阪急阪神不動産株式会社
開発事業本部 うめきた事業部 うめきたグループ
田辺莉奈さん
2022.11.04

    ―「うめきた事業部」とはどんなことをする部門なのでしょう?

    田辺:当社は2024年に先行まちびらきをむかえる「うめきた2期地区開発プロジェクト」の事業者のうちの1社です。私が担当している業務のひとつは、うめきた2期で展開する「みどり」のまちづくりの先行トライアルの場「うめきた外庭SQUARE(以下、外庭)」の運営。企業や市民の人たちと一緒に広場を使ったさまざまな実証実験を行っています。

    ―実証実験とは?

    田辺:平たく言うと、広場の新しい使い方の模索。広場のもつ可能性をみんなで探してみようということです。我々が広場を “完成品” として提供するのではなく、余白を残した状態でいろいろな人からアイデアを募り、一緒にさまざまな使い方を試しては、イベントの主催者や来場者からフィードバックをもらって、次につなげていく。そんなサイクルを繰り返しながら、完成度を高めていこうと実施してきました。

    ―2020年7月、コロナ禍真っ只中でオープンした「外庭」は、もともと1000日限定のプロジェクトでした。2023年3月をもってクローズとなります。

    田辺:寂しいですよね(笑)。私は中途採用で、最初に配属されたのが、このうめきた2期を担当する部署でした。会社のこともまだよくわからない。さらに公園での実証実験と言われても何から手をつけていいかもわからない。まさに「右も左も……」という状況だったので、がむしゃらに毎日を過ごしてきた「外庭」とのお別れは名残惜しいです。

    ―印象的な取り組みはありますか?

    田辺:「外庭」では、“「みどり」のリビングラボ”をコンセプトに、企業や地域の人たちと一緒に活用方法を検討しています。過去実施した地域の方の企画で、もっとも大きく成長したプログラムのひとつが地域密着型キッチンカーフェス「WHO’s FOODS(フーズ・フーズ)」でしょうか。コロナ禍で苦境に立つ地元の飲食店が集う形で始まったキッチンカーフェスで、最近では毎月1度のペースで行われています。地元飲食店のPRや地元の活性化につながるのはもちろん、出店者同士のつながりもでき、彼らは夢を語り合う仲に。今では毎回数千人規模の集客を誇る大イベントにまで成長しています。

    ― 一過性でなく、継続しているのがいいですね。

    田辺:そうですね。「外庭」のようなパブリックスペースを未来のまちづくりにどう生かすかを考えたとき、利用者に「愛着」を持ってもらうことはとても重要なことです。まちの永続性につながりますから。
    「外庭」では、空間自体に愛着を持ってもらえるような工夫をいくつもしていて、芝生もそのひとつ。一般的な公園で整備される芝より葉の長い芝を育て、居心地や座り心地がいいようフカフカにしてあるんです。これも実験を重ねていまして、7種類の芝を植えて生育比較実証を行いました。そのひとつにティフトンという種類があったのですが、これは甲子園球場にも使われている芝で、野球ファンの人は熱心に観察されていましたよ。

    ―過ごしやすさは愛着を生みそうです。

    田辺:過ごしやすさとともに、コミュニケーション形成にも力を入れて取り組んでいます。「ここに来たら誰かに会える」「仲間と一緒にここで過ごす」。そんな体験が空間への愛着を増してくれると思ったからです。その試みとして、「外庭倶楽部」といういわゆるクラブ活動を発足させました。

    ―クラブ?

    田辺:「外庭」を舞台に新しいコミュニティを作ってもらうための取り組みです。そうは言っても最初は誰も知りませんから、自分たちで立ち上げました。たとえば、スポーツ感覚で街をきれいにする「SWEEP UP!」。要はみんなで清掃したり植物を植えたりして一汗かいて、最後は飲物で乾杯するというものですが、今では参加メンバーの中から事務局ができ上がっており、参加者も時には100人規模に。先日はうめきた周辺から飛び出して靱公園まで行ったんですよ。もちろん、私自身も立ち上げたものがあって、吹奏楽をやっているので「Niwa no Ne ~庭音~」という音楽コミュニティをつくったんです。

    ―どんな活動なのですか?

