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  • セルフリノベをさらに進める方法 西野雄一郎(セルフリノベ研究家)

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セルフリノベ賃貸って何だ!? セルフリノベ研究家を名乗る西野さんには、広がりを見せるセルフリノベ賃貸の歴史や仕組みについて、一度書いていただきました。今回は、その発展編。セルフリノベ賃貸にまつわる関連サイトの紹介もありますよ。


– セルフリノベで自分だけの住まい


白い壁紙、ビニル素材の床、小さめのキッチン。
賃貸に対して抱くイメージだ。
セルフリノベ賃貸では、このようなイメージが大きく覆される物件が少なくない。

たとえば、福岡県にある築32年の賃貸マンション、大橋吉浦ビル。
建築設計に携わる男性の住まいは、2DKから1Kへと間取りが変更され、ヘリンボーン貼りの無垢フローリング、珪藻土に色を混ぜてつくる版築風の壁など、こだわりの素材にあふれた空間が広がっている。
改めて、これは持ち家ではない。自分だけの住まいは、いまや賃貸でも実現できる。

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– 伝説の賃貸から学ぶこと


いまひとつ紹介したい、伝説的なセルフリノベ賃貸がある。
東京にある築46年の代々木村田マンションだ。その歴史は長く、セルフリノベ賃貸がはじまってから実に20年以上が経過する。
元は同じ間取りだった住戸が、写真スタジオ、デザイン事務所、雑貨屋、住居など、入居者の使い方に合わせた空間へと多様につくり変えられている。


しかも単に空間や使い方が変わるだけではない。そこには様々な物語が詰まっている。
村田マンションに住んでいた衣装デザイナー・北村道子がこだわり抜いて変更した床材があった。退去後もそのまま引き継がれ、その床材が魅力となって人気の部屋になり、10年以上も代々継承されたという逸話がある。

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– 住み手も貸し手も喜ぶセルフリノベへ


これらの話には、セルフリノベ賃貸の魅力がよく現れている。
つまり、住み手は自由なカスタマイズによって楽しく暮らすことができ、それによって住戸の価値が高まり、貸し手の事業性を向上させるという好循環だ。
このような魅力ある賃貸が一般に普及するためには、住み手と貸し手の両者が抱える疑問や不満を解消していくことが必要となる。
住み手の立場では「自分でつくる方法がわからない」「知識・技術がない」。また、貸し手の立場では「トラブルを避ける契約方法が分からない」「成功している事例を知りたい」「事業性を知りたい」などの課題が聞こえてくる。

ここでは説明を控えるが、課題の解決方法がまとめられたサイトや報告書を文末にリストアップした。興味のある方は前回の記事とともに目を通してもらいたい。要するに、工夫次第で住み手は素人でもカッコいい空間をつくれるし、貸し手はセルフリノベ賃貸をはじめられる。


効率を重視して標準的な住まいを大量に供給することは、家が不足する時代には必要なことであった。しかし、過剰に供給され、空き家がますます増加する時代においては、「所有」から「利用」への価値の転換が進む。そのような状況のなかで、持続的に変化し続けるオープンエンドな暮らしの方法であるセルフリノベは、標準から個別へ、「つくられたもの」から「つくるもの」へ、住み手と貸し手の分離から恊働へと賃貸を転換していく。そこにこそ、住まいを貸すこと、借りて暮らすことの価値が広がっている。

▼DIYの方法やアイデアを知りたい方はこちら
instructables http://www.instructables.com/ja/
DIYツールドットコム http://www.diy-tool.com
R不動産 TOOLBOX http://www.r-toolbox.jp

▼セルフリノベ賃貸の契約・運営、先進事例などについてはこちら
国土交通省「個人住宅の賃貸流通を促進するためのガイドライン」
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr3_000022.html
国土交通省「借主の意向を反映して改修を行うDIY型賃貸借」
http://www.mlit.go.jp/report/press/house03_hh_000098.html
リクルート住まい研究所「愛ある賃貸住宅を求めて」
http://www.jresearch.net/house/jresearch/chintai/
HOME’S総研「STOCK & RENOVATION 2014」
http://www.homes.co.jp/souken/report/201406/
西野論文「賃貸共同住宅におけるセルフリノベーションの契約と事業の特性」(興味のある方はyuichiro.nishino1@gmail.comまでご連絡ください。)


西野雄一郎
賃貸住宅のセルフリノベを全国的に調査し、これを普及することに向けた研究を行う。UR都市機構、大阪市住まい公社、大阪市大正区、民間オーナーなどとのセルフリノベイベントの企画や実践を行うとともに、セルフリノベ賃貸の借家契約へのアドバイス、リノベの設計も行う。日本学術振興会・特別研究員。大阪市立大学大学院工学研究科・博士課程。

カリグラシコラム

そのことを仕事にしている人もいれば、普段の暮らしの中でモヤモヤとした思いが浮かんでいる人もいる。借り暮らしにまつわる意見や考えを、さまざまな人たちが自由なスタイルで綴ります。

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