7. 想像力を発揮できない場所

意外なことながら、ヴェルンハルト家の家探しの中で、キッチンの優先順位はそれほど高くないらしい。

マルクス:家の中で、いちばん想像力を発揮できない場所がキッチンですよ。ほかの部屋は空の空間だから、自分が持っているものを中にいれて気持ちよく考えられるけど、台所はだいたい構造が決まっています。自由にできるのは道具くらいで。
自分がずっと住み続ける家なら、自分の趣味に合ったキッチンをあつらえることもできるでしょうけど。

えり子:キッチンの順位が低いわけではないけど、まずリビングとダイニングが広くて、人が集まりやすい部屋を選んでいます。そして、花を置けるテラス。その次くらいに、ようやくキッチンですかね。

キッチン選びのポイントのひとつが「収納力」。パーティを開くからには、大皿、小皿と食器が増える。それを収納する戸棚は必須だ。
なんでも、家を選んだ後に、ドイツ大使館から必ず住まいの大きさなどが「適切」かどうか確認が入るそう。ゲーテ・インスティトゥート館長というポジションは、国の文化を代表する立場なのだ。

えり子:駐在員用の住まいというのは、日本人からしたら立派なところが多くて、恵まれているんですけど、その反面、いらないものがついている物件も少なくなくて。

マルクス:悪趣味なキンキラ金の内装とか。壁にも床にも大理石とか。私の考えでは、住まいはできるだけシンプルにしておきたいんです! 交通の面では妥協できても、住まいでは妥協したくない。

8. 自分がキッチンに合わせていくへつづく

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借り暮らし、貸し借り、賃貸にどんな可能性がひそんでいるのか。多彩に活躍する方々へのインタビュー取材を通してその魅力に迫ります。いいところ、大変なところ、おもしろさ、面倒くささ…きっといろんなことが浮かび上がるはず。

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