陸奥賢さんと
梅田のまち歩き辞典をつくろう!02

[梅田シリーズ]

陸奥賢さんと
梅田のまち歩き辞典をつくろう! 02

ターミナル、地下街、高層ビルで埋め尽くされたように見える大阪・梅田。ですが、実はまち歩きにも適した、さまざまな歴史と文化の積み重なったエリアなんです。
そこで、大阪各地のまち歩きをガイドしている陸奥賢さんにお願いして、梅田がもっと楽しくなるキーワードを少しずつ紹介してもらいます。今回は、王仁博士からダンスホールのことまで。

牛の藪入り
[うし-の-やぶいり]


大阪駅の初代駅長
[おおさかえきーのーしょだいえきちょう]

明治7(1874)年に開業した大阪駅。その初代駅長は武藤正明といいます。長州藩士として、慶応2(1866)年の長州征討で幕府軍と戦った記録などがありますが、明治維新後は鉄道寮に勤めました。
この武藤の妻が高杉タケといい、あの高杉晋作の実妹です。もちろん武藤は義兄・高杉晋作とも交流があり、江戸で酒を飲み交わした記録なども残っています。

:武藤正明は出世欲がなく、お酒好きで、お茶屋遊びを嗜む粋人であったとか。さすが、「おもしろきこともなき世をおもしろく」で知られる高杉晋作の義弟です。


渋谷ビール
[しぶたにびーる]

明治5(1872)年、天満の綿業商・渋谷庄三郎(しぶたにしょうざぶろう)が堂島に醸造所を作って「渋谷ビール」を醸造・販売しました。日本人経営者による初の本格的な商業国産ビールでしたが、当時の日本人にはその苦味がなかなか受け入れられませんでした。赤字経営が続き、明治14(1881)年に渋谷が亡くなると、残念ながら醸造所は閉鎖されました。北新地の路地には「国産ビール発祥の地」と書かれた碑が立っています。

:渋谷ビールは泡と消えましたが、渋谷ビール跡地の周辺は新地の飲み屋街だらけで、日夜、「乾杯!」とビールの泡が飲み干されています。日本にビールをもたらそうとした男の夢は実現したといえるのでは。


大日本ドケチ教
[だいにほんどけちきょう]

谷三兄弟
[たに-さんきょうだい]

兎我野の鹿
[とがの-の-しか]

菜種御殿
[なたねごてん]


歯神社
[はじんじゃ]

神山町にある綱敷天神社、茶屋町に御旅所があり、角田町には末社の歯神社があります。昔、梅田一帯が洪水に見舞われた際に巨石が”歯止め”となって水没を免れ、信仰を集めました。歯止めが転じて、歯痛にご利益があるとされ、いつしか歯神社となりました。毎年6月4日の「虫歯の日」に例祭が行われ、先着で歯ブラシが授与されています。

:かつて歯神社の近く、兎我野には「目神社」もありましたが、明治時代、都島区の桜宮神社に合祀されています。この組み合わせ、「目には目を。歯には歯を」のハムラビ法典を思い出してしまいます。


ワールド
[わーるど]

1962年、兎我野町にダンスホール「ワールド」が開業しました。生涯で300以上ものダンスホール、キャバレー、バーを設計したという大阪の建築家・生山高資が手掛けたものです。大阪キタを代表する社交ダンスの名門ホールとして、長く愛されてきましたが、2001年に惜しまれながら閉店しました。

:周防正行監督が1996年に公開した映画『Shall we ダンス?』の中に、ワールドが登場します。ちなみに跡地は現在、パチンコ店に。パチンコの玉がクルクルと踊っております。

王仁博士
[わにはかせ]

大淀中町にある王仁八阪神社の境内に、摂社の王仁神社があります。ここは、応神天皇や仁徳天皇に仕えた百済の渡来人、王仁博士の墓という伝承があります。王仁博士はわが国に論語(儒教)と千字文(漢字)をもたらしたという伝説的人物。界隈はかつて大仁町という地名で、これが王仁の転字だとも。
王仁博士は和歌「難波津に咲くやこの花冬ごもりいまは春べと咲くやこの花」の作者ともされ、大阪の此花区はこの歌から命名されています。

:「この花」は桜ではなくて「梅」とか。百済から流れてきた王仁博士も、大宰府に流された菅原道真公も、梅の歌を詠みました。さすらう人は梅の花が好きなのか!?

参考文献:
雑誌『郷土研究 上方』(創元社)
『大阪人物辞典』(編・三善貞司/清文堂)
『事典 近代日本の先駆者』(編・富田仁/日外アソシエーツ)
『ものづくり上方“酒”ばなし』(編著・松永和浩/大阪大学出版会)
『高杉晋作を歩く』(著・一坂太郎/山と渓谷社)
綱敷天神社公式サイト:http://www.tunashiki.com/
ダンスホールワールド:https://tpnoma.com/world/(野間裕史のページより)


陸奥賢

1978年大阪生まれ。「世界観に光をあてて揺さぶる」をモットーに「大阪七墓巡り復活プロジェクト」「まわしよみ新聞」「直観讀みブックマーカー」「当事者研究スゴロク」「劇札」「歌垣風呂」「仏笑い」など、日夜、妙な遊びの仕組みを作って世間に広めている。


文:陸奥賢 編集:竹内厚

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