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堀田裕介(料理開拓人)
の住まいかた

#2 間取りに縛られた暮らしではなく

#1 はこちら

料理開拓人・堀田裕介さんの自宅にお邪魔。今回は、自身の趣味思考が反映されたこだわりの間取りについて、話を聞いてみました。

この家はとても日当りが良いですね。

堀田:そうなんです。特に2階の日当りが最高で、ハンモックで寝るのがとても気持ちいいんです。ベトナムに行ったときに買ってきたハンモックなんですけど、ベトナムには道路沿いの街路樹を使った“ハンモックカフェ”というのがたくさんあって、みんなバイクで乗りつけて、ハンモックに寝ながら木陰でお茶を飲んでいる。その気持ちよさが忘れられなくて、この家にもハンモックをつけてみたら本当にちょうどよかった。朝まで熟睡ってこともよくあります。

2階はハンモックにゲーム機もあって、生活感があります。

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ハンモックはベトナムにて800円程度で購入。ちなみに、ハンモックは編み目と、頭と足元に鉄の芯が入っているかどうかが重要なのだとか。

堀田:ゲーム機は友達が置いていきました。もともと畳の部屋だったのをひと部屋の板の間に変えました。ちなみに、カーテンは前に住んでいた元同僚の置き土産で、洗濯物なんかを干せるワイヤーは、そのもうひとつ前の住人から使われてるものです。

特におしゃれなわけでもないカーテンやワイヤーが置き土産って、むしろリアルな話(笑)。ご飯はここで?

堀田:家で食べることはほとんどないですけど、食べるとしたら2階ですね。1階には今、コーヒーテーブルを作ってもらっているので、その横に寒さ対策としても火鉢を置いて、居心地のよいスペースにできたら。

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これだけ家に手をかけるのに、家を買うんじゃなくて賃貸である理由って何ですか。

堀田:自分がひとつの家に住み続けるとはとうてい思えないから、買うという選択肢を考えたことがないのかもしれません。それに、賃貸でこれだけ条件のいい家に巡りあえるなら、買う気にもならない。僕の場合、grafに務めていたことやfoodscape!のプロジェクトなどの印象からか、なんだかおしゃれな方向で捉えられることが多いんですけど、本当はこの家を見てもらえればわかるように、アウトドアとか釣りとか、そういうことが大好きな人間なんですよ。だから、暮らしの中で自分がやりたいと思うこと、それにあわせて部屋を改装して住めればいい。とにかく間取りに縛られた暮らしではなく。

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とはいえ、引っ越しを繰り返すのはやっぱり面倒では?

堀田:はい、面倒です(笑)。だけど、引っ越しは整理できるチャンスでもあるんです。今回の引っ越しでも、服はもちろん、いらないお皿なんかも大量に処分しました。3分の1くらいになったかな。身を軽くするいいタイミングでもありますよ。あと、これだけ引っ越しを繰り返してきて思うのは、いい家に巡りあえるかどうかは、結局、運だなってこと。理想の家ってそもそも数に限りがあると思うんです。無数にあるわけじゃない。そんな中でその家に出会えるかは、運と言うか、タイミングと言うか…。

ひとつところに拠点を定めない堀田さんですが、昨年、「foodscape! Bakery」という拠点をオープンさせました。

堀田:店舗を持ちたいという強い欲求はなかったのですが、店をやってみないかという誘いをもらったとき、今の自分がビジネスの領域でどのくらいやれるのか、試してみたいと単純に思ったんですね。あとは、全国で知り合った友達が、大阪へ来てくれたときに立ち寄る場所があればいいなとも。

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シンプルな理由ですね。

堀田:あくまで僕は、いろんな場所を訪ねて、さまざまな生産者さんと会って、その土地の食材を知って、使ってということが活動の中心。極端なことを言えば、店に対する執着心はいっさいありません。明日やめなければいけないと言われたら、はい、わかりましたと言って次に進むこともできると思ってます。そのくらいに執着心がないんです。お金儲けや店舗拡大ということよりも、その店や場所で自分にどんなことができるのかを考えるのが楽しいし、やりたいことなので。

なるほど。

堀田:4月には大阪府立中之島図書館の中に、北欧のオープンサンド「スモーブロー」をテーマにしたカフェをオープンさせます。図書館の玄関のところに小さなスペースを設けて、コーヒーを買えるようにしようかとか、いろいろアイデアを練っているところです。
http://smorrebrod-kitchen.com/

立派な建築の図書館ですけど、カフェのようなイメージはまったくなかった場所なので、街の景色が変わりそうですね。

堀田:(おもむろにファイルを取り出して)あとは、これを本にできないかなと思ったりしています。

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「foodscape!」の設計図(ラフ)。2014年に行われた結婚式のケータリングでのもの。当日は、中央に花が飾られ豪華な仕上がりになったよう。

これまでの「foodscape!」で作ってきた料理とテーブルの設計図ですね。これはすごい。毎回、ここまでの設計をしてから料理をされてるんですか。

堀田:揃う食材の分量とそこから作れそうな料理の分量が見えてから、ようやく描いていく感じですね。アイデアは、作庭家の重森三玲、建築家のフンデルトヴァッサーに触発されてる部分が大きくて。

「foodscape!」の裏側を聞くと、また次の「foodscape!」も楽しみになってきました。

堀田:5月には愛知県岡崎市で開かれる「森、道、市場」というフェスに参加して、「EATBEAT!」を開催予定です。今は現地でどんな食材があるかをリサーチしてる段階ですが、今回はそのリサーチから映像も撮ってもらってる、撮影も兼ねて生産者さんとお会いして、どんな食材を使うか決めていこうと思っています。楽しみにしてください。

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文:松村貴樹 写真:平野愛 編集:竹内厚
(2016年3月29日掲載)


THE BORROWERS

借り暮らし、貸し借り、賃貸にどんな可能性がひそんでいるのか。多彩に活躍する方々へのインタビュー取材を通してその魅力に迫ります。いいところ、大変なところ、おもしろさ、面倒くささ…きっといろんなことが浮かび上がるはず。

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