角部屋ではじまる二人の暮らし
前編:只今、お引っ越し中

[千里ニュータウンシリーズ]

角部屋ではじまる二人の暮らし
前編:只今、お引っ越し中

今からちょうど1年前、コロナ禍の少し前のこと。“結婚を機に竹見台団地に引っ越しする”と妻のなつみさんから連絡を受けて、2020年2月、引っ越してきて二日目の家にお邪魔させてもらえることになりました。家の中にはすでに夫の航(わたる)さんが一人で(!)運び込んでいた家財道具がみっちりと積み上がっていました。前編では、ガスが初めて通るその瞬間までの二人の後ろ姿を追いかけます。


「こんにちは」と伺うと、玄関先で迎えてくれたなつみさんと航さん。20代のお二人。手には“引越しの必需品”というハンドルなしの平台車。

これはなんですか?と聞くまでもなく、部屋の面積の多くを占めていたのが二人がこれまで大事にしてきた本、雑誌、漫画、画集、写真集の数々。

「そうなんですよ。笑っちゃうくらい多いんですよ。この箱の中をなんとかするのが目標。これからここに本棚をDIYしようと思っているんです」と航さん。

出会いは学生時代。長く一緒に居る二人は、どんなふうに「うち」探しをしたのか、なつみさんに聞いてみました。

「大阪育ちの私と千葉育ちの航くん。竹見台団地に決めたのは、千里ニュータウンのおばあちゃん家が原風景にあったのが大きいかもしれません。緑がいっぱいで、そこに綺麗な光が差し込んでいる風景。もう少し便利な大阪市内の都島や住吉、石切などいろんな景色を見てきましたけれど、私たちにはちょっと足りなくて。実家の車を借りて千里ニュータウンを走って5部屋ほど内覧したら、ここだー!ていう感じですぐに決まりました。角部屋だからどの部屋にも光が入ってきて、緑の見え方も完璧で。夏の暑さがちょっと心配だけど、大丈夫!いいや!って(笑)」

なるほど、いいですね角部屋。部屋の中にはあちこちに夕日が差し込んできました。窓からは隣の公園や団地内の緑。二人の見たかった風景があちこちに立ち上がって来るようでした。そうしているうちに、ガス台が到着。いよいよガスが通ります。

夕暮れ前。無事にこの家で初めてのガスが通りました。航さんは早速、新しいやかんでお湯を沸かしてお茶を入れてくれました。こんなにもささやかな出来事一つ一つに大喜びの二人を眺めていると、ちょっと目頭が熱くなってしまいました。

「お互い元気でいましょうね」と、次は夏頃に本棚の完成と注文している照明が届く風景を撮影させてもらうことを約束してお別れしました。

つづく

写真・文:平野愛

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