2016.03.07
with
蓮沼執太(音楽家)、ユザーン(タブラ奏者)
around
四条~鴨川~岡崎〈京都市〉
蓮沼執太さんとユザーンさんとぶらぶら、今回は、四条河原町から鴨川のリバーサイドを三条まで。打てば響く、まるで漫才コンビ。とは言いませんが、ふたりの四方山話は尽きません。
#02
ぶら下がる標識/NYのセントラルパークで/シカゴの空港で/鴨川に落ちる!?
ーちょっとひとが多いですが四条通を東へ向かいましょう。
蓮沼:「立誠小学校」の方?
ーそうですね。2年前に蓮沼執太フィルのコンサートを開いたのが「立誠小学校」でした。
蓮沼:あ、これは珍しい、ですよね。あの四条通りって書いてある、標識ぶら下げてる感じ。
ー取り外せそうですね。
ユザーン:道の名前が変わったらすぐ取り替えられるように、かな。
ーなかなか変わらなさそうな道の名前ですけど…。
蓮沼:電柱がないのもいいですね。ここらへんはそういうエリアなのかな。でも、電柱や電線も嫌いじゃないです、日本らしい光景ですよね。
ーそういえば、蓮沼さんがニューヨークで散歩してたら、ラッパーのJAY-Zに遭遇したって言ってましたね。
蓮沼:そうそう。JAY-Z、ちゃんとニューヨークにいるんだ(笑)って。しかもセントラルパークに。そっくりさんじゃなかった、JAY-Zさん、飲み物持ってベンチに座ってた。
ユザーン:俺、サンフランシスコの空港でカルロス・サンタナに会ったことあるよ。
蓮沼:サンタナ!
ー偉大なるギタリストですね。
ユザーン:一緒に写真撮ってください、って近付いたら周りのSPみたいなひとがやめろ! やめろ!って寄ってきて。でもサンタナが「いいじゃないか。コイツの髪型は変だぞ」って。あなたの服装もだいぶ変わってますよ、って思ったけどね。
ーサンタナの話を聞いてたら、鴨川が見えてきました。
蓮沼:鴨川ってよく学生たちが集まってるじゃないですか、楽しそうだなっていつも思う。学生の頃って時間を長く感じるし、そういう時期に、しかも都市の中でこんなのんびりできるところがあるのがうらやましい。
ー京都御所なんかだと昼寝してるひともいますね。
ユザーン:ほら(ケータイに撮ったサンタナの写真を見せる)。
蓮沼:ほんとだ(笑)。
ユザーン:だいぶ服装が変でしょ(笑)。
ーいかにもサンタナ(笑)。ユザーンさんが地味に見えます。
蓮沼:あそこに看板が見えてる「BAL」ってデパート、一昨日行きましたね。化粧水を買いに。
ー蓮沼さんともなると化粧水を?
蓮沼:いやいや(笑)。
ユザーン:化粧水なんて生まれて一度も買ったことないな。
蓮沼:お肌が乾燥するでしょ?
ユザーン:乾燥するけど、化粧水を塗ってまで保湿する意味が分からない。
蓮沼:乾燥肌なのね。お顔痛くならない?
ユザーン:石鹸を使って洗うとね。だから、顔を洗わないという方法をとってる。洗うと痛くなるんだから。
ー朝起きて顔を洗わないんですか?
ユザーン:朝起きて顔を洗ったことが、えーっと、30年ぐらいない。
一同:えー(笑)。
蓮沼:もう鴨川で爆笑。
ー朝ごはんは?
ユザーン:朝ごはんも食べない。って、朝、なんにもしてないひとみたいだね。起きてはいるよ。
蓮沼:髪を洗わないひともいるよね。
ユザーン:髪はきちんと洗うから。その泡が顔に流れてくるし、きっと顔もきれいになってるよ。
蓮沼:前にユザーンにシャンプーを貸したら「このシャンプー、すごいいい匂いするね!」って言い出して、ずーっと髪を洗ってるの。あれはびっくりした。
ユザーン:ひとより長いのは髪の毛を洗う時間だけだな。あとはぜんぶ短い。あ、ここで鴨川に落ちた蓮沼執太を助けている、っていう演出はどうかな?
