




「なんで短歌作ってるん?」と友人から(悪意があるわけではなく)聞かれたことがあります。その時は「おもしろいから」くらいの返事をしたけど、あとあとよく考えると、「自分のため」こそが大事な理由なんじゃないかという気がしてきました。
北村早紀さんの短歌に、「でも君のたったひとりになるのなら強くならんとあかんと思う」(短歌同人誌『遠泳2』より)という一首があります。全て受け入れるための覚悟を決める瞬間に立ち会っているような、飾らないまっすぐな強い思いの伝わってくる短歌です。北村さんから聞いたわけではないのでこれは私の予想ですが、この短歌は本当は自分のための短歌で、詠むことで自分を鼓舞していたんじゃないかと思うんです。今回の連作も、どんな日も前に向かっていく気持ちがかっこいいし、北村さんの短歌はいつも前から「えいえいおー!」と明るくひっぱってくれるみたいで大好きです。
心が動いた瞬間を閉じ込める、というと随分きれいごとのように聞こえますが、どんな感情であれ向き合うことは大変なこと。短歌を作ってみたくなったら、思いっきり自分のために作ってほしいなって思います。誰にも見せずにメモに書き留めていってもいいし、見せたくなったら小さなZINEにまとめるのも素敵!
北村早紀(きたむらさき)
1994年京都市山科区生まれ。滋賀を経ていまは京都在住。学生時代に京大短歌にいて、同人誌は遠泳、長くお休み中ですが結社は星座に所属しています。歌ったり踊ったり絵の具まみれになったりしながら暮らしています。
Twitter:@kitapurple57577
谷じゃこ(たにじゃこ)
1983年大阪生まれ、大阪在住。短歌のzineを作るなどフリーで活動。『クリーン・ナップ・クラブ』『ヒット・エンド・パレード』『めためたドロップス』、フリーペーパー「バッテラ」(奇数月発行)など。鯖と野球が好き。
Twitter:@sabajaco
Web:http://sabajaco.com/
※今回のお題写真は、過去に京都の松ノ木町団地を撮影した写真記事から。撮影は金サジ。
→https://karigurashi.net/ours/kim-01/