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今日も団地では楽しい笑い声が聞こえます。人と人がつながる”団地暮らし”の魅力とは。

人と人がつながる 団地暮らしの魅力

グッドモーニング団地vol.2 〜津久野南団地にて

団地には、色んないきものが暮らしています。

人だけでなく、歩道傍の緑の中には鳥や虫も暮らしています。津久野南団地には、なんと、毎年一ヶ月の期間限定で「やぎ」が住んでいるとのこと。一体どんな風景が見られるのか、誰が育てているのか、取材に行ってきました。

 

やぎさんおはよう 〜津久野南団地にて〜
津久野南団地は川沿いに建っており、その開放的なロケーションが魅力。棟と棟の間にある屋外スペースには、住人が散歩できる小径や子どもが遊べる遊具も用意されています。青々とした芝生の緑と木々の色づく葉の色の変化で、季節の移り変わりを感じることができます。

さあ、この静かな団地に突如現れる「やぎ牧場」とは、どんなものなのでしょうか?


大阪府堺市にある石津川が、団地の目の前を流れています。


共用道路のあちこちで、大木がすくすくと育っています。


遊歩道の芝生の緑も良い色。この1号棟・2号棟・3号棟の芝生スペースに、期間限定で「やぎ牧場」が現れます。


~グッドモーニング団地企画、スタート!~
朝8時45分、やぎさんが暮らしているという現場に到着。


元資材置き場の小屋の入口に、2匹のやぎのスナップ写真が貼られています。おや、すでにお世話係の方が中に入っておられるようです。

朝8時50分、「おはようございます。」
小屋の前にお世話係の方が続々と集まってきました。


お世話係の島田一義さん。平成26年の企画スタート時からやぎのお世話係を担当。

島田さん「毎年10月の1ヶ月間、牧場から借りてきたやぎがこの仮小屋にやってきます。やぎのお世話係は4名。この団地に住んでいる自治会員の有志で構成されていて、午前午後の交代制で、毎日やぎのお世話を担っています」

やぎは9時〜17時の間、仮小屋を出て、団地内の「やぎ牧場」に向います。やぎの一ヶ月の任務は、芝生の除草。団地内の広場に生えている芝生を食べて除去することで、芝刈り機が排出する二酸化炭素を削減しようという取り組みなのです。

 

朝9時、さあ、やぎさんのご出勤時間です!


小屋が開き、白くてきれいな顔がちらり。慣れた感じで手綱を引くお世話係さんに連れられて、1匹・・・


そして、2匹!


お世話係の中井典男さん。今年からお世話係として初参加されている方。


メスのレンゲちゃん(1歳)。とても温厚な性格だそう。


2匹のやぎは朝9時に小屋に出て、団地内の歩道を徒歩5分程歩いて、やぎ牧場に向います。


 団地の中を歩くやぎの後ろ姿。通常、中々見られるものではありません。


到着した先は、団地内の芝生広場。一週間毎にやぎ牧場は移動しながら、やぎは除草活動に務めます。


お世話係の方は、柵の前にあるイスに座って、17時まで交代制でやぎの監視を行います。

中井さん「ここに座っていると、通りすがりの方がやぎを見ていかれます。エサをやってみたいなどとよく話しかけられますよ」

やぎ牧場には、毎日団地にお住まいのお年寄りがやぎの顔を見に来られたり、学校帰りの小学生が2、3人で遊びに来ることも。「やぎちゃん、やぎちゃん」と声をかけながら、側に生えている草を柵越しに食べさせている光景を目にすることもあるそうです。


やぎ牧場に放たれた2匹のやぎさん。開けた屋外に出て、心なしか嬉しそうに見えます。


オスのジェンちゃん(1歳)。人懐っこくて優しい性格。ひっつき虫の草が大好物。


お世話係の花原篤史さん。2年間携わっている、若手のホープ。

花原さん「最初、お世話係の相談をされたときに、僕に務められるのかと不安もあったが、やってみて良かったです。今は、やぎに愛情が湧いています。2匹とも大人しいので世話もしやすいです。やぎ同士もとても仲良しで、たまにお互い寄り添って寝そべったりしていることもあるんですよ」


