部屋にうたえば

       

一枚の部屋の写真から
二人の歌人が短歌を綴ります。
18回は蒼井杏さんを迎えて。


今回の連作が蒼井さんから届いて、まずタイトルを見ただけで「わぁ、めっちゃ蒼井さんって感じ!」と嬉しくなりました。カーテンのドレープを通してとろんと入り込む西日の夢心地で曖昧な空気感を表すのに、はちみつを持ってくるなんて。かわいくてやわらかく、そしてぴったりくる感じ。蒼井さんの短歌の魅力は、気まぐれで生み出された子供のおはなしのような無邪気さもありつつ、やわらかい言葉選びとその的確さに落ち着きが感じられるところ。天性のバランス感覚、ってことにしといてもらわないと、どうにもこうにも敵いません。
作家の小川洋子さんが蒼井さんの歌集『瀬戸際レモン』の帯を書いていると知り、その組み合わせにくらくらしました。好きな作家さん同士につながりがあるのがファン心理としてたまらんというのもありますが、蒼井さんの短歌のゆったりと語りかけるような穏やかな時間の流れは、小川洋子さんの静かで美しい小説の世界に通じるものがある気がします。
これからの季節、あたたかいはちみつレモンを飲みながらのんびり読書もいいですね。歌集なら『瀬戸際レモン』がぴったり。


蒼井杏(あおいあん)

瀬戸内海沿岸生まれ、現在大阪在住。未来短歌会。第一歌集、新鋭短歌シリーズ27『瀬戸際レモン』書肆侃侃房。たいていにしびのそこにうずくまっている雨女。せかいをぬらしたい。もしくはため池のほとり。
Twitter:@aoianaoian


谷じゃこ(たにじゃこ)

1983年大阪生まれ、大阪在住。短歌のzineを作るなどフリーで活動。『クリーン・ナップ・クラブ』『ヒット・エンド・パレード』『めためたドロップス』、フリーペーパー「バッテラ」(奇数月発行)など。鯖と野球が好き。
Twitter:@sabajaco
Web:http://sabajaco.com/

※今回のお題写真は、過去に森之宮団地を撮影した写真記事から。撮影は沖本明。
https://karigurashi.net/ours/okimoto-06/

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