Interview

いろいろな角度でまち・団地を”語る”専門家のお話。新たな一面が発見できるはず。

専門家が語る まち・団地への想い

佐々木康光さん(グリーンマネージャー)後編

団地のひとインタビュー 017

団地の「みどり」と向き合う想い

UR賃貸住宅のグリーンマネージャー・佐々木さんと歩く桃山南団地 後編です。
前編では、メインストリートのケヤキ並木と住棟玄関まわりを歩きながら植物管理の考え方についてお話を伺いました。後編では、佐々木さんの思い入れたっぷりの「ドウダンツツジ」「エノキ」「アラカシ」を訪ねます。

佐々木康光さん(ささき・やすみつ)

造園職人としての豊富な経験を持つグリーンマネージャーで、㈱URコミュニティに所属。
好きな樹木は『ナツハゼ』。関西ではあまり見られないが、佐々木さんの故郷、東北ではよく知られた木。
ブルーベリーに似た果実がなり、秋の真っ赤な紅葉が美しいことでも有名。

団地の「みどり」と向き合う想い
これが佐々木さんおすすめのドウダンツツジですね。こんな素敵な樹形のものは見たことがないです。

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佐々木:一般に見られているドウダンツツジは、生垣のように並べて植えているものが多いので、見慣れない形だと思います。生垣のように、きれいな輪郭を出してしまうと造作物みたいになってしまう。これくらいの自然な樹形であれば、見苦しいわけでもなく、中まできちんと花が咲いてくれるので良いですよ。(※)

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この木の良さをしっかり出してあげるような、気遣いが伝わってきます。ドウダンツツジってこんなにかっこいいのか!と驚くばかりです。

佐々木:この団地は、祠のようなものや石の像などがあったり、と小さな面白い仕掛けがしてありますので、歩いていて楽しい団地です。
植栽については、今までご紹介したものの他に「マツ」が似合う団地だと思っています。今では少なくなってしまったので、松食い被害のない品種の「テーダマツ」を植えてあげたいですね。

桃山南団地で不思議なものを発見!?

この取材時にも、こんなものを発見しました。仮面が石に張り付いたような石像です。団地内の通路や、少し開けた場所にいくつか見られました。それぞれで表情が異なりますので、ぜひ探してみて下さい!

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団地の西端まで歩いてきました。広がりのある場所にぴったりとはまっていて、ダイナミックな美しい木ですね。何という木でしょうか。

佐々木:葉が落ちてしまっているので分かりにくいですが、これは榎(エノキ)です。とても良いロケーションに恵まれて、バランスよく成長したきれいな木ですので、思い入れのある木の一つです。今まで、のびのびと大事に育ててきましたので、今後も木が本来持っている美しさを残しながら大切にされてほしいですね。

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最後は、佐々木さんイチオシの木「アラカシ」です。

佐々木:久しぶりに見ると、やはり大きいですね。このアラカシは、私が今までに担当したすべての樹木の中でも、最も深く思い入れのある木です。樹形もダイナミックで、とても美しいと感じています。樹高も住棟の5階に届きそうなくらい大きくなっていますので、迫力や存在感がありますね。

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佐々木:このアラカシは、団地ができた時に植えられた木ですので、ここに約40年間住んでいることになります。長い年月をかけて大きく育ってきましたが、年を重ねるごとに、枝払い(剪定方法の一つ)を行った後の切り口が塞ぎきれなくなっていますね。木が若い頃は自ら巻いて閉じるはずですので、木も年をとっているのだと実感してしまいます。

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佐々木:高齢ですが、この木は表情がいいですので、毎年透かして手入れをしながら、爽やかに魅せて、桃山南団地のシンボルツリーとして、お住まいのお客様にも愛されてほしいです。

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木が剪定された切り口を直す過程とは…?

木は傷口ができると、カルスと呼ばれる組織を発達させて、傷口を覆うように修復していきます。傷口を塞がりやすくするためにも、前編で登場した「かっくい」を残さないよう剪定することが大切です。

最後に、佐々木さんの植物管理というお仕事に対する想いをお聞かせください。

佐々木:もちろん予算もありますので、手を入れることができる回数、方法にも制約が出てくる中で、団地がより美しく快適な状態になるよう植物を手入れする。そんな仕事をするのが、私たちグリーンマネージャーだと思っています。これからも、団地の緑の環境管理を通じて、一人でも多くのお客様に美しく暮らしやすい環境を届け、屋外空間の魅力でURや団地のファンを増やしていきたいですね。

たくさんの実がついたサンシュユの前で笑顔の1枚!

たくさんの実がついたサンシュユの前で笑顔の1枚!

 

人工物と違い、時間とともに姿形が変わる植物。形あるものをデザインすることで景観が成り立っていますので、植物管理の仕事も「デザインの仕事」なのだということに今回あらためて気づかされました。“いきもの”としての植物の知識を持ち、景色を評価する目利きでもあるグリーンマネージャーがいてこその「美団地」なんですね。 また桃山南団地の新緑が美しい季節に行ってみたくなりました。

※記事内の写真について……2018年9月に関西を直撃した台風21号の影響により、倒木等の被害がございました。掲載写真について、実際の状況と大きく異なるものがございますのでご了承ください。(2019年2月追記)

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