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千島団地、ビタミンカラーで描く
アーティスト・シルシルの制作風景

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DIYの発信拠点として2016年から大阪の大正区を盛り上げてきた千島団地。「TAISHO☆UP」プロジェクトとして、これまで様々なイベントや映像制作などが行われてきました。ラッパーのSHINGO☆西成さん出演のミュージックムービーは、団地から街へ出て、たくさんの顔と風景が見えてきました。

そんな団地で新たな作品制作が行われていると聞き、冬の昼下がりに行ってきました。

千島団地は総戸数2,236という巨大団地。敷地内にはDIYのツールショップ「壁紙屋本舗LAB」がオープンするほか、全戸において自由にDIYできる団地として進化しました。全戸DIY可能なのはUR団地ではここだけ。

4号棟から3号棟を抜けて、2号棟へ。ひときわ鮮やかで、もうそこだけ春のような風景が見えてきました。その様子を見守る住人の方々も。

壁面の制作を手がけるのは大阪在住のペインティングアーティスト、silsilさん(以降、シルシルさんと表記)。ちょうど、7割ほど作品ができつつあり、白いペンキで味付けをしているというタイミングでした。白いペンキが乗っていくことで、絵に立体感が生まれてくるようでした。迷いなく動いていくその筆を、しばし見せていただきました。

すると、また新たな住人の方から「だいぶ進んだね~!」と気さくな声がかかりました。自転車を降りて、スマホのカメラを取り出し、「はい、今日も記録ね!」と言ってシルシルさんと壁面の様子を撮影されていました。その密な関係性に驚きました。

一体どれくらいの期間制作されてきたのでしょうか?

シルシル:制作期間は丸2日間なんですよ!10:00から17:00までフルで描いていました。すると、住人の皆さんにたくさん声をかけてもらうんですよね。男子中学生からは「なんで、団地がこんな小洒落てんの!」と言われたり(笑)。ちゃんと見てくれているんだなぁって、嬉しくなりました。頻繁に見に来てくれていた小学生の女の子のお母さんが、「娘が画家になりたいと言い出してます」と報告に来てくださったりもしました。

なんと、素敵な会話なんでしょう。このカラフルなペンキにも何か秘訣がありそうです。

シルシル:はい、そうなんです。私は「ビタミンカラー」と言ってます。人間は30代以降徐々に色彩の認知が下がっていくと言われているんですね。団地には高齢者も多く住まれていると聞いて、黄色・オレンジ・ピンク・ミントグリーンの彩度の高いビタミンカラーを選びました。高彩度にすることによって、直感で感じられるので、子供にも色を通じて作品のコミュニケーションを早めていると実感しています。

これまで、国外でもライブペインティングで活躍されてきたシルシルさんですが、団地とのコラボレーションは今回が初とのことですね。

シルシル:はい。今回が初めてです。ですが、自分自身が幼少期に団地暮らしをしていたこともあり、とても懐かしく、そして愛しく思いました。同じ形の窓を見ると特にそう思うんです。そこには、たくさんの「生活」があると感じられるから。なので、その生活の場に帰ってくる皆さんへの“おかえり”を今回はテーマに描きました。

なるほど、だから、帰宅時ちょうど見える方角の壁を選択されたのですね。こうして描かれて、シルシルさんにとって団地とは、一言で言うとどんな場所でしたか?

シルシル:「体温」です。たくさんの温度を感じる場所でした。こういった住宅への壁画は実は一人では完成しないものなんです。人だけでなく鳥の声、緑の隙間から見える光、自転車や自動車の音、ここにある全てを共有して制作していきます。そうして今回は、屋外ということもあり、たくさんの人と自然の温度を感じることができました。みなさんと一緒に作ったという気持ちです。

まさに取材中、ひと時も途切れることなく誰かや何かが、シルシルさんと作品の周りを取り巻いていました。シルシルさん、貴重な時間をありがとうございました。

<千島団地ウォールアート図鑑>

千島団地では、これまでにも3名のアーティストによって制作された壁面があります。後日、シルシルさんの作品の完成版と共に見て歩いてきました。どの壁面も、変わらずいきいきとした色を放っていました。

シルシル 作/千島団地2号棟ピロティ/2019年1月完成

ハタヤママサオ 作/千島団地3号棟・壁紙屋本舗LAB横/2018年7月完成

gami&mily 作/千島団地4号棟エントランス/2016年12月完成

山本勇気 作/千島団地中央広場/2016年11月完成

<関連ページ>

□千島団地、DIYの発信拠点に進化中(山本氏、gami氏の制作風景写真なども)
https://uchi-machi-danchi.ur-net.go.jp/cms/ours/20161223/

□物件情報
https://www.ur-net.go.jp/chintai/kansai/osaka/80_1910.html

写真と文:平野愛(インタビューは2019年1月、完成版は2019年2月撮影)

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