美しき千里阪急ホテル
千里ニュータウンと歩んだ50年

[千里ニュータウンシリーズ]

美しき千里阪急ホテル
千里ニュータウンと歩んだ50年

千里中央駅そばにある「千里阪急ホテル」は、1970年の大阪万博開催に合わせて開業。まさに千里ニュータウンとともに年月を重ねてきた邸宅風ホテルです。
外観からではなかなかうかがい知れない、気持ちのいい空間デザインや内装のこだわり、そして、街との関わりをお伝えします。


千里阪急ホテルの設計は、日本を代表する建築家の浦辺鎮太郎が第1期工事を担当。“森と街のつなぎめ”をコンセプトに、もともとの千里丘陵の自然とその後の開発で生まれたニュータウンをつなぐ、千里ならではの魅力が感じられるホテルとして設計された。なお、第2期、3期の増築は浦辺建築事務所(現・株式会社浦辺設計)が手がけている。
現在のホテルのロゴマークは、アイビーゼラニウムがモチーフ。1991年、アイヴィーチャペルの建設を機に、正式にホテルのマークとなった。自然がそばにある千里らしく植物を象徴的にあしらっている。浦辺鎮太郎といえば倉敷アイビースクエアが代表作の一つ、そんな彼のサインのようでもある。
1976年には、「この場所で結婚式を挙げたい」という声を受けて、大小3つの宴会場を増築。大阪万博の開催後、地元に親しまれるホテルの姿になっていったことが伺えるエピソード。
自然光を取りこむ大きなアーチ窓や豊かな自然をモチーフにした装飾など、空間は細部まで見事。階段の踊り場には鮮やかなステンドグラスが見える。
足元に敷き詰められたタイルは土粘器で一つずつ切り出したもので、訪れる人が歩いたときの心地よさにこだわっているという。よく見れば、色合いや表情がすべて異なる。
オレンジの照明は職人が吹きガラスで仕上げたもの。
設計者の浦辺は、“人の手でしか作り出せないぬくもり”を建築に取り入れることにこだわった。手すりひとつとっても、人の手になじむ絶妙な手触りを追求して仕上げたという。
東館の隣りにあるアイヴィーチャペルは、まさに森の入り口にあるような自然に溶け込んだ佇まい。
チャペル入口で目を奪われたステンドグラス。こちらはガラスアーティストの三浦啓子によるもので、ロクレールという手づくりのガラスをハンマーでカットする手法で凹凸を表現した作品。
温かみとシャープさのあいまった輝き。間近で見ると琥珀糖のようで、ちょっと美味しそう。
ステンドグラスは、新郎新婦が誓いを交わすチャペル内部の頭上にも。天窓から祝福の光が差す設計が粋。
開業時の1970年からある東館は、緩やかに弧を描く建築が印象的。当時はリゾートホテルとして、世界各国の賓客や万博のパビリオンアテンダーを数多く迎えた。
東館の前面にはリゾート気分たっぷりのガーデンプールも。オープンは夏季限定だが宿泊客以外も利用ができ、夜はビアガーデンも開催。
館内は温かみのあるヨーロッパスタイル。フロントロビーでは阪急らしいマルーンカラーのソファがお出迎え。
アーチ型天井などの意匠はもちろん、照明も建築当時から設えたものを現在も使っている。
1983年には西館の増築が行われ、ホテルの全体像ができあがった。
この西館にもアート作品があちこちに。階段の踊り場にあるステンドグラスは、作家の作野丹平が手がけたもの。
新棟の待合所に座って見上げれば、素朴な天井画に気づく。こちらも作野丹平の作。自然を取り入れた作品が多いのも、“森と街のつなぎめ”のホテルらしい。
東館から庭園越しに望む西館の姿。
東館と西館をつなぐように広がる中庭。その雰囲気はヨーロッパの牧歌的な避暑地のようで、大阪にいることを忘れる。
中庭の一角には滝が流れる。中庭があるのは開業当初にフロントがあったという2階部分。1階との高低差を生かした造りに。
ちなみに、客室がある東館の廊下は、ゆるやかな丘の上に建つ地形をそのまま生かしているそう。ゆるやかにカーブしながら登っていく客室廊下。
中庭を望むガーデンラウンジは、サンルームのように光が差し込む気持ちのいい空間。
庭園で育つメタセコイヤ。
開業時のリゾートホテルというスタイルから、宴会場や式場、レストランの併設に伴い、次第に“コミュニティホテル”へと移行してきた。
親御さんが結婚式を挙げた場所だからと、親子2代で式場を利用したり、クリスマスやお正月のホテルイベントに10回以上連続で通う地元の常連さんもいるのだそう。まさに地域に密着したホテル。
ホテルの真横にある「こぼれび通り」。千里中央駅から新千里東町団地へ続く生活道路で、地域の人々が行き交う小道。右手にホテルの裏口、こぼれび通りの駐輪場の向こうにアイヴィーチャペル。その左奥には新千里東町団地が木々の向こうに見え隠れ。
「こぼれび通り」はホテルの裏口に通じていて、ここから館内を抜けるルートを散歩道にしている人も。その非日常で贅沢な空間が地元民の生活に地続きな様子もこの地のホテルならでは。

千里阪急ホテル
住所/大阪府豊中市新千里東町2-1
電話/06-6872-2211(代表)
※総客室数は203室、うち東館の96室は2018年にリニューアル。館内のレストランやカフェは5つ、宴会場は15室を備える。

取材・文/村田恵里佳 撮影/岡本佳樹 編集/竹内厚


11月より、千里ニュータウン内初のUR団地建替新築物件が入居者募集を開始。
詳細情報はこちら。
https://www.ur-net.go.jp/chintai/senri_greenhills2020/

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