現場レポート

風を感じる街、堺でサイクリング イベントフォトレポート

2023年5月28日、心地よい春風の吹く晴れの日。堺市とUR都市機構による初の「堺・泉北GO! GO! サイクリング・スタンプラリーイベント」が開催されました。5月1日から堺市のさまざまなショップと連動して行われてきたスタンプラリーの最終日。早朝からたくさんの自転車と人で賑わうUR泉北桃山台一丁からその様子を追いかけました。

団地や公園、各所で行われたイベントを写真でレポートします。


そもそもどうして“自転車”とUR?
〜UR泉北桃山台一丁にて〜
UR泉北桃山台一丁・ももポート前の広場
早々にサイクリングラックを活用しておられるサイクリスト。ラックはUR職員によるDIY
お話をうかがった堺市建設局サイクルシティ推進部 自転車企画推進課 阪本真二郎さん。企画の中心人物のひとり

――― “サイクルシティ推進部”って聞き慣れないのですが。どうしてURとこのような企画を立ち上げられたのですか?

阪本さん:そうですね。日本でも珍しい部署ですね。堺市はもともと自転車産業が栄えた街なのです。ルーツは実は古墳築造にあります。さかのぼると1600 年ほど前になるのですが、百舌鳥古墳群の築造で培われた鍬などの鉄の加工技術が鉄砲や刃物の製造に引き継がれ、自転車産業につながっていったんです。また、鉄砲製造における分業化が量産化技術へとつながり、堺市の自転車産業発展の礎となりました。
こうした歴史的資産を後世に伝えることも私たちの使命だと思っています。
まずは自転車の存在を意識してもらいたい。そのきっかけとして”ミューラルアート(壁画)”を街に溶け込ませてみたいというところからスタートしました。
緑豊かで、壁画が実現できる場所としてUR の団地は最高のキャンパスとなりました。さらに、堺市では、健康や観光などの視点と掛け合わせ、自転車利用を促進する取組を推進しています。
それともう一つ。これは個人的な思い。自転車って、小・中学生くらいになると初めての移動手段になって、高校生になると通学手段になりますよね。もちろん手段も大切ですが、それだけではなく、もう一回自転車に乗れた時のあの頃の感動を思い出してほしい。自転車ではじまったあの移動の感動を味わってほしい。風を感じてほしい。
それが一番の気持ちですね。


植物と自転車、ミューラルアートの制作現場
最後の仕上げ部分を公開制作中のアーティスト・平田沙織さん
たくさんの人々が代わる代わる制作風景を見守る
看板部分になる“MOMO PORT”。「脚立を置く場所が狭く、首を90度傾けての作業に。最も苦労した部分」
アートプロデューサーのSiiさん(左)と

―――ミューラルアートを手がけられることになって、UR団地はお二人にとってどのような場所、キャンパスでしたか。

Siiさん:私はプロデューサーとしてこのお話をいただいたときに、平田さんの作風がすぐに思い浮かびました。平田さんはその場の性質を大切にして、そこで捉えた空気を壁に落とし込んでくれる作家だからです。
ももポートは団地の中心地であり、真っ白だった壁に徐々に線が入っていくことで、最後のピースがはまった!という感覚がありました。

UR泉北桃山台一丁の住棟

平田さん:昨日は朝10時から19時まで描いていました。次第に住人さんからは「がんばって! 明るくなって嬉しいわぁ」という言葉をいただけるようになってとても嬉しかったです。
色のことは私がとてもこだわっているところで、ここでは団地の建築そのもののアクセントに使われているアースカラーを採用したんです。住人さんから「ここは桃の木が多いからピンク色がちょっとでも入っていたら嬉しい」という声を事前にいただいていたので、その言葉を軸に全体的に爽やかな風を感じる草木を描くことに決めました。
最後に自転車も。堺の街を駆け巡って最後にみんなで集まれる場所を”みんなで作った”という気持ちですね。つむじ風のようにくるくるっと渦になって集まってもらえたらと。

