戦前に建てられたトヨクニハウスに
驚きのカフェがあります

[淀川左岸の街シリーズ]

戦前に建てられたトヨクニハウスに
驚きのカフェがあります

地下鉄都島駅から歩くこと約10分。突然、ノスタルジックムードがプンプンと漂う建物が現れます。
1932年に建てられたという、現存するなかでは日本最古の鉄筋コンクリートの集合住宅「トヨクニハウス」。ここで4年前から営業をはじめた「トヨクニ・コーヒー」を訪ねました。


ドイツ人、もしくはイギリス人が設計したというトヨクニハウスは、建てられた当時は高級賃貸物件として憧れの住宅だったそうです。公務員の初任給が55円だった時代に、トヨクニ・ハウスの家賃は100円以上していたのだとか!!

意匠を凝らしたRC造のハイカラな外観。ところが、「トヨクニ・コーヒー」の扉を開けると様子は一変します。靴を脱いで入ったお座敷にはちゃぶ台にお座布団、黒電話、木製冷蔵庫まで。いろんな時代のものがゴチャ混ぜになって、目に飛びこんできました。

トヨクニ・コーヒーの中は建物とはまた違った雰囲気で、そのギャップもまた楽しい。
玄関横の棚にはサトちゃんやケロちゃん、ナショナル坊やの姿が。ピンクの電話は使用可能。
美空ひばりが微笑む金鳥のホーロー看板がある特等席。実は、押入れの中。
ちょっと洗練された琉球だたみの茶の間と…
座面の低い椅子&テーブルが置かれたリビング。

「若い方もご年配の方も、どんな世代の方もなんとなく懐かしいな、と思ってもらえるような空間になっているかなって思います」とご店主。そもそも、トヨクニハウスと出会うまでは、自宅のリビングに知人を招いて「おうちカフェ」を定期的に開催していたのだとか。「人が集まる場所を持ちたくて、いい物件があればカフェをしたいな」と思っていたところ、この建物にめぐりあって、「FOR SALE」の貼り紙を見て、迷わず不動産屋さんに連絡をしたといいます。

ダイヤル式の黒電話。
奥に見えるのが木製の冷蔵庫。
アグネス・チャンとイエロー・マジック・オーケストラが重なりあってます。

家の中はすでにリフォームされていたので、内装はほとんど触ることなくカフェをオープン。
和洋問わず古いものが好きだというご店主が、部屋になじむインテリア小物や食器を集めてディスプレイしたり、カフェで使ったり、はたまた販売したり。

かっこいい欄間。
昔のカルピスのポスター。書いてることがちょっと怖い(笑)。
窓枠も昔のまま。
丸窓に福助人形。

そして、店内に満ちあふれているのが、鼻孔をくすぐる香ばしい匂い。ご店主が「大好き」というこだわりのコーヒーです。
「お店を始める前に、娘とふたりで今福にある『煎りたてハマ珈琲』に焙煎を習いに行ったんですよ。オープン当初は、毎朝その日の分をお鍋で焙煎していましたけど、おかげさまで今は、お鍋ではおいつかず、直火の焙煎機でローストしています」。

オーダーが通ってから豆を挽いて、1杯ずつ丁寧にドリップ。
アイスコーヒーやジュース用のコースター。「なかなかなくて、見つけると少しずつ買い足してます」。

いろんなところから仕入れる生豆を焙煎したコーヒーは、浅煎りのエチオピア、中煎りのペルー、エクアドル、中深煎りのブラジル、ケニア、深煎りの東ティモールの6種類。挽きたての豆で淹れるアイスコーヒーもこの時期おすすめです。さらに、コーヒー2杯目は半額というサービス(違う銘柄でもOK!)もうれしい限り。

まろやかで穏やかな味わい。ホットコーヒー500円。
コーヒーはテイクアウトもOK。豆の販売もしています。
マガジンラックには1956年の雑誌『暮らしの手帖』が当たり前のように置かれています。

コーヒーとともに味わいたいのは、バター醤油トーストに焼き海苔をサンドした「のりトースト」や、オリジナルの鶏ごぼうサラダをのりトーストにサンドした「鶏ごぼう・のりトースト」。
ご店主と一緒に店をやっている娘さんが作るベイクドチーズケーキ、暑い季節限定の冷やしバナナケーキも好評です。

鶏ごぼう・のりトースト620円。
店内にひしめくレトロな雑貨は、少しずつ買い集めたり、知人、友人が持って来てくれたり。
レトロ雑貨販売のコーナーも。グラスのデザイン、プラスチックのキャニスター、たまりません! コーヒーカップはノリタケのものも。

「焙煎はどちらで?」とお聞きしたところ、「実は2階がありまして…」と。え、2階も!
案内していただいた2階は、「トヨクニ・コーヒー ニカイ」という名で、ご店主の息子さんが切り盛り。ちょっと隠れ家風で、1階のテイストとはまた違った雰囲気に驚かされます。

絵になる階段室。右側が「ニカイ」、左は住居。
「ニカイ」には手作りのカウンター席。奥にはコーヒー豆の焙煎機が見えます。
パンタロンにティアドロップのサングラスの男の子が暮らしていそう!?
建てられた当時、相当珍しかった水洗トイレ。物珍しかったご近所さんが「使わせて!」とよくやってきたらしい。
ということで、便所の「御注意」も。
1階ともまた違った窓ガラス。
ステンドグラスも。
「ニカイ」の雑貨コーナー。1階ともすこし品揃えが違っています。

取材当日は、土砂降りのレイニーデイ。
それでも、雨ニモ負ケズに出かける価値ありな、まったり&のんびり&ほっこりのステキカフェでした。

この小さな扉は、配達される牛乳を入れるためのもの。
袖壁にも丸窓。

トヨクニ・コーヒー
住所/大阪市都島区高倉町1-14-3 トヨクニハウスA棟1階
営業時間/11:00~18:00
定休日/水曜
電話/06-6167-9255
※トヨクニハウス・ニカイは営業時間や定休日が異なります

取材・文/いなだみほ 撮影/沖本明 編集/竹内厚

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