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小泉寛明(神戸R不動産/有限会社ルーシー)

#3 引っ越し魔、今は北野住まい

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「神戸R不動産」をはじめて5年、何か変化はありましたか?

小泉:移住に関して言えば、お客さんの層はかなり変わりました。最初は、イラストレーターやIT系など、どこでも働ける人たちが動いてきました。この2~3年は、編集者、プランナーといったフリーランスの人が、やればできるんじゃないのって感じで移ってきましたね。最近の流れとしては、10~20人くらいの規模の会社がサテライトオフィスとして人を送りこんでくるような動きが増えています。

移住といえば、小泉さんもかなりの「引っ越し魔」だそうですね。

小泉:そうですね。アメリカも含めて、30回くらいは引っ越してると思います。

30回! 率直に聞きますけど、どうしてそんなに引っ越しを繰り返してきたんでしょう。

小泉:いろんな土地に住んでみて、自分の知らない住まい方を知りたい、感じたいというのがありますね。しょっちゅう海外に行ってたのもそうですけど、僕は、とにかくその場に行って直接感じないと気がすまない。というか、そうしないと何も見えてこないと思っているんです。だから住まいに関しても、実際にいろんなかたちの「試し住み」を繰り返してきた感じです。

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「試し住み」ですか。

小泉:必ずしも毎回、敷金礼金を払っていたわけでもなくて、たとえば彼女の家に転がりこんだりとか、そういうのも込みで(笑)。あと、シェアハウスに住んでいた時期もありましたね。14~5年前、まだシェアハウスって概念がない頃に、東京の新橋にシェアをしてる家があったんです。もちろん、パブリックスペースなんかは一切なくて、住人みんなも手探りでした。

根っからのノマド体質なんですね。引っ越しは今も?

小泉:以前に比べたらずいぶん落ち着きましたけど、それでも神戸に移ってから10年間で4回引っ越しました。まあ、全部このあたり、北野界隈ですけど。

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小泉:「神戸R不動産」をはじめた当初、このあたりの古い外国人向けのマンションが結構空いてたんです。家賃は15万~20万くらいで、140~150平米、3ベッドルームみたいな。

ちょっと躊躇する広さですね(笑)。

小泉:そう、さらに坂の上で、ボロくて、正直、家賃もそんなに安くない。

どうして空いてたんですか。外国人が減ったから?

小泉:六甲アイランドとかにハイグレードなマンションがたくさんできて、コミュニティごとそっちへ移ってしまったんです。それで空き部屋がたくさんできて、家賃もどんどん下がった。でも、そういう物件って一般的な関西人の感覚で考えると、まず借りないじゃないですか。もっと狭くていいから安い方がいいとか、同じ家賃払うなら新しい方がいいといった理由で。でも、東京から移住を考えてる人からすれば、家族でゆったり使って、自宅に仕事場も確保できて、家賃も東京に比べたらぜんぜん安い。ちょっと手間がかかるかもしれないけど、全然アリだよねって、すぐに埋まっていきましたね。

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某外国人向けマンションの屋上から。見晴らしがよく、海と山がとても近い。

移住してくる人からしたら、むしろ神戸らしくて魅力的に見えたりもするのかも。

小泉:北野というエリアは、観光地として栄えた後、外国人が持ちこんだ異国感みたいなのものがだいぶ薄れてしまって、一時期は正直、あまりいい印象のエリアではなかったと思うんです。ただ、外から来た人にとっては新鮮に見えたり、また新しい魅力が引き出されたりする。まちを再評価する視点というのは、やっぱり外から来る人が持っていて、だからこそ、常に外からの血を入れないといけないのかなと思います。

ちなみに外国人向けのマンションって、一般のマンションと比べて何か違いがありますか。

小泉:オーナーが外国人のことが多いので、借り手が内装に手を加えたりすることに寛容な物件が多いです。壁を塗ったり、ちょっとした壁を立てたり。そういうDIY的なことは外国人、特に欧米の人は普通にやりますから。現状復帰とかの条件も、そんなにうるさくないですね。

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なるほど。そういう文化的な面も含めて、「外国人向け」なんですね。

小泉:物件だけじゃなくて、この辺りにはそういう外国人を中心としたDIYカルチャーが昔からあって、今もまだその名残があります。
たとえば、近くにユダヤ人の大工さんが住んでますけど、その人は日曜大工の延長で、結構なんでも直してくれます。欧米ではそういう人のことを「ハンディマン」と言って、だいたいどこの町にも一人二人いるもの。先日も、とある人から家のバスタブを直したいという相談があって、見に行くと東洋陶器と書かれたすごく古いやつで、見積もりに出すと200万円とか言われたんです。そこでそのユダヤ人の大工さん呼んだら、ものの5分くらいでちゃちゃっと直してくれて、「ビール一杯でいいよー」って(笑)。

外国人のコミュニティが移ってしまったとはいえ、そういう面も残っているんですね。

小泉:そうですね。最近ではまた外国人もずいぶん増えてきましたし、新しく移住してくる日本人もいます。だから、コミュニティの形は変わってきたけど、よりダイバーシティが深まってる感じはします。僕たち自身、そういう人たちを接着するようなイベントをやっていますし、もちろん僕たち以外もやっているし、近所を歩いていると、みんな友だちじゃないのって感覚は深まってるような気がしますね。

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文:岩淵拓郎(メディアピクニック) 写真:平野愛
(2016年6月30日掲載)


THE BORROWERS

借り暮らし、貸し借り、賃貸にどんな可能性がひそんでいるのか。多彩に活躍する方々へのインタビュー取材を通してその魅力に迫ります。いいところ、大変なところ、おもしろさ、面倒くささ…きっといろんなことが浮かび上がるはず。

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