UR泉北桃山台一丁・ももポートのミューラルアート(壁画)が完成
ももポート内では「パンまつり」も開催
大阪のインディペンデントマガジン「IN/SECTS」の編集部によるパンのコーディネートと出店も
ポート内はまさにくるくるっとたくさんの方々が集まって来られ、すぐに完売するコーナーも

いろんな自転車を味わう!
〜大蓮公園にて〜

少し日焼けするほどに快晴になった午後。さらに自転車を楽しめる仕掛けが用意された大蓮公園に向かいました。ここは泉北ニュータウン地域の中でも特に大きく緑豊かな国営公園です。

「BMXパフォーマンス」を開催中。数々の技を披露されて観客からは拍手が巻き起こっていました
「オフロードバイク試乗無料体験」コーナーではデコボコのバイクパークを楽しむ子供たちの姿も
Design ohasu daysプロデュースの「サイクル休憩スポット+山猿WORKSサークショップ」。デザインブランド「DOD」のアウトドア商品を体験しながら休憩
オリジナルサコッシュ作りが進んでいたテントの中
URと堺市で制作したサイクリングルートマップ

自転車いろいろ学べる青空教室
〜UR泉北竹城台二丁団地内広場にて
UR泉北竹城台二丁では、イベントに併せ臨時サイクルシェアポートを設置
人気のキャラクター「堺市ハニワ部長」がやってきた!
「竹馬や竹とんぼ体験」コーナーでは子供以上に大人たちが楽しそうに遊ぶ姿が印象的
「電動キックボード「SUMRiDE(サムライド)」試乗体験」コーナー。最近日本の街でも多数見かけるようになりましたね。インストラクターによる説明で初めての方でもスイスイ
2023年7月から変わる電動キックボードの法律についてもクイズ形式で解説中
キッチンカー「ごきげんや(焼き芋)」「Lulumaru café(クレープ)」「café 風の音(チュロス)」が出店

サイクリングチームで風を感じて
〜UR泉北竹城台二丁 → UR泉北桃山台一丁へ〜

本日のレポート最後は、実際のサイクリングです。URのサイクリングチームと、桃山学院教育大学の女子野球チームの皆さんに協力いただいた混成チーム。UR竹城台二丁からももポートのあるUR桃山台一丁までの約2.5kmの走行です。一体どんな風景が見れるのでしょうか。取材班は車で追いかけての撮影となりました。

笑顔溢れるチームの面々。スタート前に記念写真を撮影
いよいよスタート!!
先導はURのサイクリングチーム。既に試し走行をしていて本日2度目!
かなりの上り坂を超えて!
風を切って進んでいくチームの皆さん
ゴール!アップダウンのある道を笑顔で到着。普段から足腰を鍛えている皆さん、さすがでした!
「登り切った時の達成感!」「走っている間も、団地についた時も緑があるので、公園にずっといるような感覚になりました」と話すURチーム
桃山学院教育大学野球チームの皆さん。中央が一回生のリナさん

―――お疲れ様でした!2.5kmの走行。アップダウンも何のそので、爽やかな表情で到着したみなさん。走ってみていかがでしたか?

今日はトレーニングだね!って話してました(笑)
道中に池があって、橋の上から下を見てみるとカメがいっぱい見えたんです。かわいかったぁ。公園の子供たちからは手を振ってもらえたりして嬉しかったです。
思った以上に自然がいっぱいに感じましたし、くだりになると風を感じて気持ちよかったです!

“風を感じて気持ちよかった”
この感想をサラッと言ってくれたとき、阪本さんの思いと壁のアート、そしてUR団地が一つの線で繋がったようでした。
ももポートを訪れられた方はぜひ、その風を少しでも感じてもらえたらいいなと思いながらこのレポートを終わりします。よく走った1日でした。

写真・文:平野愛

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