サヨナラ間近
同級生同士のシェアルーム

サヨナラ間近
同級生同士のシェアルーム

UR団地には「ハウスシェアリング制度」という単身者同士で同居できる制度があります。2年前、この制度を使って広い家に暮らすことを思いついた和子(わこ)さん。すぐさま“スカウト”したのは高校時代の同級生そのかさんでした。二人は今、24歳。つかず離れず程よい距離感で暮らしてきましたが、最初に約束していた「2年間」がこの春満了することになりました。そんな二人の限りある時間の一片を見届けてきました。

大阪城のすぐそばの 森之宮第2団地。高層棟からの眺め。
棟内の共用廊下。吹き抜けからの採光で明るい。「ドア可愛い。ここからの風景初めて見ました」と和子さん。住んでいると案外見ていない部分があるものですね。
「どうぞ!」と招き入れてもらうと、チラッと見えるコタツ。
広々とした2DKの間取り。左側がそのかさんの部屋。右側が和子さんの部屋。コタツの部屋と水まわりが共用スペース。ふすまを閉めれば個室になる。

夕方の光が好き、お布団の中が好き、本が好き。「ずっとこのままだったら良いのになぁ」と撮影中、何度も呟く和子さん。2年前、森之宮第2団地に越してきた時の事を聞いてみました。

和子さん「私たちはどちらも大阪育ちで、15歳の時に高校のバトミントン部で初めて出会いました。もう9年の付き合いになりますかね。大学は別々だったし、年に一回連絡を取って一緒にモーニング食べに行ったり、かき氷を食べるような、そんなくらいの程よい距離感の仲でした。私が前に借りていた家が築48年の文化住宅で、それはそれは寒くって。その寒さに耐えられなくなっていた時、仕事の関係でUR団地のシェア制度を知って。家賃4万で一人で小さな部屋に住むよりも、家賃8万で少しでも大きな部屋を借りてシェアすれば良いんじゃないかって考えたら、すぐにそのかの事が頭に浮かんで電話してました。2019年の2月、難波パークスで“スカウト”しました。(笑)」

和子さんの行動力に、最初はそのかさんは驚いたようですが、「2年間」という期限を二人で設定した事で、住んでみようと決意できたそうです。それでは、そのかさんのお部屋に移ってみましょう。

まるでコックピットのようなデスクスペース。化粧道具に文房具、毎日の必需品がすぐ手に届くように配置されています。きっちりと整理するのが好きなそのかさん。休日の朝は起きてすぐ目に入ってくる白い壁と茶色の木の組み合わせを見て「好きな色だなぁ」と思うんだそう。ところで、今は何を書いているのですか?

そのかさん「家計簿です。月々出し合うお金の計算は私が担当しているんです。家賃、電気、ガス、水道、ウォーターサーバー、WiFi代が必ず必要になります。月々だいたい一人4万円前後くらいの維持費で暮らしています」

そのかさんは毎月、小さなメモ用紙に内訳をまとめて和子さんに渡します。和子さんはその用紙を全部大事に保管していました。

そのかさんが和子さんに渡した月々の維持費メモ。和子さんの引き出しから出てきました。

一枚だけ何やら説明書きのようなものがありますね。これは何ですか?

和子さん「これは私にとってとても大事なものなんです。一緒に暮らす上で初めてもらったそのかからのメッセージです。私、水切りカゴに洗ったものを積み上げるタイプだったんですね。それがある日、積み上げすぎてカゴが倒れて、そのかのお気に入りのマグカップを割ってしまったことがあったんです。とても悲しくて反省していたら、このメモ用紙を置いておいてくれたんですよ。台所周りの使い方の“提案”です。優しくて、素晴らしい伝え方だなと感動して。誰かと一緒に暮らすために必要な基礎みたいなものをここで知りました」

“小鍋、フライパンはカゴに入れずに、コンロの上に置いて乾かすとすぐ一杯にならない気がする。住所が分からないタッパーとかお弁当箱とかはザルに入れる。(いつも私のお弁当箱ありがとう)もうカゴが倒れて食器が割れませんように”

そこには確かにこう書かれていました。そして、このようなメッセージは後にも先にもこの一枚だったとのこと。何と素敵な関係性でしょうか。

コタツの部屋の中心には二人の消耗品を買うための共同財布。月初に数千円入れる。
冷蔵庫の中のものは基本的に別々。マヨネーズは2本入っていた。

付かず離れず、1週間会わないしゃべらない時だって。それでもこの2年間であらゆるパーティーを二人でしたと言います。手巻き寿司、生春巻き、チーズタッカルビ、チーズフォンデュ、焼肉、たこ焼き…。食べ物の話をしている二人は本当に楽しそう。もしかしたら、そこが大事な共通点だったのかもしれませんね。

このページが、二人にとっての一つの卒業アルバムになるのかな。そんなことを考えると嬉しくもあり、ちょっと切なさもこみ上げて来ます。

残りの時間も、どうか良きものでありますように。

写真・文:平野愛

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