阪急阪神不動産株式会社
開発事業本部 うめきた事業部 うめきたグループ
中野草太さん
2022.11.04

    ―「うめきた外庭SQUARE」の運営を担当されているとうかがいました。

    中野:はい。「うめきた外庭SQUARE(以下、外庭)」というのは、梅田スカイビルのすぐ東側にある芝生の広場のことです。単なる広場ではなく、“「みどり」のリビングラボ” というコンセプトのもと、大都市のなかの「みどり」の空間にどんな活用方法があるかについて、皆さんと一緒に検討して実践する実証実験の場です。活用方法を企業や地域から幅広く募っていて、その中で私は企業の方々とのやりとりとプロデュースを担当しています。

    ―企業や地域と一緒に新しい使い方を試してみる場所、まさに「共同研究ラボ」なんですね。

    中野:「外庭」がオープンしたのは2020年7月のことでした。工事の資材置き場だった場所に突然、芝生の広場が現れたので、地域の人たちも最初は不思議そうに見ていましたね。何かができるのかな、入っていいのかな…、そんな感じでした。

    ―そんななかで「ラボ」という使い方を知ってもらうのは難しそうですね。

    中野:最初は私たちのほうからいろいろな使い方を提案しました。子どもたちのための遊具を揃えたり、キッチンカーを出したり、オフィスのようなワークスペースを作ってみたりもしました。そうしているうちに「ウチの会社でこんなことをやってみたいんだけど…」と問い合わせがくるようになり、その取り組みを見た人たちから別の問い合わせがくるといった具合に広がっていきました。今では週に3~4件程度の問い合わせがコンスタントに来るようになっていますね。「外庭」は常に見えているスペースなので、やってみせることで使い道を示すことができたのだと思います。

    ―「外庭」で行われる各企業の取り組みには何か基準を設けているのですか?

    中野:実はそこがいちばん頭を悩ませたところでした。今でもルールはあるようでない、そんな感じです。

    ―というと?

    中野:私たちは不動産会社ですから、商業施設やオフィスビルなどを開発・運営するノウハウは十分にあるんです。私自身もうめきた事業部に来る前は商業施設をつくる部門にいました。商業施設の運営状態は集客数や坪あたりの売上高、賃料など、数字で定量的に計ることができます。
    でも、「外庭」のようなパブリックスペースの良し悪しはそういったものでは計れない。人数が多ければいいというものではなく、そこにいる一人ひとりが快適かどうか、その場所に愛着を持てるかどうか…そんなことが評価軸として考えられはしましたが、それをどう計るのかはもちろん、どうやればそれが実現するのかというノウハウもまったくなく…。何がどうなれば「GOOD」なのか、手探りと試行錯誤の毎日でした。

    ―オープンから2年が経ちましたね。 “評価軸”として見えてきたものはありますか?

    中野:目指す街の未来像に共感できるかどうかかなと思います。これからの地域や街のあり方、街と人の関係などの考え方に「いいな」と思える点があるかどうか、そして自らの取り組みによって自分達だけでなく、街を育てていこうという思いがあるかどうか。いずれも定量的に計れるものではありませんが、実施に向けて話し合いを重ねたり、実施されている現場を見ればおのずとわかります。

    ―どのような取り組みがありましたか?

    中野:たとえば、ラグジュアリー感にこだわった屋外ディナーを開催したことがあります。ミシュラン星つきレストランのシェフを招いて、ひとり3万円のコースを提供するというものです。「みどり」の空間で「食」の体験価値をいかに増幅させられるか。五感で味わってもらうことを意識し、夜風にあたりながら生演奏や焚き火の演出を添えて、一流の料理を堪能していただく。第1回は試験的にクローズドな形式で行いましたが、今後広く展開していけると思っています。
    また、「外庭」をオフィスとして活用するという実験も行いました。建設機械やイベント機材などをレンタルしている西尾レントオールという会社があるのですが、同社は「MIDORI オフィス」と題して2週間にわたり本社機能を「外庭」に移したんです。

    ―本社を移す、ですか?

    中野:そうです、おもしろいでしょう? この取り組みの目的は「災害などの有事の際に、仮設の通信環境の下で普段通りの業務が可能か」「屋外で働くことで、働く人々のクリエイティビティやチームビルディングは向上するか」などの検証だったのですが、業務はおおむね滞りなく行えましたし、実際に働いた社員さんたちにも好評でした。近年、自然災害が増加しています。この取り組みには自治体による視察もあり、似たような取り組みが他県でも行われるなど、私たちの想像を超える波及効果がありました。新しいものをこの「うめきた」から生み出せたのはとてもうれしかったですね。

    ―「うめきた」にこだわっているわけではないんですね。

    中野:「外庭」はもともと1000日間限定のプロジェクトなので、2023年3月に終了します。2024年には「うめきた2期地区開発プロジェクト」の先行まちびらきが行われますが、その「うめきた2期」には、「外庭」の約20倍の広さの都市公園が登場します。当社を含むうめきた2期開発事業者がこの都市公園の運営管理を担う予定であり、その意味で「外庭」は小さな練習場でした。ですから、「外庭」終了後の我々のミッションは、「外庭」で築いた実績や、企業や地域の人たちとのネットワークを昇華していくこと。それらを「うめきた2期」に生かすことはもちろんなのですが、「うめきた発」のまちづくりのアイデアをどんどん広めていきたいと思っています。

    ―実現していけそうですか?

    中野:ええ。「外庭」では本当に多種多様な実証実験を行ってきました。感覚的には半分近くが次につなげられる取り組みだったと感じています。
    「外庭」での実証実験はとても貴重な成果。ゆえに、大きな可能性を秘めているとも言えるのです。

    ―「外庭」のクローズまで残り半年弱となりました。

    中野:そうですね。新しいことばかりに挑戦するので、小さなものから大きなものまで、本当にたくさんの壁がありました。そんな毎日のなかで、自分自身にも大きな発見がありました。建物であれ、公園であれ、利用者と管理者はタテの関係性にありました。でも、「外庭」でやってきたように、ヨコ並びのフラットな関係性のなかで互いの交わる部分を探し、どう広げていくのかを考えるという関係の築き方もあるんですよね。「利用者からやりたいと声があがったがことを認める、認めない」の2軸ではない「どうやったらやれるか一緒に考える」という共創的スタンスの面白さを体感できる時間でした。これは、今後の働き方や生き方にも大きく影響を与えていくんじゃないかなと感じています。


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