「六甲山は毎日行っても飽きない」
山の導き手、芦屋川にあり!
sky high mountain works

[芦屋シリーズ]

「六甲山は毎日行っても飽きない」
山の導き手、芦屋川にあり!
sky high mountain works

「六甲山の山域は東西40kmくらい。宝塚から須磨まであるんですけど、ここ芦屋川は神戸と大阪の真ん中くらいに位置していて、両方から人が来れる。
あと自分は、登山のなかでも岩登り歴が一番長いんですが、すぐそばに芦屋ロックガーデンがあるところが一番気に入っていて。日本のロッククライミング発祥の地で、関東なんかよりはるかに早い大正時代に開拓された岩場です。芦屋を経て日本アルプス、そして本場ヨーロッパのアルプスへと向かう。そうした世界で通用する岩登りの技術を身につけられる絶好の場所なんです」。

阪急芦屋川駅から山手へ歩くこと約2分。小道に面した小さなヴィンテージマンションの2階にある「sky high mountain works」は、北野拓也さんが営むマウンテンギア専門店。

北野さんは東京出身で、日本はもとより世界の山々を巡りながらも、「こんな近距離で山へ入れる場所はない。ジョギング感覚で10分走ったら山なんで」と、山好きには絶好の地の利である芦屋川を選び、移住。まるで映画の舞台になりそうな趣きあるこの物件に惚れて、店舗に改装した。

幼少期に父親の影響で登山やオリエンテーリングを始めて以降、ロッククライミングやトレイルランニングにもまい進。山遊びのプロと言うべき北野さんだからこそ提案できる、機能性抜群の山道具が店内にぎっしり並んでいる。

六甲山登山において阪急芦屋川駅といえば、高座の滝~中央尾根~風吹岩~山頂~有馬温泉へと至る、超王道な登山ルートの起点。北野さんはその季節にふさわしい実用的なギアを提案、販売するだけでなく、山岳地図を手に訪れるお客さんにはおすすめのルート案内などもしている。

「登山って、山頂を制覇したら満足しちゃう人がほとんどですけど、それだけじゃもったいない! 山頂はひとつでも、そこへ至るルートは無数にあって、どういうルートで行くか、というのが登山の本質だと思うんです。低山であっても自分でどういう風に行って、どう帰ってきて、どの温泉に入って、どこでごはんを食べるか、とか。それが自分なりの旅だと思うし、自分が一番推したいのはその自由さ。自分のスキル次第で、ルートはどうとだって組めますから」。

「山岳地図は宝の地図」と北野さん。「六甲山は毎日行っても飽きないんですよ。いろんなコースどりができるんで」。

インターネットの普及以降、オンラインでたやすく得た情報を元に山へ入る人々が多いことにも北野さんは嘆く。
「登山者が全部軟派になってしまうと、どうしてもゴミやトイレの問題が起きる。六甲山が好きな場所だったら、そんな問題は起きないはずなのに。だから、かつて地元の山岳会や山岳部が地道に伝え続けていたマナーやローカルルール、カルチャーを伝えていかないとな、とは思っています。いわば、自分は門番みたいなものです」。

「六甲山は大遊園地。この山があるから楽しく生きてられる」という北野さん。“芦屋川の門番”は、自然を愛するからこその厳しさを携えつつも、六甲山を知りたい、登ってみたいという入門者にはいつだってオープンマインド。ビルの一室にあるお店は入るのにすこし勇気がいるけれど、扉を開けばとても頼りがいのある山の先輩と秀逸な道具に出会える。


<写真でみるsky high mountain works>

芦屋川駅徒歩2分。店はビンテージビルとしても気になるビルの2階に。いくつもの看板が導いてくれる。
レジ上の壁に貼られたトレイルランニングやウルトラマラソンのゼッケン。すべて店主の北野さんが過去に出場した際のもので、なかにはアメリカやヨーロッパのものも。「賞状よりもこっちの方がいろいろ思い出すので。ボロボロのやつほど過酷だったやつ(笑)」。
アイテムは、カラビナからリュック、ストック、寝袋まで。六甲山はもちろん、関西近県の標高約1,500mまでの山に適した道具が勢揃い。
たとえば夏なら人気の避暑地であるアルプスや、雪山用の道具もバックヤードにスタンバイ。国内はもとより世界各地の山を知る北野さんゆえ、「この時期にあの山へ行くなら?」と必要な道具を相談できるのも頼もしい。
登山靴といえば足首までしっかり守られたミドルカットやハイカットと思いきや、店内に並ぶのは柔軟なソールが特徴の軽量なシューズばかり。「ごつい靴じゃないと登山できないっていうのは大間違いです」という北野さんの言葉に目から鱗。
ロッククライミングやトレイルランニングで鍛えられた北野さんの足指。シューズの選び方も丁寧に教えてくれる。
「アウトドア業界がファッションと結びつき過ぎてしまって…。ファッション重視のギアにはおもしろいと思えるものがないので」と、別注をかけたショップオリジナルウェアの販売も。あくまで機能性重視だが、シンプルでとてもかっこいい。
かつては、アメリカまでアウトドアのユーズド雑貨の買い付けにも行っていたという北野さん。店のあちこちに点在するレコードやぬいぐるみは当時の買い付けの名残り。開店当初はレコードも販売していたそう。

sky high mountain works
住所/芦屋市西山町11-6 2F
営業時間/12:00~19:00 不定休
電話/0797-34-3299
http://skyhighmountainworks.com

文/村田恵里佳 写真/西島渚 編集/竹内厚

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