UMAの原田さんらと団地探訪1

[香里ヶ丘シリーズ]

色彩計画で団地が大変身
UMAの原田さん、西野さんと
香里ヶ丘さんぽ 
デゴイチ編

大阪府枚方市の香里ヶ丘にはいくつもの団地が集まっています。
その中でD地区と呼ばれていた団地は、2017年の改修にあわせて、香里ヶ丘西と名称が変わり、色彩計画も見直されました。

この色彩計画を担当した「UMA/design farm」の原田祐馬さんと西野亮介さんといっしょに香里ヶ丘西を歩いて、その色のデザインについて聞きました。ディテールまで見ていけば、これはずっと住み続けても気づかないレベルかも! 取材に同席いただいたのはUR都市機構の長谷篤樹さんです。

写真右から原田祐馬さん、西野亮介さん、長谷篤樹さん。

集合場所は、香里ヶ丘西にあるD51棟の前。D51は「デゴイチ」という呼び名でも親しまれる香里ヶ丘西の象徴的な棟で、住棟としての大きさも最大。香里ヶ丘のメイン道路「けやき通り」に並行してたっています。

― 白を基調にして黒っぽいラインが効果的に使われていますね。

原田香里ヶ丘西のなかでもD51は、香里ヶ丘の入口のような存在にしたいと話していました。目立つ立地にあるので、他の棟とはちょっと違うデザインにできないかと考えて、さっぱりした色彩計画に。

西野実は、表の面とベランダの並ぶ裏側ではかなり印象を変えています。

― そうなんですね。後ほどぜひ見比べたいと思います。まずはD51の廊下から見てみましょう。エレベーターを降りると、目の前の壁に住戸番号の案内が描かれてますね。

長谷ここに住戸番号を入れようっていう考えがまず絶妙ですよね。

―ホテルなどの宿泊施設にはあっても、団地などの住戸では、意外とこの位置に案内は見かけない。

原田高齢者もたくさん暮らしているので、サインは視線が低くなる位置にデザインしています。僕たち、やさしいんですよ(笑)。住戸の数字もつくったよなあ。

西野もともと妻面に入ってた住棟番号のサインや、竣工当時の香里団地の募集パンフレットなどからエレメントをとってきて、書体を設計しました。

― ここに住戸番号の案内を入れるというのはURからの依頼で?

原田ではなく、僕らから提案させてもらいました。

原田親密さを出したくて、廊下の天井の色もちょっと変えています。壁面と同じ色にすると冷たい印象になりすぎるので。

― ほんとだ。壁面と天井では色が違う。

原田細かなところでいえば、廊下に面した壁と、この90度内側に向いた面とでもちょっと色が違います。

― え、違う? 内側の面がちょっと濃いですか。

西野そうすることで住戸の輪郭がはっきりとしているはず。

― 言われてみれば確かに。各住戸の室番号も書き文字になってるんですね。

原田表札に名前を入れない方が増えているので、室番号ははっきりと見えたほうがいいかなと。

― ひとつひとつ手描きで。

原田下書きしてからペイントしてくださってると思いますけど、ここは腕のいいペイント屋さんが担当してくれて、すごくきれいに仕上がってますね。

― 階段を上がってきた正面にも同じく、左右への住戸案内の表示がある。そして、廊下の突き当りにあたる壁には階数表示を、これまた大きく入れましたね。

原田高齢者の方や初めて来た方にもここはかなりわかりやすく。あと、大きな住棟なので、その抜けのある空間をどう見せるかというのもすごく考えました。…あ、この目地(めじ)のところまできれいに塗られてる、これはうれしいなぁ。

細かな塗り分けに、ペイントを担当する職人も丁寧な仕事で応える。
長い廊下の先に大きな階数表示が映える。ひとつ奥の壁には白の数字。

― こうして見ると、廊下の壁面を上と下で塗り分けてツートーンになっているのも水平ラインがはっきりしていいですね。では、階段室を降りていきましょう。踊り場の天井部だけ色が違ってますね。

下にあるクリーム色の帯はそのままD-51棟の裏面、ベランダの底部へと続いていく。

西野これは、外壁面からずっと色がまわってきているんです。

原田で、この階段室のスケール感が香里ヶ丘の親密さを表しているので、ここに団地名のサインを入れました。

― ちょうど白とクリーム色をまたぐようにサインが入って、階段室がちょっと気持ちのいい空間になってますね。


― では、D51棟の裏側に当たる面へ。ベランダがある面なので生活感が出ているだけでなく、確かに、色彩の点でも共用廊下サイドとはかなり違っていますね。

ベランダの底部の位置には左右にずっとクリーム色の帯が通る。

原田こちらの面は、建物がフラットじゃなくてかなり凹凸もはっきりしています。その立体感を強調するために、凹んだ面は淡いグレーに変えました。これも気づきにくいところですけど。

― ほんとだ!

