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今日も団地では楽しい笑い声が聞こえます。人と人がつながる”団地暮らし”の魅力とは。

人と人がつながる 団地暮らしの魅力

artproject_stage15(その2)

人、歴史、自然。まちの力がアートを育てる

阿武山アートカレッジのプログラム第2弾が、11月18日(土)に、阿武山団地8番街集会所で開催されました。企画・運営は大阪芸術大学芸術計画学科の2年生が中心となり、来春に実施する予定のアートワークにつながる「阿武山アートカレッジ ~3つのワークショップ~」を行い、3歳から70歳代まで幅広い世代の皆様に参加していただきました。

~成功のカギを握る、入念な準備~
ワークショップ成功のカギを握るのは、当日までの準備です。今回も、学生たちがアイデアを出し合って、様々なメニューを立案し、事前にフライヤー(チラシ)を作成。フライヤーの中面には、学生たちのイラストの力作がたくさんあります。
このフライヤーを阿武山団地のみなさんにポスティングさせていただくとともに、ポスターの掲示もおこないました。


学生たちが作成したフライヤー

 
また、住民のみなさんに楽しく参加していただくために、当日の会場のデコレーションやサイン、配布する資料やワークシート、ワークショップに必要な道具や材料も事前に準備します。学生たちは授業の合間のわずかな時間を利用し、自主的に協力し合ってきました。
「準備がきちんとできていれば、プロジェクトは成功します。その理由は、企画・運営に携わる全スタッフが思い描く当日の会場風景が共有され、一人ひとりが自主性を高めることができるからです。どんな会場風景をイメージするのか、どれほどの人々が参加してくれるのか、どんな会話が生まれ、いかなる人々とのつながりができるのか。想像しながらブレスト(ブレーンストーミング)することは、プラン二ングの醍醐味です」と、大阪芸術大学芸術計画学科教授の谷悟先生の教えを学生たちが身に着け始めたようです。

 

 


~パブリックアートの真価を呼び覚ます~
来春、予定されている阿武山プロジェクト第3弾は、阿武山団地内に設置されているパブリックアートを活用し、住民のみなさんにアートの楽しさを体験していただく試みです。
具体的には、阿武山団地8番街に設置されている川島慶樹氏の作品『MarMagician』にスマートフォンなどの携帯端末を向けると、AR技術を使ったアニメーションを見ることができるようになります。AR技術は、拡張現実を意味します。大ブームとなった子ども向け人気キャラクターを使ったスマホゲームと同じ仕組みです。実在しないキャラクターなどが、スマートフォンなどの画面に映し出されます。今回は、アニメーションに登場するキャラクターを住民のみなさんと一緒に創ります。創作したキャラクターは、阿武山特別住民票に登録したり、絵本として展開することもできます。また、川島慶樹氏の『MarMagician』を利用した空想のまちをつくり、カタログを制作。ほかに、花を咲かせた風景も創作します。


日常の暮らしに寄り添うパブリックアートは、住民のみなさんの暮らしに溶け込み、時折、住民のみなさんから眼差しを向けられたり、話しかけられたり、触られたり。住民のみなさんと同じように時を刻んでいます。今回のプロジェクトは、みなさんの記憶を呼び覚まし、パブリックアートの真価に気づくきっかけになるのではないかと期待しています。

 


~学生の熱意が伝わり、可愛らしいキャラクターが誕生~
北寄りの風が吹き、前夜からの雨が残る阿武山に到着した学生たちは、雨が止んでほしいと願うばかりでした。集会所で準備するチームと、近隣の商業施設周辺でフライヤーを配るチームにわかれ、段取り良く準備が進みます。やがて雨が止み、道を行き交う人の姿が見え始めました。


親子やファミリーに、真剣なまなざしでワークショップを行っていることを伝える学生たち。その熱意に打たれて、お友達同士という2組の母娘が参加してくれました。
年少・小学1年の2人の娘さんとお母さん、小学1年の娘さんとお母さんの5人が揃って受付を済ませました。「何をするのだろう?」と不思議そうな表情を浮かべる子どもたちに、学生が説明します。アニメーションに登場させるキャラクターを描き始めると、不安の表情を見せていた学生たちにも笑顔が戻り、静かだった会場がにぎやかになりました。30分ぐらいで完成。年少の女の子は『すずちゃん』、小学1年のお姉ちゃんは、女の子に人気の高いアニメにも登場しそうなオリジナルキャラクターの『♡キュアレインボー♡』を、お友達の小学1年の女の子は『ゴールディーとベア』をそれぞれに創作。可愛らしいキャラクターが出来上がりました。

