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今日も団地では楽しい笑い声が聞こえます。人と人がつながる”団地暮らし”の魅力とは。

人と人がつながる 団地暮らしの魅力

artproject_stage2

ディスカッション① 前編 

アートプロジェクトstage1に続き、stage2の公開です。stage1では、大阪芸術大学の学生たちが3つの団地を訪ね、団地内に設置されているパブリックアートをフィールドワークしました。その成果をまとめるためにフィールドワークに参加した学生たちが、講義の合間に集まり、フィールドワークで体験したこと、感じたこと、考えたことを語り合ってくれました。

~想像力を引き出す背景を学ぶ見学~
1月、大阪芸術大学芸術計画学科の講義室にフィールドワークに参加した学生たちが集まってくれました。指導をされている谷悟先生、今日は見守り役です。
新千里北町の特徴は、その敷地内の立地や地形、動線の豊かさです。学生からも、「空間を活かしたアートが表現できるのではないか」と意見がありました。企画を進める際には、この団地にある作品と対話をすることも大切となります。しかし、かなり前に設置されたパブリックアートについては、作品の意図を記した書類が残されていないこともあります。
進行の途中、谷先生が一言アドバイス。

 少し調べたのですが、井上卓之氏は、現代アーティストや彫刻家ではなく、“伝統と近代をつなぐことができた力のある造園家”と紹介されています。「公共性の高い空間にあえて、『にわ』空間を挿入し、そこを存在感のある場所に転換させる試み」(※1)は、注目すべき取り組みです。「伝統の再構築によって、日本の風土にあった新しい『ひろば』形成」(※2)を目指そうとした点は極めて興味深いものを感じます。高度成長期、日本の国力を支えてきた人たちが住んでいた団地に今も彼の想いを読み取ることができます。
1回生からは、「団地を古いものとしてとらえた場合、異空間のように感じた」という意見があり、学生たちも共感していました。千里中央駅付近に建ち並ぶ近代的な高層ビルとの比較が、より団地全体の雰囲気をノスタルジックにしているのかもしれません。団地の佇まいを生かしたアートプロジェクトを企画したいという意見も出て、強いテーマ性を持った企画が必要だと学生たちも気づいたようです。


井上卓之氏の作品


『つどい』と同エリアにある庭石
撮影: 長谷川朋也

・参考文献
※1、※2とも佐々木葉二「ランドスケープデザインの潮流」(『JUDI NEWS』057 都市環境デザイン会議 2000)p5~6


 
~ノスタルジックな風情を楽しむ~



撮影: 長谷川朋也

 千里津雲台には、公園がたくさんあります。しかし、元気に走り回る子どもたちの姿を見ることはできませんでした。
「遊べる空間だと思ったんですが、やはり使われている感じがしなかった。団地自体も広くていい感じだったのですが、若い人があまり住んでいないのかなと思い、少し寂しさを感じました」と学生の素直な感想もありました。一方で女性らしい視点では、「公園と住棟の間に造られている壁に、ところどころ穴が空いていて、驚きました。ここで遊ぶ子どもたちの目線に合わせて造られていて、覗き込むと子どもから見た世界が広がっていると思います。その視線の広がりを活かして何かアイデアを考えたいと思います」と、頼もしい意見もありました。
学生たちからは、「懐かしい」「ノスタルジー」というキーワードが出てきます。それは言い換えると、「安心できる」「ほっとする」「心落ち着く」という意味にもなるのでしょう。
「若い人はもっと都会の新しいマンションに住みたい、そう思うでしょうね。だけど、ここが問題、発想の転換です。ノスタルジー、あるいはレトロ(懐古主義)、何か癒されたいという若い人も多いと思います。その感情をふまえつつ、ここでしかできないテーマや手法をしっかりと練り上げることが、プロジェクトのポイントになるでしょう」と谷先生がまとめてくれました。

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