凸のベランダ部分は白+クリーム色、凹の面はグレーに。

原田だけど、最上階の5階だけは、そこもグレーではなく白に戻しています。

― それはどうして?

原田建物を軽く見せるためですね。

西野向かいあう丘の高さもなんとなく意識したと思います。

― 南側の丘の上にもD地区の団地(D48)があって、そことの関係性も考えて。

原田それはすごく考えてますね。フラットな面と向かい合ってるので、それとの対比で。

奥に見える住棟がD51。手前の丘の上にD48棟がたつ。D51最上階は凹面も白い。
D48の北側の様子(D51と向かい合う面)。とてもフラット。

― D48棟も見ていきましょう。

原田ここは、入口となる階段室がかなり狭いんです。

― 他の団地と比べても小さな入口ですね。

原田ですよね。なので、そこの色を変えて目立たせつつ、垂直のラインを出して伸びやかに見せています。

西野色彩を使って、ここが入口だというサインを出している感じです。

原田今はもう使われてないダストシュートが残っていたので、そこはグレーに塗ってさらに垂直のラインを顕在化させました。

3色の細かな使い分けで建物が生まれ変わっている。

― まずはD51棟を見ていくだけでもかなりの見ごたえがありました。素朴な質問になりますけど、こういう色彩計画ってどういうところから考えていくんでしょう。

原田URさんからの要望というのもあって、たとえばエントランス周りはちゃんと顔づくりをしたいとか、妻面を意識させたいとか。そういうオーダーに対してディスカッションしながら、僕らの提案を加えていく感じです。

― URからのオーダーってこんなに細かくないでしょう。

長谷ですね(笑)。

原田細かな塗り分けはかなり重要で。

西野そうすることで立体的になるんですね。

― とはいえ、どうやってこれを考えるのか。

原田シミュレーションはかなりの数やっています。

西野竣工写真に近いものを使って、リアルな検討をしています。

― つまり、写真の上で?

原田そうです。はじめてUR団地の色彩計画に関わらせてもらった鳥飼野々二丁目団地のときには、いただいた図面に色を入れたりしたけど、どうもしっくりこなくて。それからは、建物の写真を撮ってその上に色をモンタージュしていくというやり方を見つけました。

長谷それがとても斬新でしたね。これまでの色彩計画といえば、立面図に塗り絵をした色彩計画しか見たことがありませんでしたけど、原田さん達は写真に色を乗せて見せてくれるから、実際の仕上がりがとてもイメージしやすかった。

原田周りの環境も見ながら色彩計画を考えているので、そのことも伝わりやすいかなと。立面図に細かな塗り分けだけが描いてあったとしたら、現場からも「なんでこんな手間かけるんや!」って言われそうなので(笑)。

― でしょうねえ。

長谷柱や梁など、ディテールを丁寧に塗り分けてられるので、それは住民さんにもなんとなく伝わっているかなと思います。「建物が生まれ変わった!」とおっしゃる方も多いです。

― 「団地といえば白い箱」というよくある先入観をほどよく覆してもいます。ほどよくというのがポイントですね。

長谷すごく絶妙な色づかいなんですよね。私もいち設計担当者として前から聞いてみたかったのですが、原田さんたちはどういったことをヒントにして色を選んでいますか。

原田ひとつは、団地を取り巻く周囲の景観にいろんな色があるので、そこから色をピックアップする作業は必ずやっています。そうすることで、図面上では一見ミスマッチなようでも景観とマッチするので。以前、奈良文化財研究所の人たちとの仕事で、大阪の鶴橋の街が景観的に面白いという話を聞きました。いろんな時代のさまざまな要素が積み重なって、それがいい均衡にあると。団地のある街にもそういう歴史の重なりがあるだろうなと思って、景観にいい均衡をつくりだせたらと思っています。

西野色を塗り直す前の、もともと使われていた色も大事にしています。どこかでその色をもう一度使って、きれいに塗り直すことも考えますね。同じトーンで彩度や明度はすこし変えたりしながら。

原田D51ではやらなかったけど、水平に長い建物の場合は、途中で色を分節してふたつの住棟に見えるような色彩計画にしたこともあります。D51でもそのやり方を社内で検討はしたけど、結局、提案としても見せなかった。

長谷そういう見せてもらってない案もかなりあるんですか。

西野たくさんありますよ。

長谷興味深い。

西野まず最初に色彩計画のコンセプトを立てて、それに合わせてリファレンスをつくっていきます。提案するのはそこからなので、その段階ではだいたいの色味は決定しています。

原田最初にコンセプトをつくっておけば、途中の色選びで迷ったとしてもまたそこに戻れるので。

長谷だから最後までブレないんでしょうね。

今回、歩いたのは香里ケ丘西の南東角(右下)に位置するD51棟、D48棟。広いぞ、香里ヶ丘。

→ 中心部編へつづく

取材・文/竹内厚 撮影/坂下丈太郎

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