    田辺:当初は関西を中心に活躍しているプロの演奏家を招いて、「外庭」の開放的な空間で生演奏を楽しむ、ということを目的に実施したのですが、「演奏する人」と「聞く人」という関係性だとコミュニティが生まれにくいな、と。そこで、出演いただいたプロのチェリストの方に相談して、参加者が一緒に体験できるような企画を考えました。数回屋外で実施するレッスンに参加してもらったうえで、「外庭」で開催する「外庭音楽祭」にみんなで出演しようという企画です。「外庭音楽祭」は複数のプロの演奏家による音楽イベントですが、「大きな舞台で特別な体験をしてほしい!」ということで、そのなかのひとつのプログラムに「Niwa no Ne」の演奏を盛り込んだのです。

    ―わあ!何を演奏したのですか?

    田辺:12月だったのでベートーヴェンの「第九」です。大人も子どもも一緒に、楽器の経験の有無も関係なく取り組みました。バイオリンやチェロを奏でる子もいれば、ピアニカで参加する小学生もいたり、楽器を触ったこともないという子にはプロの打楽器奏者の方がタンバリンやシンバルなど私物の打楽器を用意していただきました。みんな一生懸命練習した甲斐があって、本番は大成功。多くの参加いただいた親御さんから「またやってほしい」という声が聞けて、私は感無量でした。

    ―素敵な思い出になりますね。

    田辺:一生忘れないと思います(笑)。この話には後日談がありまして、この音楽祭をたまたま見にきていた地域の学生さんが、「自分達もここでイベントをやりたい」「企画から全部自分達でやってみたい」と手を挙げてくれて。私はこちらの企画にも最初から最後まで関わらせていただいたのですが、悩んだり笑ったりしながら一生懸命取り組む姿に心を動かされることが多かったです。

    「外庭」の公式ホームページ宛に外庭音楽祭に訪れた中学生から、「私もイベントをやってみたい」と問合せが届いたことも。友達に声をかけるような気軽さで声をかけてくれたことがとてもうれしいと田辺さん。

    ―イベントなどを運営される人たちとすごく近い距離で活動されているのですね。

    田辺:そうですね。地域の人たちとの関係づくりはとても大切だと思っています。「外庭」の周辺には昔ながらの店舗もたくさんあり、そこに長年住んでいる人もおられます。イベントの内容によっては、事前のご説明に何度もお邪魔したので、今ではすっかり顔馴染みの間柄になった人もあります。「うめきた2期地区開発プロジェクト」で私たちは未来のまちづくりをしているわけですが、まちづくりの基本は「顔を合わせること」にあるのかなと思っています。

    ―「外庭」、そして「うめきた2期」では、今後どのようなことをしていきたいですか?

    田辺:「外庭」が1000日目を迎えるまでは、新しいタネをまだまだ撒いていきたいですね。そして「うめきた2期」が完成したら、「外庭」の約20倍以上の広さの大きな公園が私たちのフィールドになります。「外庭」のスケール感でこそできていたこともたくさんあるので、舞台が大きくなることには不安もありますが、「外庭」で撒いたタネを、継続して大きく育てていきたいです。
    近年、民間企業が公園を運営管理する事例が増えてきているのですが、「うめきた2期」のように整備段階から官と民が連携する事例は全国的にみてもめずらしいケースです。外庭で培った民間企業ならではのパブリックスペース運営の視点を活かして、うめきた2期に繋げていきたいですね。ビジネスモデルが確立していない仕事だからこそ、やりがいも感じています。


    うめきた2期地区にかかわるシゴト(阪急阪神不動産編)
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