




『ショートソング』という小説をご存知でしょうか。歌人の枡野浩一さんによる短歌と青春の物語なのですが、ストーリーもさることながら小説に登場する短歌がすごくいいと人気です。その中で、主人公である大学生の国友克夫が賞に応募するため作り上げた連作に使われているのは、なんと木村比呂さんの短歌なのです。私の周りの短歌の友人たちも、『ショートソング』を読んで短歌に興味を持った人が結構多い。今回木村比呂さんの連作を読めるということで、喜んでいる友人もたくさんいるはずです……!
木村さんの短歌は、なんといってもチャーミングな視点がたまりません。旅先で出会った猫に挨拶をするみたいに、優しくやわらかい声で、敬意を持って身の回りのものに語りかけます。「伏せてある本に元気がないんです……」なんておうちで言っていると知ってしまったら、出張先から飛んで帰ってくるしかないですよ。
短歌の読みやすさも魅力です。ほとんどの短歌が定型(5・7・5・7・7)のリズムで読めます。しかし、「読みやすい」イコール「わかりやすい」とは限らないのがおもしろいところ。リズムに乗ってさらっと読んでしまいそうになるのですが、立ち止まって意味を深掘りしていくと、不思議でかわいい世界に迷い込んでいたなんてことも。
木村比呂(きむらひろ)
京都生まれ、東大阪在住。小説『ショートソング』(著・枡野浩一/集英社文庫)内の作中作のひとつとして、短歌連作「アイ・シンク・ソウ」を提供しています。
Twitter:@rahiro
谷じゃこ(たにじゃこ)
1983年大阪生まれ、大阪在住。短歌のzineを作るなどフリーで活動。『クリーン・ナップ・クラブ』『ヒット・エンド・パレード』『めためたドロップス』、フリーペーパー「バッテラ」(奇数月発行)など。鯖と野球が好き。
Twitter:@sabajaco
Web:http://sabajaco.com/
※今回のお題写真は、過去に大浪橋団地を撮影した写真記事から。撮影は佐伯慎亮。
→https://karigurashi.net/ours/lifestyle-10-06/