with
原田祐馬(UMA/design farm デザイナー)
around
南千里駅~佐竹台~五月が丘 〈大阪・吹田市

#02
コの字型のセンター/けもの道/斜面というあそび場

原田佐竹台の団地にあるセンターをちょっと見ていいですか。池のすぐそばなんで、よくたまり場になってたんです。

―ニュータウンには、エリアごとに「近隣センター」というのがあったそうですね。

原田そうなんです。だいたいスーパーや電気屋、本屋、おもちゃ屋なんかが入っていて、昔は、銭湯もそこにありました。

―センターにはコの字型に商店が入居していて、真ん中には広場のようなスペースが。まさに、たまり場向きの場所です。

原田ここは、僕らが遊んでた頃のままですね。お店はかなりなくなってしまっていますけど。

―さすがに少しさびれてますね。

原田だけどこういう場所は、すごく可能性があると思ってるんですよ。近隣センターってあちこちにあるけど、空き店舗が増えていて、それらをまとめて、ぐるっとみんなで借りることができたら、ちょっとした町をすぐに作れますから。

―言われてみれば、超ミニサイズの町です。ややクローズドになった構造も、わが町感覚を高めてくれそう。

原田でしょ。事務所にしたいくらいですよ。子どもの頃はここでカツアゲされましたけど(笑)。校区外だから違う縄張りだったんです。そもそも、小学校のルールでは来ちゃいけない。

ーまたルール破りの話が出ましたね(笑)。池の方へ戻りましょう。

原田これは誰がやってるんでしょうね。公園と道路の間の生け垣に「けもの道」が空けてある。

―言われてみれば、存在理由のわからない「けもの道」もよく見かけます。

原田ショートカットして早く向こう側へ行きたくなるから、ひとの踏み跡で自然にできてるものもあるんじゃないかな。

ーすき間を抜けた先が斜面だったり、ぼうぼうの草むらだったりすることもよくあります。やっぱり通りぬけ禁止なのかな。

原田この町は斜面も多くて、そこでもかなり遊んでましたよ。

―小さな台地が無数にある地形だから、斜面はよく見かけますね。ただ、最近の建物だと、敷地いっぱいに擁壁が立ってるところも多いみたいです。

原田斜面はのこしてほしいですね。ニュータウンって何にもないとか、冷たい町というイメージがありますけど、子どもの頃の僕らからすれば、そんなことは全然なくて、遊び場の宝庫でした。斜面なんて特にそうで、自分たちで勝手に考えて遊ぶにはすごくいい場所だった。

―歩いてるとまた公園が出てきましたよ。「ねむの木公園」とあります。この公園も斜面が豊富。

原田これは砂に埋もれてる遊具? …斜面の土砂が落ちてきてるのか。すべり台のデザインも改めて見ると、すごくいい。

―魚がモチーフでしょうか、いろいろ工夫して遊べそう。

原田魚の頭の上まで上がれるけど、その先には行けない。上がって、そこで終わり…。この町は公園が多いのもいいところで、いつも公園から公園へと移動しながら遊んでました。

―しかも、それぞれに成り立ちやタイプの違う公園が徒歩圏内にたくさんあるので、遊ぶ環境としては最高ですね。


団地のサイン/花壇の手書き札/あいだのレッスン

原田古い団地やビルの文字ってかっこいいですよね。すごく好き。

―昔は、サインのために図面を描いて発注していたそうですね。

原田工業的な手法や少ない手数で生まれたデザインですね。僕らがサインのデザインをするときは、古い団地やビルが参照先のひとつですから。まさに自分が昔、遊びながら眼にしていたもの。…あっ、こういう手書きの札もすごく気になるんですよね。「花を取らないで下さい」。写真は撮ってもいいかな。

―花を取っていくひとがいるってことでしょうね。

原田でも、誰がどういう理由で花を取ってほしくないんでしょうね。…そうか、世話をされている方が自分の花壇のように愛着を持っているんですね。

―公園の延長にある植え込みなので、公私の境がわかりにくい場所ではあります。

原田僕は、京都造形芸術大学の空間演出デザイン学科で講師を務めていて、その3回生を対象とした授業で「あいだのレッスン」というのをやっているんですけど。

―「あいだのレッスン」という名前からしてイイですね。

原田何をやってる学科かちょっとわかりにくいんですけど、学科名の「空間演出デザイン」には「間」という文字が入ってるでしょ。そう考えると、町と町、ひととひと、ひとと町をつなぐような学びがあり、人材が育つような学科になればいいなと思って、始めたのが「あいだのレッスン」で。

―なるほど。どういう授業なんでしょう?

原田学生がそれぞれ町をフィールドワークして、そこで自分なりに見つけた課題を選んで、プロジェクト化するってことをやっています。

―フィールドワークして終わりじゃなく、さらに実際の行動まで。

原田公私の境が曖昧な花壇みたいなことって、町のフィールドワークとしてよくある事例だと思うんですけど、僕が思うのは、「花を抜かないで」ということも大事なんですけど、できれば「花をどうぞご自由にお持ち帰りください」の方がいいんですね。

―そうか、そういう立て札だってありえるわけですね。

原田町の中って、そもそも誰のものなのかわからないものですけど、そこに暮らしているひとが日々、考えたり、更新できるほうがいいなと思います。無秩序になるのはよくないけど、あれはやっちゃいけない、これはやっちゃいけない、だけじゃないほうがいいなと。

―公共のものってどこまで触っていいのか、わからないという面もあります。

原田「あいだのレッスン」で具体的にやってるのは、自分たちのまち化をするってことで、たとえば町の掃除をするようなことって、公共の問題以前、誰がやってもいいことですよね。今年の学生の例でいえば、使われなくなった公衆電話を勝手に掃除して、部屋のように飾りつけたりとか、警察官のひとと仲良くなって、見回りで無人になった交番に、巨大な警察官のポスターを留守番代わりに貼ってみたりとか。

―いいなぁ。課題を見つけて、関われることを考えて、実際にやってみる。家の中では当たり前にやってることも、家の外へ一歩出ると途端に難しくなるから、「あいだのレッスン」の試みが新鮮です。

原田みんなで町を掃除したりするとかって、ごく普通のことですよね。けど、集合住宅だったら、家の前の落ち葉を掃除のおばちゃんに「掃除しといてよ!」って言うこともあるかもしれない。でも、自分で掃除したって全然いいんですよ。

原田祐馬さんとの「さんかつ#03」


散歩と観察

デザイナー、アーティスト、建築家といった、独自のまなざしを持つ方々といっしょに町を歩きます。お題は、パブリックなモノやコト。公園、ベンチ、駅、図書館、路地、空き地、看板などなど、その観察眼はどこへ向けられるでしょうか。