[淀川左岸の街シリーズ]
戦前に建てられたトヨクニハウスに
驚きのカフェがあります
2020.08.04
地下鉄都島駅から歩くこと約10分。突然、ノスタルジックムードがプンプンと漂う建物が現れます。
1932年に建てられたという、現存するなかでは日本最古の鉄筋コンクリートの集合住宅「トヨクニハウス」。ここで4年前から営業をはじめた「トヨクニ・コーヒー」を訪ねました。

ドイツ人、もしくはイギリス人が設計したというトヨクニハウスは、建てられた当時は高級賃貸物件として憧れの住宅だったそうです。公務員の初任給が55円だった時代に、トヨクニ・ハウスの家賃は100円以上していたのだとか!!
意匠を凝らしたRC造のハイカラな外観。ところが、「トヨクニ・コーヒー」の扉を開けると様子は一変します。靴を脱いで入ったお座敷にはちゃぶ台にお座布団、黒電話、木製冷蔵庫まで。いろんな時代のものがゴチャ混ぜになって、目に飛びこんできました。





「若い方もご年配の方も、どんな世代の方もなんとなく懐かしいな、と思ってもらえるような空間になっているかなって思います」とご店主。そもそも、トヨクニハウスと出会うまでは、自宅のリビングに知人を招いて「おうちカフェ」を定期的に開催していたのだとか。「人が集まる場所を持ちたくて、いい物件があればカフェをしたいな」と思っていたところ、この建物にめぐりあって、「FOR SALE」の貼り紙を見て、迷わず不動産屋さんに連絡をしたといいます。



家の中はすでにリフォームされていたので、内装はほとんど触ることなくカフェをオープン。
和洋問わず古いものが好きだというご店主が、部屋になじむインテリア小物や食器を集めてディスプレイしたり、カフェで使ったり、はたまた販売したり。




そして、店内に満ちあふれているのが、鼻孔をくすぐる香ばしい匂い。ご店主が「大好き」というこだわりのコーヒーです。
「お店を始める前に、娘とふたりで今福にある『煎りたてハマ珈琲』に焙煎を習いに行ったんですよ。オープン当初は、毎朝その日の分をお鍋で焙煎していましたけど、おかげさまで今は、お鍋ではおいつかず、直火の焙煎機でローストしています」。


いろんなところから仕入れる生豆を焙煎したコーヒーは、浅煎りのエチオピア、中煎りのペルー、エクアドル、中深煎りのブラジル、ケニア、深煎りの東ティモールの6種類。挽きたての豆で淹れるアイスコーヒーもこの時期おすすめです。さらに、コーヒー2杯目は半額というサービス(違う銘柄でもOK!)もうれしい限り。



コーヒーとともに味わいたいのは、バター醤油トーストに焼き海苔をサンドした「のりトースト」や、オリジナルの鶏ごぼうサラダをのりトーストにサンドした「鶏ごぼう・のりトースト」。
ご店主と一緒に店をやっている娘さんが作るベイクドチーズケーキ、暑い季節限定の冷やしバナナケーキも好評です。







「焙煎はどちらで?」とお聞きしたところ、「実は2階がありまして…」と。え、2階も!
案内していただいた2階は、「トヨクニ・コーヒー ニカイ」という名で、ご店主の息子さんが切り盛り。ちょっと隠れ家風で、1階のテイストとはまた違った雰囲気に驚かされます。











取材当日は、土砂降りのレイニーデイ。
それでも、雨ニモ負ケズに出かける価値ありな、まったり&のんびり&ほっこりのステキカフェでした。



トヨクニ・コーヒー
住所/大阪市都島区高倉町1-14-3 トヨクニハウスA棟1階
営業時間/11:00~18:00
定休日/水曜
電話/06-6167-9255
※トヨクニハウス・ニカイは営業時間や定休日が異なります
取材・文/いなだみほ 撮影/沖本明 編集/竹内厚