03.『サバービコン 仮面を被った街』
こういうことって僕だけですかね?
ニュータウンを歩いている。前からジョギング姿のご婦人が大きな白い犬を連れて歩いてくる。木が等間隔に植えられた土手で、家々は白に統一されていて、夕方近いオレンジの淡い光が辺りを照らしている。こういう時、なんか時間が止まったみたいで怖くならないスか?(笑)
僕の場合、さらに1羽の鳥が目の前を横切って、CMみたいな完璧な構図を完成させたもので、走って逃げた。頭の中で「あのご婦人とすれ違うと死ぬゾ!」と小学生みたいな妄想も働かせて…。
理由を考えるに、どうやら僕は「過度に人工的な美」を現実の中に見ると、動物的な勘が「ヤバい、死ぬ」と働くらしい。だからディズニーランドは居心地が悪い(と思うから行ったことがない)。逆に団地やニュータウンが古くなって、住民の生活感でごちゃごちゃカオスになるととっても安心する。
© 2017 Paramount Pictures. All rights reserved.
さてさて、俳優ジョージ・クルーニーのもう一つの顔は社会派エンタメ作品を得意とする映画監督で、まさに「美しいものや美談の裏には何かあるゾ」というサスペンス作品が得意だ。さらに今作『サバービコン』では、「善人そうな顔はだいたい悪いやつで、ダサいやつはめっちゃ良いやつ」と世の中をナナメに見てるコーエン兄弟が脚本を担当している。
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舞台は1950年代のアメリカ。郊外にある夢のニュータウン、サバービコン。もう僕にとって軽くホラーなくらい超オシャレで綺麗に整理された白人の街。そこに1組の黒人家族が引越してくるところから物語は始まる。この街にいったいどんなドロドロとした裏の顔があるのかは映画を見てのお楽しみ。二転三転と不幸な方に転がりつつ、笑ってしまう展開の上手さはさすが『ファーゴ』のコーエン兄弟。
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そういえばコーエン兄弟の出世作『バートンフィンク』の有名なラストシーンは、完璧すぎる構図に突然、1羽の鳥がマヌケに落ちてくるところで終わる。
わかってらっしゃる。
<劇中で見られるニュータウンな光景>
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INFO
『サバービコン 仮面を被った街』
監督:ジョージ・クルーニー
脚本:ジョエル&イーサン・コーエン、ジョージ・クルーニー、グランド・ヘスロウ
出演:マット・デイモン、ジュリアン・ムーア、オスカー・アイザック
大阪ステーションシネマ、なんばパークスシネマ、T・ジョイ京都、MOVIX京都、神戸国際松竹、TOHOシネマズ西宮OS、ほかで5月4日(金)より公開
http://suburbicon.jp
西尾孔志
1974年大阪生まれ。2013年に『ソウル・フラワー・トレイン』で劇場映画デビュー。2014年『キッチンドライブ』、2016年『函館珈琲』の他、脚本作品に『#セルおつ』なども。OURS.では、カリグラシTVを担当。
*カリグラシTV
→https://uchi-machi-danchi.ur-net.go.jp/cms/ours/akichi-1/
*インタビュー記事
→https://uchi-machi-danchi.ur-net.go.jp/cms/ours/nishio-01/