一人じゃない、団地のひとり暮らし

部屋とカメラマン

一人じゃない、団地のひとり暮らし

「何もない家ですけど、よかったら来てください」と呼んでくださったのは、プロダクトデザイナーのリエさん。小さな置きもの、普段使えるもの、形のないもの…さまざまなデザインに携わりながらひとり暮らし4年目。冬の光の差し込むおうちで、リエさんの物語を聞かせてもらいました。

「キッチンのガラスが可愛くて
ここに住もうって思ったんです」

「少しの古さと手をかける楽しみ
それが自分の時間になっています」

「よく人から物をもらいます。
リビングの絨毯もキッチンの机も
テレビも踏み台も棚もクッションも毛布もヒーターも柿も
そうそう、机をもらったら
料理が好きになりました」

「“見て”と“見ないで”の葛藤でいっぱいです」と、到着早々に微笑みながら胸の内を教えてくださったリエさん。恥ずかしい恥ずかしいと押入れの襖に吸い込まれつつも、家の中の物を一つ一つ見せてくださっては、その物語を聞かせてもらいました。

便利優先の家具付きマンション暮らしから辿り着いたのが団地暮らし。団地の存在や成り立ちは映画「人生フルーツ」から学んだそうで、忙しない日々から心が復活したとも。

「団地っていいですね。ホッとするんです。ポツポツと窓から漏れる光を見ていると、他にも一人暮らしをしている人がいるんだなぁって。一棟建てのマンションでは横の光は見えないですからね。

“今年も柿が実りました。◯月◯日に来てください”って書いた張り紙がご近所に貼ってあったりすると、その時間にもらいに行ったり、集会所で七夕イベントとか何かあると参加したりもするんです。そういうとき、あぁ一人じゃないなぁって思うんです」

「これからですか?そうですね、いつかオーブントースターが欲しいです。パンとかグラタン、作ってみたいんです。また誰かくれないかなぁ(笑)」

いつの間にかはじまった編み物。ヒーターの温もりと冬の低い太陽の光。なんだか近所のおばあちゃん家にいるような、不思議な気分と時間が流れていきました。

写真・文:平野愛 
住人コーディネート:中川なつみ

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