ココロ ツナガル しらさぎプロジェクト 富田団地から白鷺団地へ 2
シラサギでつながる、2つの団地の未来

2020.05.14

2020年2月16日(日)、大阪府高槻市の富田団地を飛び立った「シラサギプロジェクト」が、大阪府堺市の白鷺団地に舞い降りました。2019年度の「大阪芸術大学×URアートプロジェクト」第2弾として行われた、この白鷺団地でのワークショップの様子をご紹介します。


参加者の笑顔が、学生たちの笑顔に

天気予報どおり、あいにくの雨模様でした。それでも、学生たちの準備が進むにつれて、雨雲を通して陽ざしが感じられるようになってきました。
大阪芸術大学芸術学部芸術計画学科教授の谷悟先生は、学生たちに「我々の想いを白鷺団地の住民の皆さんにしっかりとお話し、ワークショップへの参加を呼びかけましょう」と笑顔で伝え、プロジェクトメンバーの意識をあらためて高めるところからスタートが切られました。

準備を進める集会所では、1月12日に富田団地の皆さんの手で羽根を着けられた「しらさぎの舞」の衣装が、学生たちを見守っています。雨が上がると、早速、学生たちは外に出て住民の皆さんに声をかけ始めました。
学生たちの祖父母世代の男性と女性が会場に入ってきました。「どうすればいいんかな?」と男性。一生懸命に説明する学生たちの言葉に耳を傾け、ずっとニコニコされていました。お二人とも、白鷺団地で子育てをされ、子どもたちはもう独立されているとのこと。孫のような年齢の学生たちに促されるように、羽根にメッセージを書き込み、シラサギに貼りつけてくれました。

団地とともに育ってきた白鷺のまち

白鷺団地は、昭和38年~39年にかけて建設されました。当時は、とても近代的で憧れだったと、白鷺団地自治会長を務める山田さんに聞きました。
白鷺団地に近接する白鷺駅は、南海電鉄高野線の中百舌鳥運動場前臨時駅として一時期使われていた施設を改修し、昭和39年に開業。昭和40年には、堺市立白鷺小学校が開校し、白鷺団地の建設とともに生活基盤が整備されました。昭和40年代~50年代にかけては、子育て中のファミリー層が多く、たくさんの子どもたちが団地内を走り回っていたそうです。

すべての人に贈るメッセージ「元気でガンバレ」

雨の中、わざわざ参加してくれた女性は、羽根にメッセージを書きながら団地の思い出を語ってくれました。「昔は、大きな桜の木が6本もあって、春になるとみんなでお花見をしました。子育て中だったので、今のママ友みたいな感じで、みんな仲良しでね。もう何十年も前の思い出ですね。あの桜は、今でも一番好きな桜ですよ」。

「あら、こんなことしてたんやねー。どうすればいいの」と、二人の女性が入ってきました。学生の説明にウンウンと頷き、早速、羽根にメッセージを書いてくれました。「元気でガンバレ」「健康第一」という言葉は、ご自身へのメッセージと、白鷺団地で育ち、巣立っていった子ども達へのメッセージ。そして、友人たちへのメッセージとして、富田団地へ送りたい言葉です。
こうして2つの団地をリレーする皆さんの想いが、「シラサギの舞」の衣装に託されます。

組紐を紡ぐように、歴史を刻む

白鷺団地の移り変わりは、まさに大阪の発展の歴史です。重厚長大な経済発展を支え、バブル期に向かって絶好調を迎えました。その後、白鷺団地は建替の計画が進みました。近隣のUR賃貸団地などに転居された住民も多く、それでも現在約1400人が住み、中には50年以上にわたって暮らしている人もいます。
お父さんと6歳の娘さんが訪ねてくれました。1月の富田団地で紡がれた140㎝の組紐を、6歳の女の子が小さな手でさらに丁寧に紡いでくれました。その後も、参加してくれた住民の皆さんが少しずつ紡いでくれました。組紐のように着実に、団地の歴史も親から子へ、そして子から孫へ。3世代に受け継がれていきます。

賑わいを今に伝える『白鷺音頭』

集会所の入口横の壁に、『白鷺音戸』と書かれた銅版が収められた額が掛かっていました。冒頭には、「堺市白鷺団地自治会創立十五周年記念選定(昭和五十三年)」と刻まれています。参加してくれた住民の皆さんにお聞きすると、「昔は、盆踊りの時に踊ったなあ」と、懐かしんでいました。その中の一人が、「踊りのサークルメンバーの中には、今でも踊れる人がいるかもしれんね」と、教えてくれました。
銅板に刻まれた歌詞の一部を紹介しましょう。

ハアー
おひな祭りに 春が来たコラショ
若葉青葉に 風ひかる
青空高く 鯉のぼりソレ
白鷺団地は よいところ
ぼくとわたしの ふるさとサ
白鷺音頭でドドンがドーンと
ドーンとドーンと躍ろじゃないか

 

このような調子で、白鷺団地の春夏秋冬が歌われています。横には楽譜も刻まれ、昭和56年に白鷺団地の自治会と徳島県日和佐町町内会連合会が姉妹提携を成立した記念に贈られたことが記されていました。
堺市のある大阪と徳島は、昔からフェリーや客船が就航し、人の行き来が多かったそうです。白鷺団地に、徳島を故郷に持つ人がたくさん住んでいたのではないでしょうか。まさしく、関西の高度成長期を支えた団地ならではの歴史の一場面を垣間見ることができました。

未来に向けて飛ばす、シラサギの凧

6歳の女の子が、シラサギの凧に塗り絵をしてくれました。完成後は、雨が上がった屋外で凧を引っ張って勢いよく走りだしました。風を受けた凧は未来に向かって揚がり、女の子の歓声が響き渡ります。団地の窓から、女の子を見守るように女性が微笑ましく覗いていました。

アートプロジェクトの取り組みは、大阪府高槻市の富田団地から大阪府堺市の白鷺団地へ地域と世代を越えてつながりを育んでいきたいと考えています。「はじめまして、シラサギでツナガル!を合言葉に、双方の住民が寄り添い、コミュニケーションを交わし、2つの団地の交流がはじまるきっかけとなることを願っています。この縁を大切に守り伝えていきたいですね」と、谷悟先生が、これからの展開に期待を込められました。

 

取材・文/浅井公二 写真/長谷川朋也

※なお、今年度のアートプロジェクトは3回を予定しておりましたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を受け、来場者及び関係者の健康や安全面等を考慮し、2020年2月29日開催の第3回目は中止となりました。3回目は、無期延期となりますが、事態が終息し、時が充ちた際に、タイミングを見はかり、最後まで実施したいと考えています。何卒ご理解いただきますよう、よろしくお願いいたします。(芸術計画学科教授 谷悟)

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