ーこんな寸劇も鴨川ならではかも!?
スタバとルノアール/坂の名前/iPodさえあれば/岡崎の磁場
蓮沼:京都ってスターバックスが多い印象ありますね。観光客が多いからかな。
ユザーン:執太はふだん喫茶店って行く?
蓮沼:行くよ。
ユザーン:俺は行かないの。カフェインが苦手だから。行っても飲むものがないんだよ。ハーブティーがあるなら飲みたいけど。でもさ、コーヒーとかならともかく、あーいま俺、すごくハーブティーが飲みたい!って気持ちにあんまりならないんだよね。「ルノアール」(*東京でおなじみの喫茶室)って京都にある?
ーないですね。
ユザーン:ルノアールには昆布茶があっていいんだよね。でも量が少ないからついガバガバ飲んじゃって。打ち合わせで3杯飲んだりすると1800円とかになるんだよ。昆布茶で1800円だよ(笑)。
ー(笑)。鴨川沿いに三条通まで上がってきました。ここから今度は東へ向かいましょう。
蓮沼:あらためて京都って歩きやすい街ですよね。
ー東京はいかがです?
蓮沼:街自体が大きいし、坂も多くて。実は変わった名前の坂が多いんだよね。名称として残ってるのが面白い。名前を知るとその場所の意味や歴史がわかりますよね。
ー名前の響きで土地のイメージが決まるところはありますよね。ユザーンさんはよく歩いてますよね。
ユザーン:歩く移動は多いかな。例えばバスで5分、歩いて20分なら確実に歩くね。歩くのは嫌いじゃない、iPodさえあれば。
ーアップルのCMみたいなセリフですね。
ユザーン:いやほんとに、俺はiPodが大好きなの!
ーインドへ行くときでも、CDをたくさん持って行かなくてもよくなったから、ですよね。
ユザーン:人生の夢が叶った、と思ったね。もし散歩にひとつだけ物を持って行けるとしたら、俺は携帯電話よりも断然、iPodがいい。
ーたしかに、iPodがあれば歩くことの魅力は増しますね。
蓮沼:四条も三条も街なかはそんなに雰囲気は変わらないですよね。碁盤の目のところはあんまり変わらない気がするな。
ユザーン:あ、「龍門」。(レイ・)ハラカミさんの好きな。
ー京都の名物中華料理店ですね、ここでハラカミさんを見かけたことがあります。ユザーンさんはハラカミさんとよく一緒に演奏されていましたが、昨夜のように蓮沼さんとふたりで演奏する機会もあります?
ユザーン:ふたりっきりで演奏するのは、なぜかラジオの収録が多いな。去年のクリスマスイブには、J-WAVEでクリスマスソングを生演奏したんだけど、一体俺たちはなにをやってるんだろうって思ったよ(笑)。…このあたりはもう岡崎?
ーそうですね。街なかとはムードがちょっと変わってきます。
蓮沼:磁場というか、下から上がってくるような雰囲気が他と違う気がしますよね。岡崎って、東京でいえば明治神宮みたいな感じなのかな。
ユザーン:あー、執太の大好きなパワースポットってやつだ。
蓮沼:世間のイメージ的には、パワースポット好きなのはあなたの方でしょ…。
ユザーン:執太がこれまで巡ってきたパワースポットの中で、どこが一番パワー強かった? そもそも執太はなぜパワースポット巡りをするようになったの?
蓮沼:巡ってないし(笑)。…やっぱり日光かな。
→ 蓮沼執太さん、ユザーンさんとの「さんかつ#03」
次回は、これまでさまざまなパブリックスペースで演奏されてきた蓮沼さんに新作『メロディーズ』のことをお聞きします。中華を食べながら。