UMAの原田さんらと団地探訪2

[香里ヶ丘シリーズ]

色彩計画で団地が大変身
UMAの原田さん、西野さんと
香里ヶ丘さんぽ 
中心部へ編

大阪府枚方市の香里ヶ丘にはいくつもの団地が集まっています。
そのなかのひとつ、香里ヶ丘西の色彩計画を担当した「UMA/design farm」の原田祐馬さんと西野亮介さんといっしょに団地を巡ります。
今回は、40棟以上の住棟が段々にたっている香里ヶ丘西の中心部へ行ってみましょう。

→ デゴイチ編はこちらから

写真右から原田祐馬さん、西野亮介さん、UR都市機構の長谷篤樹さん。

― かなりの大規模団地ですが、住棟ごとに色を変えたりもしてますね。

原田ここは住棟の配置を確認するために全体の模型をつくりました。「途方もないなぁ」って言いながら(笑)。間を行く道路と丘の関係がうまく設計された団地なので、設計当時の思想を視覚化するように、妻面に半円弧のようなデザインをいくつかの住棟に入れています。

― それも全部の住棟ではなく、ですね。

西野すべての住棟に入れるとガチャガチャするので。ヌケで見たときに、下の半円を描いた住棟と上の半円を描いた住棟がかわりばんこに見えて、まるで丘が続くような…。

― なるほど、そういうルールで半円弧を描いたり描いてなかったり。たくさんの住棟をグループとして捉えて、その並びから考えられた色彩計画でもあるんですね。

奥まで見通せば妻面に描かれた半円弧がみごとに連続しているのがわかる。

西野ベランダの底面に帯として使った色も2色あって、通りに面した住棟は緑色にしています。これは、URさんからの希望でもあって、今のような秋冬の時期は街路樹の葉が落ちるので、それを補うように緑の要素も入れておきたいと。

― そこは、東西の道に面したベランダには緑。それ以外は茶なんですね。妻面にローマ字表記の団地名が入っている住棟もあれば、何も書かれてない住棟もあります。

D35という住棟番号の鉄製サインは、もとあったものにきれいに色を塗り直した。

西野そのへんもリズムによって変えて。色は入れずに団地名だけが入ってるパターンもあります。

― あ、あれか。半円弧のデザインがかなり印象的ですね。

西野香里ヶ丘西を実際に歩いてみると、いくつもの丘があって、その丘の向こうに建物が見えてくるのが特徴的だったのでそのイメージです。あと、ぼくたちが色彩計画をやったタイミングで、団地の名前がD地区から「香里ヶ丘西」に変わったので、「西」という漢字も取りこんでロゴもつくりました。

― あのロゴには「西」の要素も含まれていたんだ。垂直のラインはエレベーターシャフト?

西野そうです。あとはダストシュートのイメージでもあります。

漢字の西であり、丘であり、中層団地を表したロゴ。

原田香里ヶ丘の基本計画には、建築家の西山夘三が関わっているんですね。さっきも少し触れましたけど、香里ヶ丘は、丘の上下に住棟が段々に配置されて、その間を抜けていく道がつくられている。しかも、団地を一列に並べずに、あえてずらして配置することでレイヤー上に団地が見えてくるのが面白い。

長谷あと、車道に対して住棟が高いレベルに配置されてるので、歩行者の視線や車の音が気になりにくい。

西野かなり静かですよね。

グランドレベルがばらばらで、配置も一列ではないため、住棟が折り重なって見える。
車道に対して住棟は丘の上にたつ。

― クリーム色ではなく、紫っぽい住棟もありますね。

原田団地内の通り道の正面にあって、視覚的にもアイストップになっている住棟だったので、色を変えました。

― なるほど、意図的に。やっぱりクリーム色って団地の色という感じがしますね。

原田そうなんだけど、よく使われる色から若干変えたと思います。ちょっと明るめかな。

西野そうですね。

手前の団地群はクリーム色、道の突き当りに並ぶ住棟は紫系の色に。
奥と手前で団地のベースとなる色が違っているのがわかる。

原田今回の色彩計画ですべての色を塗り直したわけではなくて、残すところは残しています。たとえば、このレンガのところは当時のままで。

― あらためてこの装飾を入れるとしたら大変ですもんね。

もともとのレンガ部だけを残して塗り替えた。ここでは住棟番号は足元に。

― 引きで見てもレンガ面が効果的に見えます。

原田残さずに、上から塗りつぶしてるところもありますけど。あ、頂上部の庇(ひさし)がオレンジ色のラインになっていて、あれは庇の裏までオレンジだったのを裏面は塗りつぶして、側部だけ色を残したものですね。

― 結果的にかなりオレンジが引き立ちました。

西野オレンジがスカイラインをつくってくれるので。

長谷エッジが効いてかっこいいですよね。

庇の側面のオレンジ、レンガの装飾が残したところ。各戸の窓の上にも注目。

― よく見ると、各戸の窓の庇は上部だけ黒く塗り分けられていますね。塗り直しの作業だからといって、べたっと塗りつぶしてしまわない繊細な色彩計画になってるんですね。

原田嫌がられるところもありますけど(笑)。

― 階段室から住戸の方へと入っていくと、玄関扉まわりは緑色!

