『リリアン』 
岸政彦=著/新潮社

『路上観察学入門』 
赤瀬川原平=著/ちくま文庫

『死んでたまるか』 
団鬼六=著/ 講談社

1『リリアン』
大阪の街の情景描写と共に流れる会話の物語。やらかい大阪弁が持つリズムが、もの悲しさに愉快なあたたかさを与えてくれるようで心地よい嬉しさを感じた。音楽を生業にしている自分と重なるところもあって(コロナ禍なので余計に)、以前ある地方のスナックで「悲しい色やね」を歌って妙にマダムに気に入られてしまった帰り道を思い出し、複雑なやさしさに包まれた気持ちになりました。会話の物語といえば『パパ・ユーアクレイジー』(著:ウィリアム・サローヤン)もおすすめ。こちらは伊丹十三の翻訳が詩的で素敵、子を持つ父なら海辺の静かな町に住むのもいいなと思うはず。

2『路上観察学入門』
降りたことのない駅で降りて、ただひたすらに街を歩くことがある。貪欲に何かを収集しようと意気込むわけではなく、ましてやエクササイズを目論んでるわけでもなく。この本、単に「まち歩き」といってしまえばそれまでのところ、ユニークな観察眼と独特なアウトプットが面白い。周期的にSNSに飽きてしまう僕ですが、そんな時こそ手を伸ばしてしまう一冊。

3『死んでたまるか』
長引くコロナ禍に窮屈さを感じている人に読んで欲しいSM作家 団鬼六の自伝エッセイ。さすがの筆致で綴られた恥と諦めの境地が面白くて最高。人の暮らしは環境によって左右されることが多いが、人の変わらぬ部分に人生を感じずにはいられません。一期は夢よただ狂え、まあえっか力が養われること間違いなしの一冊。


早瀬直久

音楽ユニット「ベベチオ」/ 制作ユニット「ragumo」代表。これまで映画やCMなど様々な分野で楽曲を手掛ける。奇妙礼太郎『ハミングバード』(2021)、『たまらない予感』(2022)で全曲作詞作曲プロデュースを担当。


◎早瀬直久さんには、お父さんとのポロリいい話を連載企画「父さん百科」としてお話いただきました。

→「父さん百科」 
https://karigurashi.net/tag/tosan-hyakka/ 
(2018年-19年公開記事)

2022.02.14

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