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今日も団地では楽しい笑い声が聞こえます。人と人がつながる”団地暮らし”の魅力とは。

人と人がつながる 団地暮らしの魅力

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第3回 フィールドワーク 

大阪芸術大学とUR都市機構がコラボレートし、進めているアートプロジェクト。3回目のフィールドワークは、香里ヶ丘みずき街(大阪府枚方市)、若山台中央団地・若山台第4団地(大阪府三島郡島本町)、富田団地(大阪府高槻市)の北摂エリア東部の4団地を訪ねました。富田団地では、住民の代表を務める自治会の方々とはじめて学生が交流し、今後のプロジェクトの展開も次のステップに入りました。その様子も合わせてご紹介しましょう。

~継承することも、アートの役割~
今回のフィールドワークは、今までとは少し異なる目的がありました。それは、住民のみなさんと交流を図るきっかけをつくることです。
UR賃貸住宅団地の造園やパブリックアートには、住民のみなさんの思いが秘められています。例えば、最初に訪れた香里ヶ丘みずき街には、2か所に分かれた『思い出の庭』が整備されています。一つは、団地の建て替え時に、それまであった樹木を保存しつつ整備された小さな森で、木々の成長に合わせて歴史を刻んできました。もう一つは、休憩スペースに設置されたベンチの背もたれに掲げられた陶板です。建て替えしたおおよそ20年前に、住民が参加し粘土で思い思いの図柄をつくり、40枚が焼かれました。


住民が参加して制作した、香里ヶ丘みずき街の『思い出の庭』の陶板。
撮影:横山 祐介/大阪芸術大学 芸術計画学科3回生

 

敷地の横を流れる天野川の支流の水路には、白御影石で造られた『河童』が設置され、まるで地蔵尊のように地域の安全を見守っていました。 「作品の完成度も重要だが、作品と場の関係をしっかりと考えて、どこに、如何に展示するかをこだわり抜けば、パブリックアートのクオリティは、ますます高まる」と谷悟先生は、学生たちに伝えていました。


香里ヶ丘みずき街の水路に設置された杉本利延氏の作品、『河童』。
撮影:横山 祐介/大阪芸術大学 芸術計画学科3回生

 

~場の記憶も、アートのテーマ~
続いて、JR京都線島本町駅の山間に建つ若山台中央団地・若山台第4団地へ。島本町は、淀川、木津川、桂川の3つの川が合流する歴史的要衝の地。その固有の立地条件(場所)を記憶させるためのパブリックアート作品『三川合流』がキラキラと輝きを放ち、当時をしのばせるシンボルになっています。また、ステンレスでできた『天狗の足跡』という巨大な足跡のアート作品が団地入口のコンクリート壁面に設置され、学生たちの目を引いていました。


若山台中央団地にある児玉康兵氏の作品、『三川合流』。

 

かつて、ピロティに設置されていた陶板の『からす天狗』は、劣化が著しく集会所の片隅で保存されていました。学生たちは、外されてしまった陶板をどうすれば復活できるのかを試行錯誤。いろいろなアイデアが浮かぶ中、 「一枚一枚画像に取り込んで、IT技術を活用して復活させることもできますし、あらたな素材と組み合わせてもう一度壁面にかけることもできますね」と、声が聞こえてきました。


若山台第4団地にある田村努氏の作品、『天狗の足跡』。


かつて、ピロティに設置されていた陶板の『からす天狗』。

 

~住民とともに協働する、その第一歩を踏み出す~
最後は、総戸数2647戸、甲子園球場5つ分の広さで、関西エリアでも屈指の規模を誇る富田団地を訪ねました。富田団地の特徴は、住民活動が盛んなこと。自治会、地区の福祉委員会、コミュニティ会議、コミュニティセンターの4つの組織が連携し、周辺住民を含めたサポート体制が整い、毎月、イベントが開催されています。


富田団地にある住民参加型のパブリックアート作品、『こどもギャラリー』。


『こどもギャラリー』に興味津々の学生たち。

住民活動が盛んな富田団地ならば、住民のみなさんと学生が協働してアートプロジェクトを行えるのではないかという思いから、自治会のみなさんとお話をする機会をつくっていただきました。そこで、今回は、自治会の澁谷哲男会長が、学生たちに富田団地の歴史や住民活動についてご説明くださり、学生たちと意見交換の場を持っていただきました。学生からは、「季節の行事に合わせて、住民のみなさんにアートに親しんでもらえるような工夫を取り入れたい。できることならば、子どもたちや親子を対象にしたワークショップをしてみたい」 「5月の端午の節句に合わせて、住民のみなさんと一緒にこいのぼりを造り、青空を元気に泳がせたい」 という意見も。
澁谷会長からは、「なんでもやってみることが大切。いろいろな壁があると思うけれども、住民と一緒になって乗り越えて実現してほしい」と、期待の言葉がかけられました。


富田団地の集会所で、自治会長である澁谷さんの話を聞く学生たち。

富田団地には、1994年に地域の子どもたちが小さなタイルを張り合わせてつくった壁面アートが展示されています。100枚の作品は、一か所にまとめられ『こどもギャラリー』として、多くの子どもたちの成長を見守ってきました。
「大人になり、団地を離れた人々にとって、これからも富田団地の故郷のシンボルになってほしい」 と、澁谷会長が語られました。

次回は、今回のフィールドワークのディスカッションの内容と、富田団地でお話を伺った感想と合わせて、学生たちのアイデアをご紹介する予定です。

撮影:松本 尚大 etc/長谷川写真事務所

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