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今日も団地では楽しい笑い声が聞こえます。人と人がつながる”団地暮らし”の魅力とは。

人と人がつながる 団地暮らしの魅力

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第4回 フィールドワーク 

4回目のフィールドワークは、阪神・淡路大震災の復興事業の一つとして整備された、HAT神戸灘の浜(神戸市灘区)、HAT神戸脇の浜(神戸市中央区)、西宮マリナパークシティ丘のある街(兵庫県西宮市)を、大阪芸術大学芸術計画学科の学生たちと訪ねました。

 

〜震災復興の思いをアートに〜
ウォーターフロントに広がる団地の風景は、空が高く、近代的です。秋の気配が漂うHAT神戸灘の浜に、11人の学生が集まりました。学生に団地の第一印象を尋ねると、「私たちも知っている榎 忠氏をはじめ、アーティストの作品がたくさん設置されており、まるで団地全体が美術館のようです。もっとゆっくり見ることができるといいなあと思いました」と笑顔があふれます。やはり現代アートの作品は、学生たちにとって興味を抱かせる存在なのでしょう。

阪神電車『岩屋』駅からミュージアムロードを海側に歩くと、兵庫県立美術館の建物が正面に見えてきます。屋上にはシンボルの『美かえる』のオブジェ。その美術館の手前に、HAT神戸灘の浜は整備されています。敷地内にパブリックアートとして整備されているのは、6作品。神戸製鋼の跡地に整備された背景から、製鉄所内で使われていた道具を利用したアート作品も設置されています。さらには、「復興住宅という役割を持っていたためか、住民のみなさんのやすらぎや憩いにつながる作品もありました。アートの役割についてきちんと考えていきたい」と、学生の心にも響いたようです。震災から20年。住民のみなさんにアートがどのように役立っているのか知る機会があるといいのではないかと思います。


HAT神戸灘の浜にある三島喜美代氏の作品、『WORK-N』を囲んで。


神戸製鋼の回収品を利用した榎 忠氏の作品、『スボラ号』『バブル号』『シード号』『ポーレン号』の一部。作品全体で神戸の遺産を表現している。



神戸製鋼の廃材を利用した牛島達治氏の作品、『地下水位計・あしもとにある宇宙』。

 

〜暮らしの中のパブリックアートの役割〜
次のHAT神戸脇の浜へは、歩いて移動しました。通り沿いには人と防災未来センター、神戸赤十字病院など、暮らしを支えるための防災や医療関係の施設が立ち並び、大型量販店も進出し震災当時の面影はまったくありません。もしかすると、震災当時のことを知らない住民の方もいるのかもしれないと思えるほど、街は復興しています。

 HAT神戸脇の浜に点在するアート作品の名称に注目してみましょう。『あたたかい空気』『円の仕掛け/ブルーベリー』『雲わく広場』などイメージしやすいものが多いのはこの団地の特徴です。
「現代アートは、タイトルを知ることで、少し受け入れやすくなり、鑑賞者がそこに潜んでいる意図を想像する行為に繋げられるという印象があります。子どもでもお年寄りでも、みんなが見てわかりやすいということもパブリックアートには必要なんだなあと思いました」と学生も話していました。
また、この団地には上部に住戸のない住棟があります。建設当初は、復興住宅という利便性にそぐわないという意見もありましたが、設計段階で被災した方々の心に少しでもゆとりを取り戻してほしいという考えから、住棟内に余白、つまり、なにもない空間を配置したそうです。
「パブリックアートは、人々の暮らしの中、住んでいる空間に共存してはじめて、多くの役割を担えます。ここでは、震災からの復興を待ち望む人々の心を癒す力が作品に宿されているのでしょう」と、谷悟先生。それぞれの住環境に沿ったアートの役割にも、学生たちは気づいたのではないでしょうか。


住民の心のやすらぎを表現した伊藤誠氏の作品、『あたたかい空気(Warm air)』。


HAT神戸脇の浜に点在する立木泉氏の作品、『フルール(Fleur)』。


左:住民のコミュニティの痕跡を示すように置かれた使い古されたイス。人々の息遣いを感じる空間になっている。

右:住棟に設計された住戸の無い空間。余白をつくることで、団地のゆとりを表現している。

 

~アート作品の魅力を知ってもらいたい~
フィールドワークの最後は、西宮マリナパークシティ丘のある街を訪ねました。ここは、住棟のエントランスにアート作品がプロデュースされ、それぞれの作品のテーマが明確になっているのが特徴です。

今回から、今年入学した1回生が2人参加してくれました。凹面鏡のような作品『耳のためのホバリング』には1回生も興味津々。作品の前で、飛んだり、ポーズをとったりすることで、リアクションを確かめるなど、真剣に作品に向き合う中で少しずつフィールドワークの楽しさを実感したようです。
1回生に今日の感想を尋ねたところ「団地には初めて来ました。でも、団地の中は車が走ることもなく安全だと思います。設置されたアート作品に触れたりできる環境が、どんなに素晴らしいのか、住民のみなさんにもっと知って欲しいと思います」と話してくれました。
そこにあるだけで暮らしが豊かになる。人々にアートの魅力に気づいてもらうことも芸術計画の世界を志す学生の役割の一つ。作るだけでなく、活かす術を考案することもアートプランニングの醍醐味だと改めて思います。


西宮マリナパークシティ丘のある街にある長谷圭城氏の作品、『耳のためのホバリング』。


西宮マリナパークシティ丘のある街にある福嶋敬恭氏の作品、『地球家族』。

 


西宮マリナパークシティ丘のある街にある福嶋敬恭氏の作品、『宇宙の詩』。


撮影:長谷川朋也

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