原田こっちのエリアでは、すべて緑でフレーミングしてエリアの統一感を出してます。

西野スターハウスだけ青にしましたね。

原田あ、そうか。膨大だったからやったことを忘れてた…。

― 香里ヶ丘西には、4棟だけスターハウスと呼ばれる星型住棟があります。そこは後ほど向かいましょう。玄関扉の周りを緑で縁取ったのはどうして?

原田真っ白にしてしまうと空間が眠たくなりそうだったので。あと、自分たちの住戸だという気持ちを持ってもらうという意味もあります。

― 同一の壁面でも色を変えるだけで、こんなにも印象を変えられるんだ。細かな違いだったりするので、住んでいても意識されないことも多そうですけど。

原田それでいいと思うんです。10年住んでいて気づかなくてもいい。それでも、日常的にいろんな色に出会えるのはいいことだと思うし、色によって人の気分は変わってくるので、細かい塗り分けはすごく大事だなと思っています。

― 色を変えたことを伝えたいのではなくて、大事なのはそれによって生まれる空気感や雰囲気みたいなもの。

西野そうですね。色によって空間の使い方や人の生活というのは、ほんの少し変わってくるだろうなと思います。

原田色を変えて意図的に暗さを演出することもできるじゃないですか。つまり、今まであまり使われてなさそうだった空間に、明るい差し色を入れることでまた人通りが戻ってくるとか、色彩によるそういう作用は少なからずあると思う。

― そういうことって、駅前広場などの大きな公共空間でも考えられていることだと思いますけど、結構どんくさい雰囲気になりがち。どうしてかな。

原田それはわからないです(笑)。でも、細かい塗り分けまでやっている例は少ない。

西野立体的な計画になってないんでしょうね。


― では、最後にスターハウスと呼ばれる、星型住棟に向かいましょう(D37~D40)。一段と高い丘の上にあります。

原田松の木によるエントランス感がすごいんです。

― 建物に負けじと松も個性を出してきた(笑)。D48と同じく、階段室の入口はかなり小さめ。

原田そう、ちょっとわかりづらいんですよ。

― それでロゴとサインも入れて。建物自体は変えられないけど、色彩計画で入口を指し示している。

― そして、その入口から階段室に入ると、今度は空間がすごい。三角形の階段室!

原田この階段室の吹き抜けが素敵ですよね。普段は暗めな空間だけど、各住戸の扉を開けると光が通り抜けて一気に明るくなるんです。

― そして、スターハウスの扉だけは青に。

― ところで、UMA/desing farmではこれまでにどんなUR団地の色彩計画を手がけていますか。

原田それこそ、OURS.サイトでいっしょに千里の団地を散歩したのがきっかけですよ。

― 「うち まち だんち」の前身となるOURS.サイトでも、立ち上げ時に原田さんにご登場いただきましたね。原田さんの生まれ育った千里を歩きました。

原田そこから最初は鳥飼の色彩計画をやって(鳥飼野々二丁目団地)。

西野それから京都の壬生坊城第2、南港ひかりの、わかぎの。兵庫の志染。

原田大阪北摂の富田団地では色彩ではなく、ウォーキングコースの整備に関わらせてもらいました。今、やっている途中なのは南港のしらなみ、千里の高野台、あと、奈良の高の原は全体のリブランディングに関わってます。

― たくさんやってますね! UMAではグラフィックをはじめ、いろんなタイプのデザイン仕事をされています。 団地のデザインだからこそ考えることって何かありますか。

原田団地って、基本は賃貸でほんとにいろんな人たちが集まって住んでいて、その室内を見ることはできないけど、共用部分にそれがにじみ出ていることが多くて。だったら、その共用部分まで自分の住まいの延長として、より豊かに感じられるようになれば気分も変わるだろうなと思うから、そこは面白いところ。

― それぞれの部屋の中と暮らしに関われないけど、共用部の印象を変えることでも何かが変わる。

原田そう。それに共用部がきれいになれば、みんなもきれいに使うけど、荒れた雰囲気の共用部だと使い方がよくなくなる可能性があると僕は思います。

すっきり!

― 西野さんはどうですか。

西野自分の仕事の目線でいえば、普段、別の仕事でポスターをデザインすることがあったときに、それがどんな場所でどう貼られることになるのか、スケールを変えながら考えられるようになったと思います。もちろん、今までも想像してはいたけど、また違う目線で見れるようになったかな。

原田そうやんな。印刷物とはまったくスケールの違うデザインなので、そこは、僕らの他の仕事にも影響があるはず。

長谷あらためて原田さん、西野さんと一緒に歩いてみて、建物の特徴や周辺環境まで細かく見ながら、とても丁寧に仕事をされてるんだなと気づかされました。それによって生まれる空間の豊かさみたいなものは、はっきりと意識されてるかはわからないけど、住んでられる方にもきっと伝わっていると思いますね。

取材・文/竹内厚 撮影/坂下丈太郎

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