大西:写真家の大西みつぐと申します。私は、東京の下町に生まれ育ちまして、隅田川、荒川、江戸川に挟まれた地域で、下町の暮らしぶりを40年近くにわたって写真に撮り続けてきました。暮らしぶりとひと言でいっても、日常的なものと非日常的な、たとえばお祭りのような場面があります。その繰り返しによって、我々の生活は形成されています。やはり私にとっては人の匂いのする下町が原点ですから、下町の日常と非日常から何かしらのヒントや、まちづくりのあるべき姿が生まれているんじゃないかという思いに駆られています。 フォト&スケッチ展については、これまでに審査を5~6回ほどさせていただきました。今回のセレクション作品から、気になった写真をご披露いたします。

大西:ご存知のように、現在、デジテルカメラが大変に普及していますけど、コンテストの始まった2008年頃は、まだまだフィルムで撮ってらっしゃる方も多かったと思います。それから、一気にデジタルカメラが広まりましたけど、デジタルカメラは夜に感度を上げて撮影することに強みを発揮しますので、さまざまな方がこぞって夜の団地写真を応募してくれました。「ふるさと」はその代表的な1枚です。

大西:こちらもデジタルカメラらしい非常にビビッドな作品。雪の日がロマンチックに描写されています。

大西:人間が中心になったイメージが私は好きなんですね。暮らしぶりのなかで人間がどういう風に描かれるんだろうと。 やはり、写真を撮る/撮られるという関係をご家族や近隣のみなさんと共有しながら写真を撮っていただくと、こういういい感じになるんだと思います。記念写真こそ写真の原点ですね。

大西:ベランダから、非常に美しい光を意識しながら写されています。光を意識してシャッターを切る、これは写真の基本ですけれども、団地のコミュニティのなかで光を感じ、写真を撮る喜びをみなさんが紡いでくれたというのが、このフォト&スケッチ展の本当の収穫だと思います。

大西:「カーテン」は、ベランダを独自のとらえ方で表現されたもので、ユニークな世界。写真とはまた違った、スケッチならではのタッチがあります。そして、非常に温かい眼差しがありますね。写真もスケッチも、眼差しの賜物であるんだとあらためて思います。

大西:切り絵のようなイメージですね。ここまでくると本当にプロフェッショナルのようでもあります。
池邊:ありがとうございました。では、杉本さん、お願いします。