津村 大竹さんがもう1作、新しい間取り小説を書くとしたらどんな間取りですか。

大竹 いろんなアイデアがあるけど、ひとつは動物と暮らす家ね。集合住宅で、飼ってる動物はなんでもよくて、ワニでもノミでもいい。それで、動物用のスペースと自分用のスペースがあって、真ん中にはコミュニティスペースがあるって、そんな間取り。

津村 どんなところに住みたいかって、また話がそれますけど、寝てるときに布団のシワとかを見てると、自分が小さくなってそこに入りたいって思いません?

大竹 ありますねぇー。

津村 よかった(笑)。また変な話、はじめてしまったと思って。

大竹 私が寝転がったときによくやるのは、片目を閉じたり開けたりすること。距離によって目の前の物が消えるでしょ。片方の目にはそれが存在する世界が映り、もう片方の目にはそれが存在しない世界が映る。どっちがホントかなあとか。

津村 わかります。目を細めて光を制限してみたりとか。

  

大竹 それもやりましたね。なんだか幼児期の問題行動を披露しあってるみたいになってきた(笑)。

津村 すいません、わかってくれる人が現れたってどんどんしゃべってしまって。

大竹 私は、言われたことに集中できない子どもで、いつも無意味な行動が多いですって書かれてました。マドリストが集まるとこういう変態ぽい話をすることが多いんですけど、間取りがカミングアウトのきっかけになるのかも。

津村 なんなんでしょうね。今日は、変な話を聞いてもらったみたいな感じで。ほんとにありがとうございました。

大竹 こちらこそ。ありがとうございました。

 

<INFO>

大竹昭子
『間取りと妄想』(亜紀書房)
まず間取りを掲げてから、展開される13の物語。間取りが住人のおよぼす影響は、物語によってさまざま。読了後は、間取りを見るだけでそこで生まれる暮らしと物語を妄想する人になってるかも。

津村記久子
『浮遊霊ブラジル』(文藝春秋)
うらぶれた故郷に帰った男と給水塔、亀、ビール、製麺所の静かな交わりが描かれる「給水塔と亀」の他、「うどん屋のジェンダー、またはコルネさん」「地獄」「浮遊霊ブラジル」など、ジワジワと染みる傑作短編集。2017年、紫式部文学賞受賞作。

構成:竹内厚 現場スケッチ:タケウマ
*2017年7月23日に心斎橋アセンスで行われた対談を再構成したものです
(2017年9月5日掲載)

*前編はこちら


THE BORROWERS

借り暮らし、貸し借り、賃貸にどんな可能性がひそんでいるのか。多彩に活躍する方々へのインタビュー取材を通してその魅力に迫ります。いいところ、大変なところ、おもしろさ、面倒くささ…きっといろんなことが浮かび上がるはず。

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