今年から新入りの中井さんも、すっかり手慣れた手つきでやぎと触れ合っています。

中井さん「私は、この子達のおかげで救われました。妻が今年の7月にガンで亡くなったんです。どーんと落ち込んで、家で半分引きこもっていたのですが、やぎのお世話係になって、ひとときでも寂しさを忘れることができています。毎日この子達に触れ合っていると、それだけで心が落ち着きます」


やぎ牧場にやぎを放した後は、お世話係さんのもうひとつのお仕事である、小屋のお掃除。掃いて、水で流して、清潔な状態に。


やぎを娘のように思っていると話す島田さん。

島田さん「毎年10/31は、お世話担当としての最終日です。お世話係とUR都市機構の方でやぎを見送ります。いつも娘を嫁にやるような、寂しい気分になります。そしてまた毎年10月が近くなるとワクワクします。ヤギの世話をしているときは日々に充実感を感じられています」


お掃除が終了すると、その日の担当者がやぎの監視に戻ります。今日の担当は中井さん。13時の交代まで、やぎの側で時間を過ごします。

「また来年、やぎ達に会いに来てくださいね」

朝10時、見送ってくださる優しい笑顔に手を振って、団地を離れました。やぎが団地に来ることによって、団地の住環境が良くなるだけでなく、住人が社会と交流をするきっかけも生まれていました。またそれ以上に、お世話係の方々の心にも大きな影響をもたらしていたようです。

温かい気持ちをいただいた、10月の良きモーニングでした。

 

〜自治会長:村上徳幸さんにインタビュー〜
津久野南団地の自治会長であり、やぎのお世話係の代表も担う村上さん。動物園の園長さんのように、愛情を持ってやぎを預かっておられます。やぎと団地への想いや関わり合いについてお伺いしました。


団地に住む子どもから「ヤギのおっちゃん」とも呼ばれており、この辺りでは有名人。

そもそも、なぜ、津久野南団地にやぎが来ることになったのですか?

広場にやぎを放して、雑草を食べてもらうという一ヶ月間の除草実験が、この「やぎ除草」という企画です。4年前に初開催してから反響が大きく、継続することになりました。団地の候補も他にもあったのですが、一日中巡回が必要であること、”自治会が協力的”だという条件を一番満たしていたのが津久野南団地だったため、選ばれました。ポニーなど他の動物の案も出ましたが、津久野南団地の敷地の大きさや、小屋の大きさを考えるとやぎはベストだと思います。匂いや鳴き声の問題も少ないですし。


企画開始1年目で、UR都市機構側から表彰状を受けたり、新聞にも取り上げられ、注目を浴びた。

やぎが団地に来たことで、効果を感じることはありますか?

自治会として一番気にかけているのは、住人の見守りです。団地で一人暮らしの老人はひきこもりがちです。そこで、やぎがいることで、一目見ようと外に出てくる住人さんも増えてきました。老人の見守り役としての安否確認も進めやすくなりましたね。


昔ヤギを飼っていた経験もある村上さんは、他スタッフにも頼りにされている。

日々のお世話をする際に、苦労や楽しいことはありますか?

最初のころは、放してから捕まえるのに5人がかりで30分もかかったんですが、今ではすぐ捕まえることができるようになりました。お世話係もそれぞれ責任を持って取り組んでいます。自分の当番ではなくても、メンバー同士で協力して掃除をすることも多々あります。
台風が来たときは、気になって深夜でも様子を見に行ったり、雨の日は外へ出してあげられないので小屋の中で遊ぶこともあります。雨で濡れた体も拭いてあげます。やぎは牧場からの預かりものなので、お世話する側にも責任があります。お借りしている牧場にも、来た時よりも元気な姿でお返ししたいと考えています。


やぎは子どもみたいな存在、と村上さん。やぎも村上さんに懐いて、抱きついてくることもある。

自治会長として、今後団地への想いはありますか?

住人さんが安心安全・快適に生活できるようにという想いで自治会を動かしています。この団地から引っ越したとしても、津久野南団地は快適だったなと思ってもらえることが1番嬉しいです。その気持ちが繋がって、その家族達がまた、津久野南団地に住んでくれたらいいですよね。そういう雰囲気を団地全体でつくっていきたいです。

取材・文:小倉千明 写真:平野愛

所在地:堺市西区草部1800番地6 他

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