歌集『パン屋のパンセ』 
杉﨑恒夫=著/六花書林

『サザンウィンドウ・サザンドア』 
石山さやか=著/祥伝社

『小さな風景からの学び』 
乾久美子・東京藝術大学 乾久美子研究室=著/TOTO出版

 

1歌集『パン屋のパンセ』
「アテンション・プリーズ散歩の道に遭う一つの雲のこんな優しさ」「日の暮れはわれを異国の人にするたった一駅はなれた街で」  歌集とは短歌の本のこと。杉﨑さんのまなざしを通して眺めると、見慣れたはずのまちのワンシーンが幻想的に、焼き上がるパンのように香りを伴ってふくらむ。あたたかさとさびしさが同居、ではなく混ざり合ってできた色合いの、単色なのにカラフルな、一筆書きの童話を思わせる読み心地を味わってほしい。

2『サザンウィンドウ・サザンドア』
団地という大きなホームグラウンドの中で、今に没入して伸び縮みする時間、過去を抱きとめて流れる時間。数多の窓明かりの向こうに数多の生活や喜怒哀楽があることを想像するのは得体が知れず恐ろしいけれど、この本を読んでからは、同時に愛おしくも思えるようになった。タイトルの「サザン」はsouthern(南向き)ではなくthousand(千)なのも好き。僕の「なみだめで見つめる団地の窓の灯はいろんな国のはちみつの瓶」という短歌は、この漫画に捧げて詠んだもの。

3『小さな風景からの学び』
ミニマルテクノを聴くように眺められる風景の写真集。日々を退屈に感じるのは、近場の風景の捉え方が凝り固まっているときかも。そんなとき、「まなざしのストレッチ」に重宝する一冊。


岡野大嗣

歌人。著書に『サイレンと犀』『たやすみなさい』『音楽』、共著に『玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ』『今日は誰にも愛されたかった』がある。
Twitter:@kanatsumu


◎岡野大嗣さんは、谷じゃこさんによる連載企画「部屋にうたえば」第1回のゲストとして参加いただきました。

→「部屋にうたえば」 https://karigurashi.net/tanka/utaeba-01/ 
(2020年公開記事)

2022.02.14

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