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父、おとうさん、パパ、親父……
その後ろ姿から
家族と住まいのことを見つめます。
ベベチオのはやせさんによる父さん話。

うちにはブームになる前からファミリーコンピュータ(ファミコン)がありました。シャープの赤いテレビに直接、ファミコンのロムカセットを差しこむ形で、付いてたドンキーコングも1面と4面しかない特別版だった。とにかく本体にシャープって書いてたのを覚えてます。
当然、これは父さんが買ってきたものだけど、それには理由があって「これからはな、もう、ファミコンの時代や」「これだけやっといたら大丈夫や。何でもできるようになる」って何度も言ってました。どこでそんなニュースを聞きつけたのか知らないけど、その後も「もっと他にカセットないんか、買え買え!」って、僕たち兄弟はさんざんゲームをやらされてたような感じで。もちろん楽しんでファミコンやってましたけど、どこか変なバランスで。スナック帰りの父さんが部屋の戸を開けて、「ファミコンやってるか?」って聞くのに「やってるよ…」と渋々答える、そんなやり取りが小学高学年くらいまで続いていた気がします。
だけど結局、父さんは、ファミコンとパソコンを取り違えていただけで、本当は「これからはパソコンの時代です」という話だった。何年もファミコンを習いごとみたいに強制されてきたところもあったので、さすがに僕も父さんに聞きました。「あれって、父さんがなんか間違ってたってことやんな?」って。でも父さんは、「いや、指先でやることなんやから、ファミコンもパソコンも一緒のことや」って、今になって考えてみたら中途半端に合ってるようなことを言ってました。
「ファミコンだけやっといたら就職できるから」と言いながら、ファミコンのゲームカセットは何本でも買ってくれた父さん。あながち間違ってなかったと思ってます。


早瀬直久
音楽ユニット ベベチオのボーカル&ギター。暮らしをもっと盛り上げる企画チーム「ragumo」の代表も。5月26日に裏なんば、27日に京丹波でライブがあります。靴買おうか思ってます~。
http://ragumo.jp

イラスト:ちえちひろ 構成:たけうちあつし

  

<これからの予告>
00 はだか
00 メジロ
00 スナック
00 葉巻

カリグラシコラム

そのことを仕事にしている人もいれば、普段の暮らしの中でモヤモヤとした思いが浮かんでいる人もいる。借り暮らしにまつわる意見や考えを、さまざまな人たちが自由なスタイルで綴ります。

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