Interview

いろいろな角度でまち・団地を”語る”専門家のお話。新たな一面が発見できるはず。

専門家が語る まち・団地への想い

二見恵美子さん(景観デザイナー)後編

団地のひとインタビュー 012

街へと広がる団地の中の小さな森

環境デザイナーの二見恵美子さんと一緒に、大阪市北区のUR賃貸住宅「さざなみプラザ」を訪ねました。前編の屋上庭園の魅力に続き、後編では都会に暮らす人々に潤いをもたらす街づくりの話題に、花が咲きました。

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二見恵美子さん(ふたみ・えみこ)

景観デザイナー。大学卒業後、デザイン関連の企業勤務を経てイギリスとアメリカに留学し、本場のランドスケープを習得する。帰国後、環境デザインオフィス『E.M.I.プロジェクト』を設立し、「環境改善のための仕事」をポリシーに幅広く活躍。都市緑化の視点から、いち早く屋上緑化を提唱し、近代建築の保存活動にも活躍の場を広げている。京都光華女子大学客員教授。
ホームページ  http://www.emi-web.com/

さざなみプラザには、大木の広場があるんですよ。行ってみましょう。

二見:大きな木がありますね。都心の近くの団地なのに、こんなに大きな木が茂っている小さな森があるというのは素晴らしいと思います。心地いい木陰が、夏には住民のみなさんの憩いの場になるでしょうね。太陽の陽ざしが照り付ける都会の中の小さなオアシスは、ヒートアイランド現象の軽減にもなりますから、木々が茂る森は、ぜひ大切にしていただきたいと思います。

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近年では、ここまで広い緑のオアシスは確保しづらくなっています。そこに工夫が求められていますね。

二見:さざなみプラザのこの小さな森は、都会のど真ん中では大変貴重なものです。最近は特に、効率化を求めるあまり、都心部の緑はどんどん少なくなっているように感じますから、森と同じように小さな森に続く街路樹の広がりも大切にしたいですね。小鳥のさえずりで目覚める朝は、とても贅沢な暮らしだと思います。人が人間らしく暮らせる潤いのある都市環境の整備が今後ますます必要になるでしょう。

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団地に続く周辺環境の整備も重要ですよね。さざなみプラザの隣には毛馬桜之宮公園が広がっているんですよ。

二見:団地からすぐの場所に、川の流れがあって涼しげですね。でも、ここはもっと人々が憩える場所にできるのではないでしょうか。ほら、ボートを練習している人もいますから、もっと開放的な親水空間にすると素敵ですよね。イギリスのテムズ川では、市民がもっと気軽に水辺で休日を過ごしたり、ミニイベントをしたりして暮らしを楽しんでいます。この公園も人々が集いやすいように安全に配慮しながら整備すると、団地の魅力がもっと高まると思います。

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川沿いには自転車専用道も整備されていますし、公園には木々も植えられていますが、少し工夫すれば、もっと素敵な街になるでしょうね?

二見:先ほど通ってきた入り口に、ポプラの木が数本ありました。最近では、あまり見かけなくなってしまったのですが、新緑の季節や紅葉の季節は美しい木ですので、公園全体にポプラ並木をつくると名所になると思いますよ。それに、近くには、全国から大勢の人々が集まる「造幣局の桜」がありますから、この公園にもみなさんが足を運んでくれるよう様々な種類の桜を植えて、並木をつくってもいいと思います。春の桜、新緑のポプラ、秋の色づきと季節を楽しめる場所にできると思います。

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最後にさざなみプラザが秘めた可能性を教えてください。

二見:人々の暮らしは、少しずつ変化していきます。例えば、「さざなみプラザ」が完成した当時は、日本はバブル期真っ只中で、少子高齢社会に対する意識はなかったと思います。しかし今では、少子化が進み、子どもは少なくなり、65歳以上の人口は今後も増え続けていきます。都市部に人口が集中すると予測される中で、ここのように立地条件が良く、利便性の高い団地は、働き盛りの若い世代に住んでほしいと思います。そのためには、豊かな緑と清らかな水辺の整備が欠かせません。職場に近く、子どもを安全に育てられ、休日は緑や水辺で癒される。私がイメージするのは、豊かな自然の中で人々が笑顔で暮らす様子です。「さざなみプラザ」ならば、周辺環境も一緒に整備することで、自然豊かなオアシスの中の街づくりができるのではないでしょうか。とても楽しみですね。

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