ココロ ツナガル しらさぎプロジェクト 富田団地から白鷺団地へ 1
住民の想いをシラサギに託すワークショップを開催

2020.03.12

2020年1月12日(日)、2019年度の「大阪芸術大学×URアートプロジェクト」がスタートしました。
大阪芸術大学の3年生が中心となり企画を立案し、富田団地(大阪府高槻市)と白鷺団地(大阪府堺市)の2つの団地をフィールドに展開します。3回シリーズで開催するプロジェクトの第1弾は、富田団地でシラサギをモチーフに様々なワークショップを開催。住民の皆さんの交流につながった、その様子をご紹介します。


学生たちを温かく迎える、いっぱいの笑顔

富田団地では、恒例行事の一つ、とんど焼きの準備が進められていました。大阪芸術大学芸術学部 芸術計画学科教授の谷悟先生や学生たちの姿を見ると、「先生、久しぶりやね?」とか「もう3年生になったん、早いなあ」と、自治会の皆さんが笑顔で声を掛けてくれました。この懐かしさと安心感は、富田団地の皆さんの温かさの賜物。6年目を迎えたアートプロジェクトの大きな原動力になっています。

 

とんど焼きの炎が燃え盛る頃、この日のために準備した「cafe SHIRASAGI」にも行列ができ、富田団地近くの清鶴酒造さんの酒粕に、ミルクと砂糖でつくる甘酒ラテが振舞われました。この甘酒ラテ、想像以上の美味しさに集まった皆さんも大絶賛。聞けば、大学で何度も試作を繰り返し、絶妙な甘さとコク、なめらかさを追求した自信作とのこと。子どもさんから大人まで味わってもらえる至福の甘酒ラテで、住民の皆さんのココロをがっちりとつかんでいました。

2つの団地をつなぐ、言葉のリレー

甘酒ラテの提供にあわせて始まったのは、白い羽根に皆さんからのメッセージを書いていただく企画。ちょうど令和2年が始まったばかりで1年の抱負を書かれたり、家族への感謝の言葉なども見られました。メッセージが書かれた羽根は、今回の「しらさぎプロジェクト」の第3弾で登場する「しらさぎの舞」の衣装に付けてもらいました。富田団地の皆さんのメッセージは、シラサギの羽根となって白鷺団地へ届けられ、2つの団地が言葉のリレーでつながります。

団地と団地を結ぶ、組紐づくり

集会所では、1年生が中心となり2つのワークショップが行われました。
そのひとつ、「TSUMUGU ~想いを紡ぐ赤紐づくり~」は、2018年度の「しらさぎプロジェクト」で披露された「しらさぎの舞」で使った赤い糸を再利用するワークショップです。赤い糸を皆さんの手で少しずつ組紐のように紡ぎます。

2018年10月開催「ココロツナガル しらさぎプロジェクト」ワークショップ

「はじめてしました。少しずつできていくので達成感があって楽しいね。ほら、次、あなたの番よ」と、5人の元気な女性グループ。皆さん、富田団地には30年ほど住まわれていて、普段はコミュニティセンターで行われるフォークダンスやコーラスなどの教室に通っているとのこと。10代の男の子の手際良い姿を見て、「あのぐらい早くできるといいわね」と感心されていました。
いろんな世代の人が次から次へと紡ぐ組紐。このあとは、白鷺団地の皆さんへバトンタッチされ、さらに長い赤紐が紡がれる予定です。

長年培った財産を2つの団地で共有する

「富田団地は、アートプロジェクトの始まりの団地です。そして、幾度となく協力していただき、住民の皆さんと交流を重ね、様々な思い出を紡ぐとともに、アート作品を創ってきました。それらすべてが財産で、携わった学生たちの体験として刻まれています。数年かけて築き上げた住民の皆さんと学生たちの信頼関係をベースに2019年度は、学生たちが架け橋となって2つの団地の皆さんのココロをつなげるきっかけをつくりたいと思います」と、大阪芸術大学芸術学部 芸術計画学科教授の谷悟先生は、2019年度のアートプロジェクトの目的を語ってくれました。
富田団地で育まれた様々な財産が、シラサギの羽ばたきによって白鷺団地で生まれ変わり、新たな財産となりたくさんの人のココロに響くことを期待しています。

5人姉妹を夢中にさせたシラサギ凧づくり

すぐ横のテーブルでは、2歳から11歳の5人の女の子が真剣なまなざしで塗り絵をしていました。これは、もう一つのワークショップ「TOBASU~想いを飛ばすシラサギ凧づくり~」です。ビニールとストローを使った凧づくりと、帆に描かれたシラサギに色を塗ったり、余白に絵を描いたり。一人ひとりの想いが込められたシラサギ凧がどんどん完成します。
「私も富田団地で育ちました。今日は、5人の娘を連れて実家に来ました。このイベントは、とんど焼きに参加して知りましたが、娘たちが学生さんたちに遊んでいただき、とても素敵な思い出になりました」と、お母さん。壁際では、おじいちゃんが笑顔で見守っていました。
「団地の中は、車も通らないし緑も多い。孫たちが遊ぶにはとてもいい環境やね」と、白井清さん。白井さんの3人の娘さんは富田団地で育ち、今はそれぞれに家族と一緒に高槻市内に暮らしているそうです。白井さんには9人のお孫さんがおられ、参観日、入学式、卒業式、誕生日など、1年中大忙しと目を細めていました。

風を受けて浮かび上がるシラサギ凧

外では、一人ひとりの想いが描かれたシラサギ凧を上げている子どもたちの喜びの声が響いていました。障害物が多く天高く上げることはできなくても、少し走るだけで、しっかり風を受けて浮かび上がります。風が吹けば、勢いよく飛び立つシラサギ凧。それはまさしく、大阪府北部の富田団地から南の白鷺団地へ飛んでいくシラサギの群れのようです。

シラサギとともに歳神様をお見送り!?

とんど焼きは、小正月前後に門松や正月飾りを焼き、歳神様をお送りする火祭りの一つ。炎や煙にあたると1年を健康に過ごせると言われ、灰には魔除けや厄除けの力があるとされています。また、炎で焼いたお餅を食べることで無病息災を願います。

富田団地でも、とんど焼きでできる炭を使い、お餅を焼いて、ぜんざいが振舞われました。用意された400食から学生たちもお裾分けをいただきました。古来の風習を身近に感じられる富田団地には、季節の行事を大切に守り伝える人々の営みが息づいています。

とんど焼きは、空に向かって伸びる炎に乗って歳神様が天に戻る行事。白鷺団地へ向かって飛び立つシラサギの姿に重なるような、ちょっと不思議な空想を楽しませてくれる一日となりました。

取材・文/浅井公二 写真/西田真大

※なお、今年度のアートプロジェクトは3回を予定しておりましたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を受け、来場者及び関係者の健康や安全面等を考慮し、2020年2月29日開催の第3回目は中止となりました。3回目は、無期延期となりますが、事態が終息し、時が充ちた際に、タイミングを見はかり、最後まで実施したいと考えています。何卒ご理解いただきますよう、よろしくお願いいたします。(芸術計画学科教授 谷悟)