




「部屋にうたえば」を読んでくれている方で、短歌は読むけど作ったことはないな~というあなたにぜひ読んでほしい歌集があります。榊原紘さんの『悪友』(書肆侃侃房)です。第2回笹井宏之賞に選ばれて出版された歌集なのですが、『ハイキュー!!』や『おおきく振りかぶって』といった漫画作品への思いから作られた短歌も収録されている、ちょっと珍しい歌集なのです。短歌は、溢れ出て抱えきれない推しへの想いを詠んだっていいのです。表紙絵も榊原さんの好きなイラストレーターの方に描いてもらったそうで、大好きが詰まった大事な本を一冊、お部屋の本棚から分けてもらったような特別感すら感じられます。
榊原さんの短歌の魅力は何と言っても関係性。歌集のタイトルにもなっている「悪友」という連作があります。その名の通り悪友との絶妙な距離感と信頼を、どうしょうもない世界だけど悪くもないよって苦笑いをするみたいに描いています。クールさとチャーミングさを兼ね備えて、影があるのに明るい短歌。そんな榊原さんは、オンラインの短歌講座「推しと短歌」の講師もされています。めちゃくちゃ人気講座みたいですよ。推しへの想いをなんとか形にして表現したい人や、短歌を作ってきたけど自分の表現したいのはこれなのか……と悩んでいる人は、ドアをたたいてみるのもいいかも。
榊原紘(さかきばらひろ)
1992年愛知県生まれ、奈良県在住。第2回笹井宏之賞大賞、第31回歌壇賞次席。第一歌集『悪友』を2020年に刊行。ゆにここカルチャースクールにて「推しと短歌」開講中。
Twitter:@hiro_geist
公式サイト:https://hiro-tohma-official-website.com
谷じゃこ(たにじゃこ)
1983年大阪生まれ、大阪在住。短歌のzineを作るなどフリーで活動。『クリーン・ナップ・クラブ』『ヒット・エンド・パレード』『めためたドロップス』、フリーペーパー「バッテラ」(奇数月発行)など。鯖と野球が好き。
Twitter:@sabajaco
Web:http://sabajaco.com/
※今回のお題写真は、過去に小阪駅前団地を撮影した写真記事から。撮影は沖本明。
→https://karigurashi.net/ours/lifestyle-01-04/