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都市型農業の使い道
鈴木健太郎(オーガニックワン)

#3 農地を都会のコミュニケーションツールに

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ここまでお話を聞いてきて、都会で農業をするにもいろいろな方法があることがわかってきました。実際に農地を借りたいと思ったら、まずはどうすればよいのでしょうか。

鈴木:僕のように役所を通して正式に借りるのであれば、審査があります。農地として貸し出して、放っておかれたら困りますし、農業をちゃんとできる人なのか問われます。ただ、経験がなくても、役所で行っている農業研修を年に何度か受けるなりして、それをクリアすれば誰でも農地を借りることはできます。

体験農園で農家さんに教えてもらうことからはじめて、自分で農地を借りるというステップアップを目指すとかですね。

鈴木:そういう手順を踏まないと、一気に都市農園まではいけないと思うんです。だから、まずどう体験農園をはじめてもらうか。次に、素人でも農業を続けていくためのいろんな方法を生み出していかないと、借りてもらってもなかなか続かないですから。

貸し農園という場所もありますよね。

鈴木:貸し農園は、15平米くらいの小さな規模が多くて、正式に農地を借りるよりもちょっと貸料が高いくらい。貸し農園の情報も、市の窓口で聞けば教えてくれます。最初から広い農地を借りて、すべて自分でやるよりも、まずは体験農園や貸し農園である程度の力をつけて、少しずつステージをあげていくのがいいと思います。

これからの都市型農業には何が求められるのでしょうか。

鈴木:畑って集まると誰もがしゃべらずにはいられないんですよ。つまり、農地はコミュニケーションツールとしても有効です。都会の農地をうまく活用することで、住民同士の風通しがよくなったり、治安がよくなったり、土地の価値も上げることができるはずです。

街に集会所や公民館をつくるように、農地をつくっていけたら面白いですね。

鈴木:そういう意味では、ランドスケープデザイナーが畑や農業の世界に入ってきて、一緒にやるべきなんですよね。畑のそばに話すためのテーブルなんかもつくって、畑とコミュニケーションの場を組み合わせられたら、もっと楽しめるのかなと。

オリジナルの価値をつけた貸し農園とか、なかなか農業の専門家だけでは難しそうですもんね。

鈴木:農家の人にコミュニケーションのデザインまでできませんから。集合住宅なんかでも、共有の農地があれば、お年寄りが外に出てくるきっかけになるかもしれない。

ファーマーズマーケットなどとはまた違ったカタチの農家と消費者の橋渡し、それがオーガニックワンでやろうとしていることなんですね。

鈴木:ただ、それではお金にならないから、行政からの依頼を受けて、プロの農家さんを相手に農業コンサルの仕事をやっています。地域の伝統野菜を残すために、栽培のポイントを押さえた動画をつくって、地域の農業を活性化させていくといったこともやっています。消費者を農業に巻きこんでいくのは、まだまだこれからの事業ですね。

ハーブやカラフルな野菜で彩りを演出するのも都市型農業の楽しみ方のひとつ。

今後の展開が楽しみです。

鈴木:大阪市内には約900の農家があって、市内の農地を足すと大阪城公園と同じくらいの面積になると言われています。ただ、小さな農地が散らばっていて、有効活用されていない。土地を持て余している状態です。そんな土地をどう価値あるものにしていくか。たとえば、農地をデザインして体験農園に生かしていくというようなことは、今後ますます求められるようになると思います。

文:鈴木遥 写真:中村寛史 編集:竹内厚
(2017年7月26日掲載)


THE BORROWERS

借り暮らし、貸し借り、賃貸にどんな可能性がひそんでいるのか。多彩に活躍する方々へのインタビュー取材を通してその魅力に迫ります。いいところ、大変なところ、おもしろさ、面倒くささ…きっといろんなことが浮かび上がるはず。

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