 

~住民のみなさんの、温かいまなざしに感謝~
会場の賑わいを察して、近所の女性二人組も参加してくれました。ここでは、キャサリンさんとコスモスさんと呼ぶことに。
キャサリンさんは、阿武山で子育てをして、今は季節の移ろいを感じ趣味の絵画など
を楽しみながら暮らしています。「娘が小さかった時に、上の池公園の土手に咲くきれいなアザミを持って帰ってきました。そのアザミの綿毛を庭にまいておいたら、次の年に芽が出て花が咲いたんですよ」と、懐かしい思い出を語ってくれました。もちろん、キャラクターの名前は『アザミちゃん』。「ちょっと花のところが大きくなりすぎちゃったかしらね」と楽しそう。大人の寺子屋とグループをつくり、春には冠をつくり、秋にはクリスマスリースを周辺から摘んできた草花で作っていると教えてくれました。


コスモスさんは、ゆっくり時間をかけて仕上げていました。学生と二人三脚で、「これでいいかな?」、「まだ次もありますよ。がんばりましょう」と学生。キャラクターの手足の動きを二人で確かめ合って「おさげちゃん」という、ちょっと昔懐かしい女の子を誕生させました。「ここにどんぐりを描いたんだけど、紅葉のようになってしまったわ」と、苦笑い。芦屋から数年前に引っ越しされたそうで、ショッピングに出掛けていた時間を今は散歩の時間にして楽しんでいるとお聞きしました。
学生たちと言葉を交わすお二人のまなざしは、会場全体をやさしく包み込んでいました。地域で暮らしている皆様との交流は、学生たちの大きな財産になります。

 

 


~アートの基本は、概念を押し付けない自由な発想~
途中、中学生の男の子たちも参加してくれました。ほかにも、家でも絵を描いたり、折り紙を折ったり、紙粘土で遊ぶのが好きな3歳の女の子は、お母さんと一緒に紙粘土を使ってカラフルな『おおきなおはな』を創作。「子どもの自由な発想を大切に、私の考えを押し付けないようにしているんです」というお母さんの言葉に、今回のワークショップにゲストアーティストとして参加している川島氏が、「すばらしいことです。大人の概念で美しいとか美しくないとか、押し付けてはいけないんですよ。子どもの個性や発想力を失わないためにも、自由にさせてあげてください」とアドバイス。1時間半ぐらい座ったまま形を作り、楽しそうに色を付ける女の子の集中力を川島先生は褒めておられました。



また、ARアニメーション用のキャラクター制作の指導は、大阪芸術大学短期大学部デザイン美術学科准教授の林 日出夫先生と2人の学生が担当しました。「住民のみなさんの言葉やキャラクターにかける思いなど、一人ひとりの歩みや感想を伺うことで、アニメーションのストーリーを膨らませることができます」と林先生。
「阿武山団地にたくさんのパブリックアートが点在していることには、深い意味があると思います。自然や歴史、人々の暮らしの中にひっそりと佇むアートには、生命のようなエネルギーが秘められています。阿武山アートカレッジでは、川島慶樹氏の協力を得てワークショップを行い、住民の皆さまに参加していただきながら、一つのアート作品から広がる世界を体現していただきます。このことは、団地に暮らす人々も学生たちも、阿武山をもっと好きになり、まちを愛で、誇りを育む人々が集う“創造的な学びの場“が生成されることにつながるきっかけのひとつになるのではと思っています」と、谷悟先生。
2019年3月末に行われる予定のプログラム第3弾は、阿武山アートカレッジの集大成です。より多くの人に参加していただき、アート作品を通して阿武山の素敵なまちの魅力に触れていただきたいと思います。

撮影:長谷川朋也

住所:高槻市奈佐原二丁目7番

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