老人ホームにある快適カフェは
町のためにも
OAK cafe

老人ホームにある快適カフェは
町のためにも
OAK cafe

泉北ニュータウンの茶山台団地、その一角に「OAK cafe(オークカフェ)」がある。北欧モダンな内装が印象的で、定食や自家製のおやつなどメニューだって抜かりなし。
近所にあったら頼りにしたいお昼ごはんスポットで、コーヒー1杯だけでものんびり過ごすことができる居心地のいいカフェでもあるけれど、じつはこちら、老人ホームのなかにある。

「OAK cafe」があるのは、地域密着型特別養護老人ホーム「グランドオーク百寿」の1階。老人ホームって入っていいの!?という戸惑いを一掃してくれるエントランスは、ホテルさながらの佇まい。入居者数は29名。すべて個室で、堺市の居住者のみが入居できる“地域密着”のスタイルも特徴。
開店から11時まで食べられるOAKモーニングセット。コーヒーは山口の自家焙煎スペシャルティコーヒー専門店「フジヤマコーヒーロースターズ」によるオークオリジナルブレンド。それでいて価格は500円って、安すぎ! 飲み物は紅茶も可。

開店の経緯について、施設主任の岡村卓哉さんの話。
「近年、特養(特別養護老人ホーム)も地域資源のひとつとして、地域に対しての社会貢献の取り組みが求められています。そして、ここは“地域密着型”の老人ホームとして、より地域の方にご利用していただけるように、ということを開設前に考えました」。

茶山台近隣センターに隣接するこの場所には、もともとスーパーマーケットがあった。その跡地を地域で福祉施設やこども園も運営する「社会福祉法人よしみ会」が引き継ぎ、「ここに何があれば地域の人たちに使ってもらえるか?」を住民たちにたずねた。

すると、友達同士でお茶や休憩ができる場所、バスに乗って駅前まで行かずとも買い物ができる場所、地域の子どもたちがもらったおこづかいを使える場所など、地域に必要なものが見えてきた。そこで特養に併設するかたちで「OAK cafe」が、さらにちょっとした日用品と駄菓子をそろえた「オークマーケット」ができたのだそう。
「地域に求められたものを集めたらこういうかたちになりました。住民さんたちの声が違っていたら、全然違うものになっていたと思います」と岡村さん。

フィンランドの高齢者施設などを視察、参考にしたうえでデザイナーに依頼し、仕上げられた内装はスタイリッシュなのに温かみを感じる。星を散りばめたような照明、しつらえに合わせた北欧家具も素敵。

いまでは、毎日お昼ごはんを食べに来るご近所さんがいるほどの愛されっぷり。ときには近所の保育園に子どもを送り届けたおかあさんがひと息つき、ときには入居者であるおじいちゃんおばあちゃんがゆったり過ごしている光景も見られる。

「毎日来てくださるおひとり暮らしの方もいらして、急に顔が見えなくなった時は『どうしたかな?』って気になって、お家へ行かせてもらったことも何度もあります。ちょっとした見守りの要素もあったりして、そういう意味ではふつうのカフェともちがっていて。福祉の専門職、私も社会福祉士ですが、そういうスタッフがカフェの方にもいて、何気なく地域の住民さんとも関われる場所というか」。 たしかにエプロン姿の岡村さんは社会福祉士というより、物腰やわらかなカフェのお兄さん。そんな自然なあり方で、地域の人々を見守っている。

施設主任で社会福祉士の岡村卓哉さん。「カフェをするなら本格的なものにしなければと、老人ホームのイメージを変えたいと思って、これまで施設全体で取り組んできました」。特養は全国各地にあるが、地域に開く「グランドオーク百寿」の先進的な試みは注目を集めている。
入居される方々とおなじ献立が味わえる日替わりランチもメニューのひとつ。「上(老人ホーム内)でこういうものを食べているよ、って知ってもらいたい思いもあって」と岡村さん。価格は開店以来すえ置きの500円(1日限定8食)。この日は鱈の香味ダレに、ジャガイモとニンジンの角切りサラダ、お吸い物とごはんのセット。「OAK cafe」のメニューはすべて管理栄養士が手掛けているため、健康への気配りも抜群。

「僕の本業は、自宅での生活が難しくなってきて老人ホームを選択しないといけない、という状況になった方のご相談に乗らせてもらうこと。でも、そういう差し迫った状況になって、初対面の人に相談するっていうのは、僕が逆の立場やったらすごい不安になるな…と思ったんですね。元気なあいだに顔見知りになっておいて、いざというときに少しでも安心して、『岡村くんがいてるとこやったらええかな』と言ってもらえたらいいなぁと思います」。

オークカフェは、最近では月に2回、茶山台団地で出張カフェも開いている。団地とカフェはスープも冷めない距離。とはいえ、高齢の住民さんにとってはここまで通うのもひと苦労だから。

「集会所でコーヒー淹れながらしゃべってるだけなんですけど。そのなかで、『じつは主人の具合が悪くて。ええデイサービス知らんかな?』とか『家がこんな具合で大変で…』とか、住民さん同士がされている話に、僕もちょっと入ってお話したりして」。

茶山台の憩いの場であり、地域の見守り役でもある「OAK cafe」。おいしい、気持ちがいい、そのうえこんなに頼もしいカフェがある街って、なかなかあるものじゃない。茶山台に暮らす人々が羨ましくなる。

前には茶山台近隣センターも。軒先に広がる小さな公園感もナイス。
「できたら子どもたちがわいわい遊んでくれる場所になればいいなぁと。だから『オークマーケット』を駄菓子屋として開いているところもあるんです」と岡村さん。
「ちょっとずつ、いろいろ食べれるようにして~」という住民のリクエストで生まれたiro×iroランチ850円。からあげ、エビフライ、ローストビーフ、油淋鶏など6種から2種のおかずが選べる、なかなかのパワーランチ。
ショーケースには自家製のケーキやサンドイッチまで。キッズメニューもあり、ファミレス気分で食事を楽しめるのもいい。
地域住民がボランティアで運営する「オークマーケット」は、16~17時のみ開店。洗剤やトイレットペーパー、文房具など日用品もあるが、主力は駄菓子。駄菓子屋がない茶山台の子どもたちのための品ぞろえで、「ここの子どもたちが大人になったとき、グランドオークの駄菓子屋行ったなって、思い出に残ったらいいよねって」。
茶山台団地の手前にグランドオーク百寿が見える。

OAK cafe(オークカフェ)
住所/大阪府堺市南区茶山台3-22-11 グランドオーク百寿1F
営業時間/9:00~17:00(モーニング~11:00、ランチ11:30~14:00)
日・月曜&祝日休
電話/072-291-0222
https://www.instagram.com/oak__cafe__/
http://www.grand-oak.jp

取材・文/村田恵里佳 写真/岡本佳樹 編集/竹内厚

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