煎茶を生み出した永谷宗円、
その系譜を継ぐ茶店へ

[伏見東~桃山南シリーズ]

煎茶を生み出した永谷宗円、
その系譜を継ぐ茶店へ

近年の駅前開発で新しい町に様変わりしつつある六地蔵にあって、「永谷宗園茶店」は明治時代からこの地に根を下ろす茶商。

旧奈良街道沿いのお店はとてもひかえめな佇まいだけれど、じつは日本茶といえば今やあたりまえの緑茶をこの世に生み出したのが、江戸時代に生きたこちらの祖先にあたる永谷宗円。まずはその歴史を。

約280年前の当時、お茶といえば抹茶の原料であるてん茶、あるいは現在の番茶のような赤茶色のものしかなかった。てん茶は、上流階級の茶の湯文化のなかで広まった高級茶。栽培は宇治の特定御茶師のみに許されていて、決して大衆的ではなかったそう。

宗円はてん茶の製法を応用して、庶民にも親しめるお茶が作れないか?と試行錯誤すること15年。やわらかく育った新芽だけを摘み取り、蒸し、焙炉(ほいろ)の上で手もみしながら乾燥させる新しい製茶法をあみ出し、現在の煎茶を作った。
そして、自ら江戸へおもむき販路を開拓。その製法を惜しむことなく近在の人々に伝授したことで、お茶といえば緑茶、という現在の日本茶文化が形成されたといっても過言ではない。

永谷宗園茶店では、宇治田原町の茶畑で栽培されたものを永谷宗円から数えて9代目にあたる当代が厳選。煎茶だけでなく玉露やほうじ茶なども揃う。

「ここは当時から製茶場だったところで、宇治川の船便で出荷していたんです」。そう話す女将さんは店を切り盛りするだけでなく、煎茶道方円流の先生でもある。生徒は地元の小学生から90歳を超えたご年配方まで。宗円が生んだ茶心を代々の地で伝え続けている。

「煎茶はとれとれ(新茶)で味わうのがいいんですよ」と女将さん。ご子息が当代。5月の取材時は絶好のシーズンで、6種のとれたて煎茶が勢揃いしていた。

永谷宗園茶店
京都府宇治市六地蔵札ノ辻町1
営業時間/8:00~18:00
無休(正月三が日のみ休)
0774-31-8035

取材・文/村田恵里佳 撮影/沖本明 編集/竹内厚

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