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誰だ、団地のことを軽々しく
コンクリートジャングルなんて呼んだのは。
…篠沢健太・吉永健一・著『団地図解』

ついに出ました、2人の設計者による設計者目線の団地本。

団地にまつわる書籍といえば、どこか懐古趣味な写真集か、地域コミュニティを論じる事例としての紹介か、あるいは、マニア目線のものが多くを占める中、この『団地図解』は、設計力という団地の本丸に切りこんでいる。

といっても論文集ではなく、あくまでも図解本。すべてのページに図や写真があふれ、それを順に見ていくだけでもある程度の理解は得られる構成になっている。

そんな数ある図表の話でいえば、歴史的な年表図の収録が実はなかなかの“事件”かも。
1969年、日本住宅公団大阪支社のメンバーがつくった、当時の団地設計に関する思想、手法、アイデアなどがまとめられた、3.6mにもおよぶ当時のプレゼン資料(URに伝わる通称は「巻き物」!)を、とじ込み付録として完全再録。いまどきのパワポ資料では見られない、手書き&切り貼りの熱量をも伝えるこの「巻き物」を見るだけでも、得られるものは多いに違いない。

他にも、団地を語る際によく耳にする「標準設計」という言葉ひとつとっても、決して全国一律に標準設計が使われたのではなく、地域の特性にあわせてカスタマイズされて、実は、標準設計といっても軽く100タイプを越えるという話があったり、「公団には規程集があったが、大阪支社はこれをやぶることに生き甲斐を感じていた。オリンピックが記録を破るのと同じように」なんていう、熱い証言も引き出している。

残念ながら自分が設計者ではないので、この本のすべてを味わえているわけではないが、 ランドスケープ、建物、間取り、造園、インフラ、コミュニティ…といったことが、個別バラバラに語られるのではなく、設計のもとにひとつながりで見通せること。そして、団地がその格好の事例であるということはとても伝わってきた。
まさしく「地形・造成・ランドスケープ・住棟・間取りから読み解く」1冊だ。

篠沢健太・吉永健一・著
『団地図解 地形・造成・ランドスケープ・住棟・間取りから読み解く設計思考』 (学芸出版社・3,600円+税)

文:竹内厚

→著者のひとりである吉永健一さんは、団地愛好家集団「チーム4.5畳」にも所属。OURS.では4.5畳メンバーによるコラムも掲載しています。
https://uchi-machi-danchi.ur-net.go.jp/cms/tag/4ten5jo/

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