

    #ドムさんぽ、ドム活といった言葉を広め、『ドムドム応援マガジン DOMain』も刊行した。

    ―そして次は「電気風呂鑑定士」の肩書きを得る流れになるんですよね。

    ドムドムはこれ以上は掘れないな、次の別世界どうしよう? となったときにパッと思いついたのが、電気風呂。いくつかの別世界候補を挙げながら全部ちょっとずつ進めてたんですけど、自分のなかで電気風呂が一番おもしろかったな。

    さらりと着こなすTシャツも大阪の銭湯で見られる「人間乾燥室」ロゴ。

    ―「団地」「ドムドムハンバーガー」「電気風呂」。これを繋ぐ一本の線はあるんですか?

    あります。軸となるのは「団地」です。

    ―ここでもまさかの団地!

    まず「ドムドムハンバーガー」は昭和45年創業で、もともとはダイエーのファストフード部門なんですね。このダイエーというのは団地の進化とともに広がっていったスーパーで、団地のなかにダイエーが入ってることが多かったんですよ。団地とともなってダイエーとドムドムの進化はあり、やがて団地の建て替えが進む時代が訪れ、このふたつはしぼんでいった。

    電気風呂に関しては完全に団地とリンクしてます。家にお風呂がない長屋暮らしのときは、みんな銭湯に行くのが当たり前だった。ところが昭和30年の日本住宅公団の誕生によってお風呂のある家が大量供給され、銭湯の利用者が減るんです。ここで銭湯がやらなければいけないことって「家のお風呂にない設備を設置する」ということ。そこで関東の銭湯が参考にしたのが、関西のおふろやさんの設備でした。当時から関西のおふろやさんって、ジェットバス、スチームサウナ、そして電気風呂と、バリエーションが多くて。それを視察した関東の銭湯が電気風呂を導入しだしたという経緯があるという話を聞きました。電気風呂が全国的に普及するきっかけは、団地の誕生だったんです。

    ―団地起点のものって多いんですね。

    すべての道は団地に通ずる!

    ―かっこいい!


    団地を文化にしたいから。

    ―ところで「団地」「ドムドムハンバーガー」「電気風呂」と、すべて頭文字がDですね。

    なんだったら子どもの頃は電車が好きやったから。たまたまなんですけどね……次のDを探さなきゃいけない。でも、他ジャンルのマニアなことを掘ることによって団地のさらなる奥深さを知ることができた。最近また団地に回帰したけど、パワーアップができてるなと感じます。

    ただし僕は、団地に関するテレビやメディアに出るときは、マニアという単語は使わないでくださいとお願いしてるんです。愛好家ですと。あと、テレビもバラエティ番組の出演はほとんど断っています。電気風呂ならマニアと言われてもいいし、バラエティにも出演します。だけど、団地は僕は文化にしたいと思ってここまできてるから、バラエティで笑いものにするために提供できるものはひとつもない、という考え方なんです。笑うためのものではなく、カルチャーとして楽しむもの。だから、一過性で終わるバラエティは基本的にお受けしない。そういうスタンスもURが認めてくれたのかも。

    ―今やURの全面協力を得たイベントをされてるんですよね。今年の6月に大阪・千島団地のツアー企画をされたそうで。

    団地内部を案内すること自体が、もしかするとツーリズムみたいになれるんじゃないか、ということを僕はずっと提唱していて。実際、お客さんを入れて実施してみると結構好評で、年明けにまたやりましょうという話が進んでます。ただの団地好きがまさかオフィシャルに認められて、今、部屋のなかまで見せてもらえるツアーを組ませてもらってる。夢のような話なので。そこまでいけたのも、勝手に団地に入るっていうのを禁じてやってきた意味があったのかな。

    取材・文/廣田彩香 撮影/坂下丈太郎 編集/竹内厚


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